著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Animal Bioscience
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
豚肉の筋肉内に蓄積する脂肪は、肉のジューシーさや軟らかさに関わります。研究チームは、筋肉内脂肪の多い東北ミン豚の特徴が、脂質やエネルギーの代謝、特に短鎖脂肪酸に関連する代謝とどのように結び付いているかを調べました。
短鎖脂肪酸は、酢酸などの炭素の鎖が短い脂肪酸で、エネルギー代謝や脂質合成に関わります。著者らは、ミン豚と交雑種のDLY豚を比較し、筋肉内脂肪の量や脂肪酸組成の違いに関連する代謝経路と、その候補となる分子を見つけることを目指しました。
何を、どのように調べたか
対象は、同じ給餌・飼育管理条件で育てた去勢雄のミン豚6頭とDLY豚6頭です。DLY豚はデュロック、ランドレース、ヨークシャーを掛け合わせた交雑種です。各品種では、同じ母豚から生まれた個体が重ならないように選びました。
成長速度が異なるため、年齢ではなく約100キログラムという体重をそろえて比較しました。と畜時の平均日齢はミン豚が270.0日、DLY豚が162.8日でした。
研究チームは、背中にある背最長筋の筋肉内脂肪量と脂肪酸組成を測定しました。さらに、多数のタンパク質や代謝で生じる物質をまとめて調べ、それぞれの違いがどの代謝経路に集中しているかを解析しました。タンパク質の網羅的解析は各群4頭で行われました。また、候補タンパク質については、遺伝子の働きを反映するRNAの量にも同じ方向の変化があるかを調べました。
主な報告結果
著者らは、ミン豚の筋肉内脂肪量がDLY豚より有意に多かったと報告しました。脂肪酸組成にも違いがあり、ミン豚ではオレイン酸などの一価不飽和脂肪酸が多く、飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸の合計はそれぞれ少なくなっていました。一価不飽和脂肪酸は、分子内に二重結合を1つ持つ脂肪酸です。
タンパク質解析では3,929種類を同定し、そのうち672種類の量が品種間で異なりました。ミン豚で多かったタンパク質には、細胞内でエネルギーをつくるミトコンドリアの働きや、脂肪酸代謝に関わるものが多く含まれていました。
代謝物は1,857種類を同定し、509種類に品種間の違いが認められました。特にミン豚では、プロピオニルカルニチンなど4種類の短鎖アシルカルニチンが有意に多くなっていました。これらは短い炭素鎖を持つ成分とカルニチンが結び付いた物質であり、遊離した短鎖脂肪酸そのものを測った結果ではありません。
タンパク質と代謝物の結果を組み合わせると、栄養素からエネルギーを取り出す中心的な仕組みであるTCA回路と、ピルビン酸の代謝が主要な共通経路として浮かび上がりました。また、エネルギー産生や脂質合成に関わる候補タンパク質7種類は、ミン豚でタンパク質量と対応するRNA量の両方が増えていました。
この報告が示すこと
研究チームは、ミン豚で筋肉内脂肪が多いという特徴には、脂質代謝だけでなく、エネルギー産生や脂質合成の材料供給、短鎖脂肪酸に関連する代謝の変化が組み合わさっている可能性があると結論付けています。短鎖アシルカルニチンの増加についても、短鎖脂肪酸の量の増加と単純に捉えず、アミノ酸の分解やミトコンドリアでの代謝などを反映する可能性を挙げています。
今回の報告は、品種間の違いに関連する分子の手掛かりを示すものです。著者らは、候補分子の役割には機能面での検証が必要だとしています。また、脂肪酸組成から風味などへの関与を考察していますが、食味や酸化に対する安定性は直接測定していません。
原著論文の著者・所属:Rui Ge Chu(Tianjin Agricultural University, Tianjin, China)、Zhi Dong Lv(Tianjin Agricultural University, Tianjin, China)、Han Chu(Tianjin Agricultural University, Tianjin, China)、Jia Ning Ma(Tianjin Agricultural University, Tianjin, China)、Chun Mei Yu(Tianjin Agricultural University, Tianjin, China)、Tian Tian Sun(Tianjin Agricultural University, Tianjin, China)、Jian Bin Zhang(Tianjin Agricultural University, Tianjin, China)、Hua Yang(Tianjin Agricultural University, Tianjin, China)、Na Li(Jilin Academy of Agricultural Sciences, Jilin, China. [email protected])、Lei Pu(Tianjin Agricultural University, Tianjin, China. [email protected])
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rui Ge Chu, Zhi Dong Lv, Han Chu, et al. Short‑chain fatty acid-related metabolism may be an important factor affecting intramuscular fat deposition in the longissimus dorsi muscle of Min pigs: evidence from integrated multi‑omics analysis. Animal Bioscience 2026-11-02. DOI: 10.5713/ab.260724. 原著ライセンス:CC BY.