この研究は、コートジボワールの研究機関の研究論文です。
掲載誌:World Journal of Advanced Research and Reviews
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何を目的とした研究か
キャッサバはイモ状の根を食用にする作物で、熱帯地域では米とトウモロコシに次ぐ3番目のカロリー源とされ、世界で8億人以上の食を支えていると論文は紹介しています。コートジボワールでは2019年の生産量が500万トンに達し、ヤムイモに次ぐ第2の食用作物です。
著者らは一方で、キャッサバの根には青酸を生じる成分(シアン配糖体)が含まれ、貯蔵できる期間も短いため、食品としての利用が制限されてきたと指摘しています。加工の中でも発酵は、この有害成分を減らしつつ風味や粉としての性質を改善する方法として知られています。そこで研究チームは、コートジボワールで広く栽培されている3品種「Bonoua 2」「TMS 4(2)1425」「Bocou 2」を対象に、発酵させて作った粉の性質が品種によってどう違うかを調べました。
どのように調べたか
同じ環境・栽培方法で育て、植え付けから12か月後に収穫した3品種の根を、皮をむいて洗い、すりつぶしてから圧搾しました。その後、25℃で24時間、自然に任せた固体発酵(水に浸さず、固形の状態のまま発酵させる方法)を行い、50℃で48時間乾燥させ、粉砕して150マイクロメートルのふるいを通し、粉に仕上げています。
得られた粉について、色、pH、酸度、水分、水分活性(微生物が利用できる水の割合を示す指標)、糖度、デンプン量とその成分であるアミロース・アミロペクチンの割合、そして総シアン(HCN)量を測定しました。あわせて、水や油をどれだけ吸うか、水に濡れて溶けるまでの時間、膨らみやすさ、粘度、ゲルの固さ、冷凍解凍時に水が分離する程度、泡立ちや乳化の性質といった調理上の働きも調べています。すべての分析は3回ずつ行い、統計解析で品種間の違いを検定しました。
報告された主な結果
論文によれば、3品種の粉の間には統計的に意味のある違い(p<0.05)が多くの項目で認められました。固体発酵によってシアン含量は7.97〜9.20 mg/kgとなり、著者らはこれがFAO/WHOの示す上限10 ppmを下回る水準だと述べています。発酵にともなってpHは4.76〜6.08の範囲に下がり、酸度は0.66〜0.71%となりました。著者らは、シアン量がpHや酸度と負の相関を示したことを、発酵でシアン配糖体が分解されると同時に有機酸が作られる過程と結びつけて説明しています。
粉としての性質は品種ごとに特徴が分かれました。TMS 4(2)1425の粉は水を吸う力が高く、水に濡れる時間が短い一方で粘度が低いと報告されています。Bonoua 2の粉は水分(7.82%)と水分活性(0.490)が低く、油を吸う力(316 g/100 g)と粘度、ゲルの固さが高い値でした。Bocou 2の粉はかさ密度や多孔性、分散しやすさ、泡立ちの力が高いとされています。主成分分析でも3品種は3つのまとまりに分かれ、著者らはこの結果から、TMS 4(2)1425の粉は粥や麺、とろみづけのように水を吸わせる用途に、Bonoua 2の粉はソーセージや焼き菓子、ヨーグルトやゼラチン系デザートなどに、Bocou 2の粉は長期保存や見た目の良さが求められる場面に向くと考えられる、と述べています。
この研究が示すこと
この研究は、24時間の固体発酵という比較的簡素な処理でも、キャッサバ粉の有害成分を推奨される水準まで下げられることを報告しました。同時に、同じ処理をしても品種が違えば粉の性質は大きく異なり、どの食品に向くかも変わってくることを具体的な測定値で示しています。
著者らは、いずれの品種の粉も食品の材料として受け入れられる性質を備えていたと結論づけ、原料としてどの品種を選ぶかが最終製品の質を左右しうることを示唆しています。
著者:Pégnonsienrè Lacina Soro(Faculty of Agriculture , Fisheries Resources and Agro-Industries , University of San Pedro , 01 BP 1800 San Pedro 01 , Côte d'Ivoire)、Marcellin Konan Kouadio(Laboratory of Biochemistry and Bioprocesses , Nangui ABROGOUA University , Faculty of Food Science and Technology Abidjan , Côte)、Kouakou Adaye YAO(Laboratory of Biochemistry , Biotechnology and Food Sciences , Faculty of Sciences and Technologies , Alassane Ouattara University , BPv 18 Bouaké 01 , Côte d'Ivoire)、Fankroma Martial Thierry Koné、Soumaïla Dabonné(Laboratory of Biochemistry and Bioprocesses , Nangui ABROGOUA University , Faculty of Food Science and Technology Abidjan , Côte)、Patrice Lucien Kouamé(Laboratory of Biochemistry and Bioprocesses , Nangui ABROGOUA University , Faculty of Food Science and Technology Abidjan , Côte)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Pégnonsienrè Lacina Soro, Marcellin Konan Kouadio, Kouakou Adaye YAO, et al. PHYSICOCHEMICAL AND FUNCTIONAL PROPERTIES OF FLOUR PRODUCED BY SOLID-STATE FERMENTATION OF CASSAVA ‘BONOUA 2’, ‘TMS 4(2)1425’ AND ‘BOCOU 2’ VARIETIES GROWN IN CÔTE D’IVOIRE. World Journal of Advanced Research and Reviews 2026-09-16. DOI: 10.30574/wjarr.2026.31.3.2346. 原著ライセンス:CC BY.