著者の所属・活動拠点の国は、オランダです。

掲載誌:Clinical Kidney Journal

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

健康な人では、同じ量のナトリウム(食塩の成分)を口から摂ったほうが、点滴で静脈に入れた場合より速く尿中へ排泄されることが知られています。研究チームは、ナトリウムが腸に届いた段階で腎臓へ前もって合図が送られ、排泄が促される仕組みがあると考え、これを「腸‐腎臓のフィードフォワード機構」と呼んでいます。

この反応が2型糖尿病の人でも保たれているのかは分かっていませんでした。また、腸から分泌されるホルモンであるGLP-1の受容体を薬で刺激すれば、この反応を回復できるのかも未解明でした。著者らはこの二つの問いを調べるために臨床試験を行いました。

どのように調べたか

試験は、2型糖尿病の男性を対象にした無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験です。参加者は全員が三つの条件を順番に受け、その順番はくじのように無作為に決められました。また、参加者も研究者も、どの点滴が薬でどれが偽薬かを知らない状態で行われました。

参加者は各試験日の前7日間、ナトリウム摂取量を1日90ミリモル未満にそろえました。三つの条件は、(1)ナトリウムを点滴で静脈に入れる、(2)ナトリウムを口から摂り、同時に偽薬(プラセボ)を点滴する、(3)ナトリウムを口から摂り、同時にGLP-1受容体を刺激する薬エキセナチドを点滴する、というものです。どの条件でも与えたナトリウムは154ミリモルでした。

主に比べたのは、24時間に尿へ出たナトリウムの合計量です。あわせて、早い時間帯の排泄量、腎臓でろ過されたナトリウムのうち尿に出た割合、日中と夜間の血圧、体の細胞外の水分量、腎臓のろ過能力も調べました。

主な結果

試験を終えたのは2型糖尿病の男性11人で、平均年齢は60歳でした。

24時間の尿中ナトリウム排泄量の中央値は、点滴の場合が105ミリモル、口から摂って偽薬を点滴した場合が101ミリモル、口から摂ってエキセナチドを点滴した場合が100ミリモルで、三つの条件の間に統計的に意味のある差はありませんでした。

早い時間帯の排泄の反応や、ろ過されたナトリウムのうち尿に出た割合も、条件の間で同じような結果でした。日中・夜間の血圧にも条件による違いはみられませんでした。

研究が示すこと

著者らは、健康な人で観察されてきた結果とは異なり、2型糖尿病の男性では口からナトリウムを摂っても点滴より排泄が増えなかったと報告しています。研究チームは、この結果が2型糖尿病では腸から腎臓への前もった調節が損なわれていることと合致すると述べています。

さらに、エキセナチドで一時的にGLP-1受容体を刺激してもこの反応は回復しなかったことから、著者らは、食後のナトリウム排泄の調節には、GLP-1以外にも腸と腎臓を結ぶ別の経路が関わっている可能性を示唆しています。

原著論文の著者・所属:Charlotte M Mosterd(Department of Vascular Medicine, Amsterdam UMC , Amsterdam ,; Diabetes Center, Department of Internal Medicine, Amsterdam University Medical Center , Amsterdam ,)、Britt E Wever(Department of Vascular Medicine, Amsterdam UMC , Amsterdam ,; Diabetes Center, Department of Internal Medicine, Amsterdam University Medical Center , Amsterdam ,)、Michiel J B van Baar(Diabetes Center, Department of Internal Medicine, Amsterdam University Medical Center , Amsterdam ,)、Marcel H A Muskiet(Department of Medicine, Division of Endocrinology, Leiden University Medical Center , Leiden ,; Diabetes Center, Department of Internal Medicine, Amsterdam University Medical Center , Amsterdam ,)、Bert-Jan H van den Born(Department of Vascular Medicine, Amsterdam UMC, Amsterdam, The Netherlands.)、Max Nieuwdorp(Department of Vascular Medicine, Amsterdam UMC, Amsterdam, The Netherlands.)、Daan J Touw(Division of Pharmacology, Rijksuniversiteit Groningen , Groningen ,)、Ewout J Hoorn(Division of Nephrology and Transplantation, Department of Internal Medicine, Erasmus MC, University Medical Center Rotterdam , Rotterdam ,)、Liffert Vogt(Department of Nephrology, Amsterdam UMC, Amsterdam, The Netherlands.)、Daniël H van Raalte(Department of Vascular Medicine, Amsterdam UMC , Amsterdam ,; Diabetes Center, Department of Internal Medicine, Amsterdam University Medical Center , Amsterdam ,)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Charlotte M Mosterd, Britt E Wever, Michiel J B van Baar, et al. Gut-kidney signaling is impaired in individuals with type 2 diabetes. Clinical Kidney Journal 2026-09-11. DOI: 10.1093/ckj/sfag315. 原著ライセンス:CC BY.