著者の所属・活動拠点の国は、コロンビアです。
掲載誌:Revista de Investigaciones Altoandinas - Journal of High Andean Research
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:根を損なう病気はどこに広がっているのか
キャッサバ(ユカ)は、コロンビアでは国民の食卓に欠かせない作物であり、デンプンやエタノールの原料でもあります。なかでもカリブ地方は国内有数の産地で、コルドバ県とスクレ県は工業用キャッサバのほぼすべてを担っています。
この地域の生産を脅かしているのが「クエロ・デ・サポ(カエルの皮)」と呼ばれる病気です。感染した株では、根が細く繊維質で硬くなり、健全な株のように太りません。症状は収穫時に根を掘り出すまで分かりません。収量損失は50%を超えることがあり、100%に達した報告もあります。主な広がり方は、感染した株から取った挿し木(種苗)を植えることだとされています。
原因については見解が分かれています。ウイルスとファイトプラズマ(植物の養分の通り道に寄生する、細胞壁のない細菌の仲間)の混合感染とする説が有力です。一方で、トラドウイルス単独の感染で説明できるとする最近の報告もあります。いずれにしても、健全な種苗を選ぶことが重要だと論文は述べています。
カリブ地方でこの病気がどこに分布しているのか、正確な情報は不足していました。そこで研究チームは、コルドバ県とスクレ県での分布を明らかにし、さらにカリブ地方の他の産地での発生可能性を推定することを目的としました。
調べたこと:畑での調査と予測モデル
研究チームは、スクレ県13市町村とコルドバ県10市町村の主要産地で調査を行いました。対象は、互いに5km以上離れた74農場(スクレ45、コルドバ29)です。各農場で収穫期に10株を無作為に選び、計740株の根に症状があるかどうかを調べました。各地点の位置は記録され、データは2011年に取得され、2018年に検証されています。
次に、病気が確認された地点の位置情報と気候データを組み合わせ、MaxEntという手法で分析しました。MaxEntは、生物が見つかった地点とその場所の環境条件をもとに、ほかの地域でその生物が見つかる可能性を推定する方法です。モデルの予測力は、AUCという指標で評価されています。AUCは1に近いほど、発生地点とそうでない地点をうまく見分けられていることを示します。
主な結果:スクレ県で広く発生、気温が分布を左右
病気にかかった根には、縦方向に唇のような形の裂け目が入っていました。これが畑で最も目立つ症状でした。調査した74農場で病気が確認された割合(有病率)は64%と報告されています。県別にみると、スクレ県は86.6%、コルドバ県は30%でした。スクレ県では、サバンナ地帯で66〜100%、モロスキージョ湾地域で100%と高い値を示しました。一方、サン・ホルヘ地域では0〜66%にとどまりました。感染の強さを示す指数は、スクレ県のベトゥリア、サンペス、コルドバ県のサン・アンドレス・デ・ソタベントで高い値でした。また、発生率と症状の重さの間には有意な相関がみられました。
予測モデルでは、病気はサバンナ型の農業生態地域で起こりやすいと示されました。スクレ県の中部の多くの市町村やサン・オノフレなどで、発生確率が高く推定されています。一方、サン・ホルヘ地域やモハナ地域では低い確率でした。両県を対象としたモデルのAUCは0.931、カリブ地方全体に広げたモデルでは0.969で、いずれも高い予測性能と報告されています。
気候要因のうち、モデルへの寄与が最も大きかったのは「最も暑い時期の最高気温」でした。最も小さかったのは「降水量の季節変動」です。モデルの推定では、最も暑い時期の最高気温が30℃を超えると発生確率が上がります。32〜34℃付近が最も起こりやすく、35℃を超えると確率は下がるとされました。また、最も寒い時期の最低気温が18〜22℃の範囲で、発生確率が高くなると推定されています。
調査地以外では、ベネズエラと接するペリハー山地を含むセサル県の中部・南部が、病気の発生に適した条件をもつ地域として推定されました(確率0.46〜0.75)。また「バハ・グアヒラ」と呼ばれるラ・グアヒラ県の地域、とくにサンタ・マルタ山地の東側、モンテス・デ・オカ、ペリハー山地も、確率はやや低いものの(0.26〜0.45)、リスクのある地域に挙げられています。
研究が示すこと
この研究は、カエル皮病がカリブ地方のキャッサバ産地、とくにスクレ県のサバンナ地帯に広く分布していることを、現地調査に基づいて示しました。また、気温条件をもとに、まだ調査されていない地域のどこで発生リスクが高いかを地図として推定しました。
原因がまだ確定していない病気でも、どこで起こりやすいかを把握すれば、健全な種苗の利用や監視をどの地域で優先すべきかを考える手がかりになります。研究チームの成果は、病気がまだ見られない産地への拡大を防ぐ対策の基礎となる情報を示したものといえます。
原著論文の著者・所属:Lilibeth Tordecilla Zumaque(Universidad de Córdoba, Colombia)、Rodrigo Orlando Campo Arana(Universidad de Córdoba, Colombia)、Oscar Alberto Burbano-Figueroa(Corporación Colombiana de Investigación Agropecuaria – AGROSAVIA)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Lilibeth Tordecilla Zumaque, Rodrigo Orlando Campo Arana, Oscar Alberto Burbano-Figueroa. Distribución espacial del cuero de sapo en yuca, en el Caribe colombiano. Revista de Investigaciones Altoandinas - Journal of High Andean Research 2026-08-14. DOI: 10.18271/ria.2026.721. 原著ライセンス:CC BY.