著者の所属・活動拠点の国は、ガーナです。
掲載誌:Health Science Reports
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
血糖値や血中脂質、血圧、腹囲といった指標は「心血管代謝マーカー」と呼ばれ、心臓病や慢性腎臓病などのリスクと強く結びつくことが知られています。これらは食事や運動などの生活習慣や、働く環境の影響を受けると考えられています。
ガーナでは、市場の販売業者や運輸業の労働者などで、こうした指標に異常のある人が多いことが報告されてきました。一方、研究チームによると、大学という職場は、座り仕事が多くプレッシャーも大きい環境でありながら、アフリカではほとんど調べられていませんでした。
そこで著者らは、ガーナのクワメ・エンクルマ科学技術大学(KNUST)の職員を対象に、仕事のストレス、食事の傾向、身体活動の量が心血管代謝マーカーとどのように関連しているかを探りました。
何を調べたか
調査は2024年12月から2025年6月にかけて行われ、学内の6つのカレッジから、呼びかけに応じた職員94人が参加しました。内訳は教員34人、教員以外の職員60人です。ある時点の状態を一度に調べる「横断研究」で、参加者は自発的な応募によって集められました。
参加者は面接で基本情報に答え、体重、身長、腹囲、血圧を測定しました。さらに空腹時に採血を行い、血中脂質と血糖値を調べました。腹囲、HDL(いわゆる善玉)コレステロール、中性脂肪、空腹時血糖、血圧については、世界保健機関(WHO)の基準で異常かどうかを判定しています。
身体活動は国際的に使われている質問票で過去1週間の活動を尋ね、低・中・高の3段階に分類しました。食事は、ガーナ人向けに作られた食物摂取頻度の質問票で60品目の食べる頻度を尋ね、14の食品群にまとめたうえで、統計的な手法を用いてよく一緒に食べられる食品の組み合わせ、つまり「食事パターン」を抽出しました。仕事のストレスは、仕事の要求の大きさと裁量の度合いを比べる質問票(JCQ)と、努力と見返りのつり合いを見る質問票(ERI)の2種類で測定しました。
主な結果
教員と教員以外の職員では、働き方や生活習慣に違いが見られました。身体活動が「低い」と分類された人は、教員では76.5%にのぼったのに対し、教員以外の職員では30.0%でした。一方、JCQで測ったストレスは教員以外の職員のほうが高く、仕事の負担が少ない状態とされた人は教員の94.1%に対し、教員以外の職員では26.7%にとどまりました。ERIで測ったストレスには、両グループで差は見られませんでした。
食事パターンとしては「伝統的なガーナ食」「西洋化した食事」「高タンパク質の食事」の3つが見いだされました。教員は西洋化した食事と高タンパク質の食事を多くとる傾向があり、伝統的なガーナ食には両グループで差がありませんでした。
心血管代謝マーカーでは、腹部肥満が52.1%と最も多く、次いで血圧の高い人が19.1%でした。空腹時血糖の高い人は11.7%で、最も少ない結果でした。いずれの指標でも、教員と教員以外の職員の間に統計的な差は見られませんでした。
関連の分析では、仕事のストレスや身体活動と心血管代謝マーカーとの間に、統計的に意味のある関連は認められませんでした。一方、性別、年齢、学歴、収入の影響を調整した分析で、高タンパク質の食事パターンと高血圧との間に関連が見られました(オッズ比約1.87)。オッズ比は、その特徴がある人で高血圧が見られる見込みの比率を示す数値です。また、西洋化した食事パターンは腹部肥満と逆向きの関連を示しましたが、著者らは、これは西洋化した食事に肥満を防ぐ働きがあることを意味するものではなく、パターンを構成する食品の組み合わせによるものかもしれないとして、慎重な解釈を求めています。
この研究が示すこと
この研究は、ガーナの大学職員のあいだで、腹部肥満などの心血管代謝面の負担が少なくないこと、そして職種によって身体活動や仕事のストレス、食事の傾向に違いがあることを示しました。教員は座りがちな働き方、教員以外の職員は高いストレスという、それぞれ異なる課題を抱えている姿が浮かび上がっています。
ただし、著者らは、一つの大学で94人を自発的に募った横断研究であることや、食事・運動が自己申告に基づくことなどから、因果関係は判断できず、結果は探索的なものだとしています。高タンパク質の食事と高血圧の関連についても、著者らは確定した結論ではなく、今後確かめるべき仮説として位置づけています。
原著論文の著者・所属:Daniel Ayeltigah(Department of Biochemistry and Biotechnology, Faculty of Biosciences, College of Science Kwame Nkrumah University of Science and Technology Kumasi Ghana)、Mary Amoako(Department of Biochemistry and Biotechnology, Faculty of Biosciences, College of Science Kwame Nkrumah University of Science and Technology Kumasi Ghana)、Richard Oguah(Department of Biochemistry and Biotechnology, Faculty of Biosciences, College of Science Kwame Nkrumah University of Science and Technology Kumasi Ghana)、Dorcas Kafui Ledi(Department of Biochemistry and Biotechnology, Faculty of Biosciences, College of Science Kwame Nkrumah University of Science and Technology Kumasi Ghana)、Adwoa Gyamfi(School of Nursing and Midwifery, College of Health Sciences Kwame Nkrumah University of Science and Technology Kumasi Ghana)、Michael Akenteng Wiafe(Department of Dietetics, School of Allied Health Sciences University of Development Studies Tamale Ghana)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Daniel Ayeltigah, Mary Amoako, Richard Oguah, et al. Association Between Dietary Patterns, Work Stress, Physical Activity, and Cardiometabolic Markers Among University Workers in Ghana: A Cross‐Sectional Study. Health Science Reports 2026-08-01. DOI: 10.1002/hsr2.72986. 原著ライセンス:CC BY.