この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:MEDICA (International Medical Scientific Journal)

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

高血圧は世界的に多くみられる慢性疾患で、高齢者では特に大きな公衆衛生上の課題になっています。著者らは、世界保健機関(WHO)の報告として、高血圧は世界で30〜80歳のおよそ12億8000万人に影響し、特に低・中所得国で早世の主要な原因になっていると述べています。インドネシアでも高齢人口の増加とともに高血圧が増え続けているとされます。

食事の内容や毎日の水分摂取量は、本人の努力で変えられる生活習慣の要素です。しかし著者らは、これまでの研究はナトリウムなど単一の栄養素に注目したものや、病院を受診している患者を対象としたものが多く、地域社会で暮らす人々を対象に食事と水分の両方をあわせて調べた研究は十分にないと指摘しています。そこでこの研究は、インドネシアの地域在住高齢者において、食事パターンと1日の水分摂取量が高血圧とどう関連しているかを検討し、予防的な高齢者看護への示唆を得ることを目的としました。

調べた方法

調査は2023年11月から2024年1月まで、東ジャワ州マランにある高齢者向けの地域保健拠点(統合保健ポスト)で行われました。参加者は、この拠点に登録して活動に参加している45歳以上の146人です。重い併存疾患があって調査に支障が出る人は対象から外されました。

食事の内容と水分摂取量は、過去1か月をふり返る「食物摂取頻度調査票(FFQ)」で評価されました。これは、さまざまな食品をどのくらいの頻度で食べたかを尋ねる質問票で、インドネシアの中高年向けに妥当性が確認されたものが使われています。食事パターンは点数化され、果物・野菜など栄養価の高い食品をよく食べている状態を高い点数(76点以上)、加工食品や高塩分の食品が多い状態を低い点数(50点以下)とし、その間(51〜75点)を中程度としました。水分摂取は本人の申告にもとづき、1日2リットル以上を「十分」、2リットル未満を「不足」と分類しました。

血圧はWHOの手順に沿って測定され、10分の安静後に座位で5分間隔で2回測り、その平均値を用いています。高血圧は収縮期血圧140mmHg超または拡張期血圧90mmHg超と定義されました。解析には複数の要因を同時に考慮できる多重ロジスティック回帰が用いられ、低い食事パターンを比較の基準として、年齢・性別・学歴・就業状況・体格指数(BMI)の影響を調整した上で関連が検討されました。研究は倫理審査委員会の承認を受け、参加者全員から文書による同意を得ています。

報告された主な結果

参加者の平均年齢は62.19歳(標準偏差8.29)で、男性が57.5%、BMIが標準範囲の人が63.0%でした。高血圧に分類されたのは9.6%(146人中14人)で、著者らはこの集団では高血圧の割合が比較的低かったと述べています。食事パターンは低い人が38.4%、中程度が36.3%、高い人が25.3%でした。水分摂取については65.1%が1日2リットル未満の「不足」に該当しました。また、よく食べられていた食品はビスケットや焼き菓子(塩やココナッツミルクを加えて作られることが多い)とコーヒーで、加工食品や高塩分の食品が多く、果物や野菜などの栄養価の高い食品が少ない傾向が示されたと報告されています。

解析では、食事パターンが中程度の人は、低い人に比べて高血圧である見込みが有意に低いという結果が得られました(調整オッズ比0.189、95%信頼区間0.039〜0.912、p=0.038)。オッズ比は、ある状態の人がそうでない人と比べてどのくらい当てはまりやすいかを表す指標で、1より小さいほど高血圧が少ない方向を意味します。食事パターンが高い群でも同じ向きの傾向はみられましたが、統計的に意味のある差とは言えませんでした(調整オッズ比0.256、95%信頼区間0.053〜1.253、p=0.093)。1日の水分摂取量と高血圧の間には有意な関連はみられませんでした(調整オッズ比1.983、95%信頼区間0.512〜7.677、p=0.321)。

著者らはこれらの結果を慎重に解釈すべきだとしています。高血圧に該当した人が14人と少なかったため、統計的に差を見つけ出す力(検出力)が限られ、推定値の幅(信頼区間)が広く不正確になったことが、特に食事パターンが高い群や水分摂取で有意差が出なかった理由として挙げられています。また、横断研究、つまり一時点の状態を同時に測る設計であるため、原因と結果の方向を確かめることはできず、すでに高血圧と診断された人が食事をより健康的なものへ変えていた可能性(逆の因果)も否定できないと述べられています。purposive sampling(目的に沿って参加者を選ぶ方法)を用いたことによる選択の偏りや、自己申告にもとづく測定の限界も指摘されています。

この研究が示すこと

この研究は、地域で暮らす高齢者において、食事の質がより良いことと高血圧である見込みが低いことが関連していたと報告しています。因果関係を示したものではありませんが、著者らは、完璧な食生活を目指すのではなく、手に入りやすい地元の食材を使って食事を中程度まで改善するという現実的な目標が、地域の看護師による実践的な食事教育の出発点になりうると述べています。水分摂取については本研究で有意な関連は示されませんでしたが、著者らは十分な水分をとることは高齢者を総合的に支えるケアの一部として引き続き大切だとしています。

著者:Lilis Setyowati(Department of Management, Program of Study in Nursing Science, Faculty of Health Sciences, University of Muhammadiyah Malang, Malang, East Java, Indonesia)、Azzahra Amelia Putri(Program of Study in Nursing Science, Faculty of Health Sciences, University of Muhammadiyah Malang, Malang, East Java, Indonesia)、Hilda Mazarina Devi(Department of Community, Faculty of Health Sciences, University Tribhuwana Tunggadewi, Malang, East Java, Indonesia)、Zahid Fikri(Department of Management, Program of Study in Nursing Science, Faculty of Health Sciences, University of Muhammadiyah Malang, Malang, East Java, Indonesia)、Sunardi Sunardi(Department of Management, Program of Study in Nursing Science, Faculty of Health Sciences, University of Muhammadiyah Malang, Malang, East Java, Indonesia)、Chairul Huda Al Husna(Department of Medical Surgical, Program of Study in Nursing Science, Faculty of Health Sciences, University of Muhammadiyah Malang, Malang, East Java, Indonesia)、Nur Melizza(Department of Community, Program of Study in Nursing Science, Faculty of Health Sciences, University of Muhammadiyah Malang, Malang, East Java, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Lilis Setyowati, Azzahra Amelia Putri, Hilda Mazarina Devi, Zahid Fikri, Sunardi Sunardi, Chairul Huda Al Husna, Nur Melizza Dietary Patterns, Hydration, and Hypertension among Community-Dwelling Older Adults in Indonesia: A Cross-Sectional Study. MEDICA (International Medical Scientific Journal) 2026-08-31. DOI: 10.53770/medica.v8i8.1168. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。