著者の所属・活動拠点の国は、南アフリカです。
掲載誌:African Journal of Primary Health Care & Family Medicine
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
肥満、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病などは、心臓や血管、代謝に関わる病気としてまとめて「心血管代謝疾患」と呼ばれ、世界的に病気や死亡の主な原因となっています。食事は自分で変えられる重要な要因とされています。論文によると、サハラ以南のアフリカでは伝統的な食事から、高エネルギーで加工度の高い食品が多い食事へ移行が急速に進んでおり、過体重や肥満、こうした病気の増加につながっているといいます。この地域ではトウモロコシなどの主食を中心に食事が組み立てられることが多く、高所得国で作られた食事指針をそのまま当てはめにくいことも指摘されています。
研究チームは、学校や地域で手本となる存在である教員に注目しました。南アフリカ・リンポポ州マカド地方自治体の農村部の公立学校に勤める教員を対象に、どのような食べ方のまとまり(食事パターン)があるのか、そしてそれが血圧、血中脂質、血糖、体格といったリスク要因とどう関係しているのかを調べました。
調べた方法
研究は、ある一時点のデータを集めて関係を調べる「横断研究」として行われました。この方法では、関連は分かっても、どちらが原因でどちらが結果かは判断できません。教員名簿から層別に無作為に選ばれた201人が参加しました。女性が112人(55.7%)、平均年齢は40.1歳でした。
参加者は、地域でよく食べられる食品を含めた食物摂取頻度調査票に回答しました。これは、各食品をどのくらいの頻度・量で食べているかを尋ねる質問票です。あわせて、身長や体重、腹囲、血圧を測り、10時間の絶食後に指先から採った血液で総コレステロール、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)、血糖を測定しました。
食事パターンは「因子分析」という統計手法で導き出されました。これは、一緒に食べられやすい食品の組み合わせをデータからまとめ上げる方法です。そのうえで、各パターンの得点が、血圧や脂質、血糖などのリスク区分によって異なるかを比べました。
主な結果
男女で比べると、女性の教員は男性より体重、BMI、腹囲が有意に大きく、総コレステロールと中性脂肪も高い値でした。血圧、HDLやLDLコレステロール、空腹時血糖には男女差はみられませんでした。著者らは、この集団の女性教員では肥満や脂質異常に関わるリスクがより大きい可能性を示しています。
因子分析からは7つの食事パターンが見いだされました。たとえば、オーツ麦やゆで卵などを含む「ミックス食」、シリアル系食品やプレーンヨーグルトが特徴の「西洋食」、ソルガムと揚げた牛肉が特徴の「でんぷん・動物性食品」、ゆでキャベツなどの野菜による「肉なし食」などです。これらの名前は、各パターンで特に結びつきの強い食品をもとに研究チームが付けたもので、一般的な意味での同名の食事とそのまま同じではありません。各パターンが説明する食べ方のばらつきは3〜9%程度と小さく、教員の食習慣は一つの型に偏らず多様であることがうかがえました。
食事パターンとリスク要因の関係では、いずれのパターンもBMIの区分とは有意な関連を示しませんでした。一方、いくつかのパターンでは脂質、血糖、収縮期血圧(いわゆる上の血圧)の区分によって得点に差がありました。ミックス食の得点は、高血圧(ステージ1)の人で高血圧前段階の人より高く、西洋食の得点は総コレステロールが高い人で望ましい値の人より低いと報告されています。肉なし食などいくつかのパターンでは、HDLコレステロールが低くリスクがあるとされた人ほど得点が低い結果でした。また「動物性たんぱく質・果物」のパターンでは、糖尿病の範囲の人の得点が糖尿病予備群の人より低く、ステージ1高血圧の人の得点は血圧が正常な人より高いという結果も示されました。
この研究が示すこと
著者らは、南アフリカ農村部の教員で、地域の食事から導かれた食事パターンが、体格よりもむしろ血中脂質や血糖、血圧といった指標と関連していたことを報告しています。ただし横断研究であるため、食事がリスクを変えたのか、リスクや診断を受けて食べ方が変わったのかは区別できません。食事の聞き取りには記憶違いなどの誤差がありうること、身体活動や服薬、喫煙などの影響を十分に除けていないこと、一つの地方自治体の教員に限った調査であることも限界として挙げられています。
この研究は、主食中心の食文化を持つ地域で、その土地の食べ方に即した食事パターンを捉えることの意味を示しています。研究チームは、こうした地域特有のパターンについての知見はまだ乏しいとしたうえで、教員の食習慣を踏まえた職場での健康づくりを考える手がかりになると位置づけています。
原著論文の著者・所属:Zelda L. Ratshilivha(University of Venda)、Takalani C. Muluvhu(Tshwane University of Technology)、Suzanne Jacobs(Tshwane University of Technology)、Tjale C. Mahopo(University of Venda)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zelda L. Ratshilivha, Takalani C. Muluvhu, Suzanne Jacobs, et al. Dietary patterns and associated cardiometabolic risk factors among teachers in Makhado Municipality, South Africa. African Journal of Primary Health Care & Family Medicine 2026-08-13. DOI: 10.4102/phcfm.v18i1.5292. 原著ライセンス:CC BY.