著者の所属・活動拠点の国は、ナイジェリアです。

掲載誌:British journal of healthcare and medical research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

研究チームは、ナイジェリアのベヌエ州マクルディで販売される炭火焼きナマズについて、含まれる多環芳香族炭化水素(PAHs)を長期間食べ続けた場合の発がんリスクなどを、成人と子どもに分けて推定しました。PAHsは、炭などの不完全燃焼や食品の高温調理で生じる物質群で、一部には発がん性や遺伝子を傷つける性質があります。

論文によると、この地域では炭火焼きナマズが広く食べられていますが、その摂取によるPAHsの健康リスクは、それまで定量的に評価されていませんでした。

何を、どのように調べたか

研究チームは、市内の炭火焼き販売店3か所から集めたナマズ18試料の分析データを用いました。対象はナマズ2種とその交雑種で、成分を分離して同定・定量するガスクロマトグラフィー質量分析によって測定した8種類のPAHsを評価しました。魚種や販売店によって濃度が異なる場合は、リスクを低く見積もらないよう、最も高い平均濃度を計算に使いました。

摂取条件は、成人では体重70キログラムで1日28.3グラム、6~12歳の子どもでは体重25キログラムで1日15グラムのナマズを、毎日食べると仮定しました。発がんリスクの計算では、成人は70年間、子どもは10年間の摂取を設定しています。

測定濃度と摂取量から体重当たりの摂取量を求め、米国環境保護庁のモデルで、摂取によって増えると推定される発がんリスクを計算しました。また、発がん以外の影響について摂取量と参照用量を比べる指標を求め、動物試験に基づく基準用量が推定摂取量の何倍あるかを示す「曝露マージン(MOE)」でも評価しました。人のがん発症や遺伝子損傷を直接測定した研究ではありません。

主な報告結果

毎日の摂取を仮定した場合、発がん性のある対象成分を合計した追加発がんリスクは、成人で1.66×10⁻⁶、子どもで5.56×10⁻⁶と報告されました。著者らは、いずれも論文で採用した分類の「低く、許容可能なリスク」の範囲内にある一方、「無視できる」とする水準は上回るとしています。これらはモデルによる確率の推定値であり、実際の患者数を示すものではありません。

推定発がんリスクに最も大きく寄与した成分は、ジベンゾ[a,h]アントラセン(DBahA)でした。この成分による推定値は成人で1.13×10⁻⁶、子どもで3.82×10⁻⁶で、合計リスクの約68%を占めると報告されました。次に寄与が大きかったのはベンゾ[a]アントラセン(BaA)でした。

発がん以外の影響について、著者らが報告した個別のハザード比と、それらを合計した指標は、成人・子どもともに懸念の目安となる1を下回りました。MOEは毎日摂取する条件でも成人で約17万3,000、子どもで約11万6,000となり、いずれも懸念が低いと判断する目安の1万を上回りました。

この報告が示すこと

研究チームは、測定した濃度と設定した摂取条件の下では、炭火焼きナマズに由来するPAHsへの曝露は、直ちに公衆衛生上の緊急事態を意味するものではないと結論づけました。一方で、推定リスクへの寄与が大きいDBahAも含めた監視と、ナイジェリアでの焼き魚中PAHsの基準整備が重要だと述べています。

この評価は炭火焼きナマズからの摂取に限られ、食用油や燻製食品など、ほかの食品から取り込むPAHsは合算していません。したがって、食生活全体のPAHs曝露について安全性を判断した結果ではなく、特定の食品によるリスクと、管理上注目すべき成分を示した報告です。

原著論文の著者・所属:Joshua Terfa Mkav、Aondohemen Aende Athanasius、Benjamin Kwaghvihi Orfega、Donald Torsabo、Ira Tersoo Bajah

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Joshua Terfa Mkav, Aondohemen Aende Athanasius, Benjamin Kwaghvihi Orfega, et al. Carcinogenic and Genotoxic Health Risk Assessment Associated with Dietary Exposure to Polycyclic Aromatic Hydrocarbons in Charcoal-Grilled Catfish Consumed in Makurdi Metropolis, Benue State, Nigeria. British journal of healthcare and medical research 2026-11-07. DOI: 10.14738/bjhr.1306.12450. 原著ライセンス:CC BY.