この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Horticulture Advances

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

なぜ調べたのか

キウイフルーツ(マタタビ属、Actinidia)は栽培種だけでなく野生系統や種間雑種を含め、遺伝資源がきわめて多様です。研究チームは、こうした遺伝資源の中から優れた品種のもとになる系統を選び出し、気候の変化にも対応しやすい品種を育てるためには、果実の品質がどれだけ多様か、そして環境が変わっても品質がどれだけ安定して保たれるかを知る必要があると述べています。

論文によれば、これまでのキウイフルーツの品質研究は、1年・1か所で多くの品種を比べるか、1品種を複数の産地で比べるかのどちらかが中心でした。そのため、多数の系統について複数年にわたって品質の安定性を評価した研究は限られており、また、生育のどの時期にどんな気象条件が品質に効いているのかという分析も十分ではなかったと指摘しています。この二つの空白を埋めることが、本研究の目的とされています。

何をどう調べたか

研究チームは、中国湖北省丹江口市にある同一の果樹園で同じ管理のもとに育てた47系統のキウイフルーツを対象に、2021年から2024年までの4シーズン続けて果実を収穫し、品質を測定しました。対象には主要な栽培品種のほか、野生系統由来のものや、A. rufa(サルナシの仲間)やA. eriantha(毛花猕猴桃)との交雑によって生まれた系統が含まれます。

評価した品質項目は8つです。果実1個の重さ、乾物率(果実から水分を除いた固形分の割合)、完熟果の可溶性固形分(主に糖による甘さの目安)、糖の含量、滴定酸度(酸っぱさの指標)、可溶性固形分と酸の比、糖と酸の比、そしてビタミンCの含量です。収穫した果実はいったん低温で貯蔵して食べごろの硬さまで追熟させてから測定しています。

さらに、得られたデータを記述統計や相関分析、多変量解析にかけて系統ごとの特徴を整理し、変動係数(ばらつきの大きさを平均に対する割合で表した指標)を用いて、年をまたいだ変動と同じ年の中での変動を分けて評価しました。加えて、気象観測データから気温や降水に関する多数の指標を計算し、開花後30〜60日の果実が急に肥大する時期と、収穫前10〜40日の乾物が蓄積する時期という、発育上の重要な期間ごとに品質との関連を順位相関で調べています。

報告された主な結果

まず、47系統の間には大きな品質の幅がありました。中でもビタミンC含量の変動が最も大きく(変動係数100.75%)、果実100グラムあたり13.56ミリグラムから561.28ミリグラムまで開きがあったと報告されています。一方で乾物率は最もばらつきの小さい形質でした(変動係数8.87%)。

遺伝的な背景によって品質の傾向がはっきり分かれた点も報告されています。A. erianthaを親に持つ交雑系統はビタミンC含量が際立って高く、A. rufaを親に持つ系統は果実が小さくビタミンCも低い傾向にありました。多変量解析では、47系統は品質の特徴が異なる4つのグループに分類されています。

収穫時の乾物率は、完熟果の可溶性固形分との間に強い正の関係を示しました(決定係数R²=0.66)。研究チームは、乾物率が完熟後の甘さを早い段階で見積もる指標になりうると述べています。

安定性の分析では、全体のばらつきを生む主な要因は、同じ年の中での違いよりも年ごとの環境の違いであったとされています。そのうえで、品質が高く、かつ年をまたいだ変動も小さい系統(S1、S9、S16、S18、S43など)が見いだされました。

気象との関連については、乾物率が最高気温や日較差(1日の最高気温と最低気温の差)、気温の変動性と正の関連を示し(相関係数の絶対値でおよそ0.38〜0.41)、酸度や糖酸比は生育初期の積算熱量、気温の変動性、収穫前の降雨と関連していました(同じくおよそ0.30〜0.47)。ただしこれらの関連は発育段階によって変わり、単一の気象要因だけで品質の違いを一貫して説明できるものではなかった、と論文は述べています。相関は関連の強さを示すもので、因果関係を確かめたものではありません。

この研究が示すこと

この研究は、キウイフルーツの遺伝資源に果実品質の大きな多様性があることを示すとともに、高い品質と年をまたいだ安定性を併せ持つ系統を具体的に特定しました。また、気象条件と品質の結びつきが生育のどの段階かによって異なることを明らかにしています。研究チームは、これらの知見が品質が高く幅広い環境に適応できる品種の育成や、気候に応じた果樹園管理を考えるうえでの手がかりになると位置づけています。

著者:Wenjun Huang(State Key Laboratory of Plant Diversity and Specialty Crops, Wuhan Botanical Garden, Chinese Academy of Sciences, Wuhan, 430074, People’s Republic of China)、Fei Han(State Key Laboratory of Plant Diversity and Specialty Crops, Wuhan Botanical Garden, Chinese Academy of Sciences, Wuhan, 430074, People’s Republic of China)、Jie Yang(State Key Laboratory of Plant Diversity and Specialty Crops, Wuhan Botanical Garden, Chinese Academy of Sciences, Wuhan, 430074, People’s Republic of China)、Xinyu Ran(State Key Laboratory of Plant Diversity and Specialty Crops, Wuhan Botanical Garden, Chinese Academy of Sciences, Wuhan, 430074, People’s Republic of China)、Suyun Shen(State Key Laboratory of Plant Diversity and Specialty Crops, Wuhan Botanical Garden, Chinese Academy of Sciences, Wuhan, 430074, People’s Republic of China)、Qi Zhang(State Key Laboratory of Plant Diversity and Specialty Crops, Wuhan Botanical Garden, Chinese Academy of Sciences, Wuhan, 430074, People’s Republic of China)、Niu Ye(State Key Laboratory of Plant Diversity and Specialty Crops, Wuhan Botanical Garden, Chinese Academy of Sciences, Wuhan, 430074, People’s Republic of China)、Haiyan Lü(State Key Laboratory of Plant Diversity and Specialty Crops, Wuhan Botanical Garden, Chinese Academy of Sciences, Wuhan, 430074, People’s Republic of China)、Caihong Zhong(State Key Laboratory of Plant Diversity and Specialty Crops, Wuhan Botanical Garden, Chinese Academy of Sciences, Wuhan, 430074, People’s Republic of China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Wenjun Huang, Fei Han, Jie Yang, et al. Multiyear evaluation of fruit quality diversity, stability, and climatic drivers across a diverse Actinidia germplasm collection. Horticulture Advances 2026-09-14. DOI: 10.1007/s44281-026-00117-7. 原著ライセンス:CC BY.