著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:Frontiers in Food Science and Technology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

チキンナゲットやチキンポップコーンのような衣付きの揚げ鶏肉製品では、衣(バッター)はサクサクした食感や風味を生むために使われるのが一般的です。研究チームは、衣が揚げているあいだの熱の伝わり方、水分の移動、油の吸収にも関わる点に注目しました。衣の材料を工夫して揚げ上がりの性質を変えられるかどうかは、まだ十分に調べられていないと著者らは指摘しています。

そこで著者らが取り上げたのが、シコクビエ(英名フィンガーミレット、インドではラギとも呼ばれる雑穀)の粉です。シコクビエは食物繊維やカルシウムなどを含むことが知られ、パンや菓子などには使われてきました。一方、肉製品の衣に使う例はあまり検討されていませんでした。この研究では、肉そのものではなく衣だけにシコクビエ粉を加え、揚げ物の品質や冷蔵保存中の変化にどう影響するかを調べました。

何を調べたか

研究チームは、鶏肉を主原料とする生地を一口大(約10グラム)に成形し、粉をまぶす、衣液をつける、パン粉などをまぶすという三段階で衣をつけてから、ひまわり油で揚げてチキンポップコーンを作りました。衣液に含まれるコーンフラワーの0%、5%、10%、15%をシコクビエ粉に置き換えた4種類を用意し、0%を対照として比較しています。

調べた項目は、水分・たんぱく質・脂肪などの成分、揚げたあとに重さがどれだけ残るかを示す「加熱歩留まり」、揚げても水分がどれだけ保たれるかを示す「水分保持率」、油の吸収にかかわる指標、色などです。さらに、4±1℃の冷蔵で4週間保存し、品質の劣化を示す化学的な指標や微生物の数の変化を追いました。味や食感などの官能評価は、作りたての製品について10人の評価者が行いました。

主な結果

論文によると、シコクビエ粉を加えると揚げ上がりの性質に統計的に意味のある差が生じました。特に10%置き換えた衣で、加熱歩留まりが最も高くなりました(対照78.94%に対して86.38%)。水分保持率も対照の71.84%から10%で83.01%、15%で83.36%に上がりました。揚げたあとの脂肪含量は、対照の14.01%に対して10%では9.90%と低く、油の吸収に関する指標も10%と15%で対照より低い値でした。揚げることによる水分の減少も、シコクビエ粉の割合が多いほど小さくなりました。

著者らは、水分を多く保てた製品ほど油の吸収が少ないという関連を統計的に確認しています。ただし、これらの指標は互いに結びついた計算値であり、この相関だけで原因と結果の関係や仕組みが示されたわけではないと論文自身が注意を促しています。

色については、シコクビエ粉を加えた製品は対照より暗く落ち着いた色合いになり、10%でその変化が最も目立ちました。官能評価では、色の点数はわずかに下がったものの、10%の製品が風味、食感、ジューシーさ、総合的な好ましさで最も高い評価を受けました。

冷蔵保存中は、すべての製品で、腐敗の進み具合を示す指標や微生物数が時間とともに上がりました。これは通常の保存劣化にあたる変化です。著者らは、シコクビエ粉を加えた製品では脂質の酸化やたんぱく質の分解が抑えられたと報告しています。また、微生物数は保存期間を通じて加熱済み肉製品の基準値を下回っていたとしています。

この研究が示すこと

この研究は、衣の材料の一部をシコクビエ粉に替えるだけで、揚げ物の歩留まりや水分の保ち方、油の吸収具合が変わりうることを示しました。今回の条件では、10%の置き換えが揚げ上がりの性質と食べたときの評価のバランスが最もよい水準だったと著者らは結論づけています。

一方で、食感を機器で測ること、衣の粘りや内部構造、すき間の多さ、フェノール類の量や抗酸化性は直接測っていません。そのため、シコクビエ粉がなぜこうした効果をもたらすのかという仕組みの説明は、確定したものではなく推測の段階だと著者らは述べています。また、官能評価は作りたての製品だけで行われ、保存中の味の変化は調べていません。衣を単なる食感づくりの材料ではなく、揚げ物の性質を調整する手段として見直す一つの手がかりになる研究です。

原著論文の著者・所属:Kiran M.(Department of Livestock Products Technology, Veterinary College Bidar, KVAFSU, Bidar, India)、Md. Yousufuddin(Department of Livestock Products Technology, Veterinary College Bidar, KVAFSU, Bidar, India)、B. Manojkumar(Department of Livestock Products Technology, Veterinary College Bidar, KVAFSU, Bidar, India)、Ravindra B. Dombar(Department of Animal Nutrition, Veterinary College Bidar, KVAFSU, Bidar, India)、Jamadar Deepika(Department of Livestock Products Technology, Veterinary College Bidar, KVAFSU, Bidar, India)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kiran M., Md. Yousufuddin, B. Manojkumar, et al. Finger millet flour based batter coating: effects on frying behavior, oil uptake, and storage stability of chicken popcorn. Frontiers in Food Science and Technology 2026-10-08. DOI: 10.3389/frfst.2026.1901708. 原著ライセンス:CC BY.