著者の所属・活動拠点の国は、ナイジェリアです。
掲載誌:International Journal of Health Research and Physical Study
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ナイジェリアでは、芋や穀物、野菜を中心とした伝統的な食事から、加工食品や砂糖、脂肪の多い食事へ移る「栄養転換」が進んでいます。その結果、やせや栄養不足と、過体重や肥満が同じ社会に並んで存在する「栄養不良の二重負荷」が問題になっています。若い世代でも、肥満や腹部への脂肪蓄積、血糖値の異常など、心臓病や糖尿病につながる「心血管代謝リスク」が見られるようになっていると著者らは述べています。
一方で、ナイジェリアの若者の栄養状態を調べた研究の多くは南部や南西部で行われ、北東部のデータは限られていました。そこで研究チームは、北東部のタラバ州に住む12〜34歳の若者を対象に、栄養についての知識、食事への考え方、実際の食習慣、身体活動、体格、血糖値をまとめて調べ、その実態を明らかにしようとしました。
調査の方法
研究は、ある一時点の状態を調べる横断研究として、地域の家庭を訪ねる形で行われました。統計的な計算では384人が目標とされましたが、移動や接触の難しさなどの制約から、実際に参加したのは216人でした。参加者の平均年齢は22.4歳で、約7割が学生や見習いでした。
参加者は、生活背景、運動や家事、栄養知識、食事についての考え方、揚げ物や果物・野菜などの食べる頻度、地元の食品(発酵乳のヌヌ、魚、オレンジ、ホウレンソウ)の摂取頻度などを質問票に答えました。栄養知識は、栄養の講義を受けたことがあるか、栄養素のグループや炭水化物・たんぱく質を多く含む食品を正しく見分けられるかといった質問で評価し、正答が半分未満の人を「知識が乏しい」と分類しました。
あわせて、体重と身長から体格指数(BMI)を計算し、腰回りとお尻回りの比率であるウエスト・ヒップ比(WHR)も測りました。WHRは、おなか周りに脂肪がついているかどうかの目安で、女性は0.85以上、男性は0.90以上をリスクありとしました。血糖値は、一部の参加者では空腹時に、ほかの参加者では随時に測定しました。分析は割合や平均値を示す記述的なものにとどまっています。
主な結果
参加者の76.9%が何らかの運動をしていると答え、運動をしている人では歩くことが最も多く挙げられました。自分を座りがちだと評価した人は5.6%でした。
一方、栄養知識は「乏しい」と分類された人が89.8%にのぼり、栄養の講義を受けたことがある人は43.7%でした。それでも、食事への考え方は前向きで、90.3%が「良い食習慣は健康に重要だ」と答えました。ただし80.8%は「健康的な食事は高価だ」とも考えていました。
実際の食習慣では、さまざまな栄養のある食品を「いつも」食べていると答えた人は15.8%にとどまりました。揚げ物やファストフード、果物、食物繊維の多い野菜のいずれについても、「ときどき」食べるという答えが多数を占めました。オレンジを毎日食べる人は14.8%、ホウレンソウを毎日食べる人は12.7%でした。
体格では、平均BMIは21.74で標準の範囲にありましたが、内訳を見るとやせが13.9%、過体重が12.5%、肥満が0.9%で、やせと過体重・肥満が同程度に存在していました。また、24.5%がWHRでリスクありに分類されました。血糖値は98.6%が正常範囲で、糖尿病の基準に当たったのは1.4%でした。
研究が示すこと
著者らは、この地域の若者は健康的な食事を大切だと考え、体もよく動かしている一方で、栄養の基礎知識が不足し、食習慣も安定していないという「ずれ」があると指摘しています。やせと過体重が並存し、約4人に1人がおなか周りの脂肪の目安でリスクありとされたことから、知識の不足と、健康的な食事は高いという受け止め方の両方に目を向けた、地域に合った栄養教育が必要だと論文は結論づけています。
なお、この研究は一時点の調査で、食事や運動は自己申告に基づき、対象は一つの州に限られています。統計的な検定も行っていないため、栄養知識と体格の関係や因果関係は確かめられていません。それでも、これまでデータの少なかったナイジェリア北東部の若者について、知識・食習慣・体格を一度に描き出した記録として意味のある報告です。
原著論文の著者・所属:ADEBUSOYE, MICHAEL SUNDAY(Department of Human Nutrition and Dietetics, Federal University of Health Sciences, Ila -Orangun Osun- State, Nigeria)、ADERINKOMI ABOSEDE(Guidance and Counselling Unit, Federal Polytechnic, Bauchi, Bauchi-State. Nigeria)、OSENI-OGUNDIPE RUKAYAT IYABO(Department of Human Nutrition and Dietetics, Federal University of Health Sciences, Ila -Orangun Osun- State, Nigeria)、ADENIYI FEYISETAN KEHINDE(Department of Human Nutrition and Dietetics, Federal University of Health Sciences, Ila -Orangun Osun- State, Nigeria)、GBADEBORI TEMITOPE RUKAYAT(Department of Human Nutrition and Dietetics, Federal University of Health Sciences, Ila -Orangun Osun- State, Nigeria)、OKUNOLA OLAYINKA(Department of Human Nutrition and Dietetics, University of Ilesa, Osun State, Nigeria)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):ADEBUSOYE, MICHAEL SUNDAY, ADERINKOMI ABOSEDE, OSENI-OGUNDIPE RUKAYAT IYABO, et al. ASSESSMENT OF NUTRITIONAL KNOWLEDGE, DIETARY PRACTICES, AND CARDIOMETABOLIC RISK AMONG YOUNG PEOPLE IN TARABA STATE, NIGERIA. International Journal of Health Research and Physical Study 2026-08-07. DOI: 10.70382/nijhrps.v13i3.015. 原著ライセンス:CC BY.