著者の所属・活動拠点の国は、オーストラリアです。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

捨てられがちな柿の部位に注目した理由

柿は世界で広く食べられている果物です。論文によると、2024年の世界生産量は約507万トンで、その約8割を中国が占めています。柿の健康への働きを調べた研究は多いものの、その大半は普段食べる果肉を対象としてきました。一方、加工の過程で出る皮、種、葉、へた(がく)は、十分に利用されないまま捨てられることが少なくありません。スペインでは生産量の最大約3割が廃棄される可能性があるという報告もあり、経済的な損失に加え、有機ごみの増加による環境への影響も指摘されています。

著者らは、こうした未利用部位を資源として生かす「循環型経済」の観点から、柿の副産物にどのような成分が含まれ、どのような生理的な働きが報告されているかを整理しました。あわせて、食品や健康関連の分野での利用可能性と、実用化を妨げている課題をまとめることを目的としています。

どのように文献を集めたか

本研究は、新たな実験を行ったものではなく、既存の研究を集めて整理した文献レビューです。研究チームはScopus、Web of Science、PubMed、ScienceDirectといった主要な学術データベースで、2000年から2025年3月までに発表された論文を検索しました。重複の除去や内容の確認を経て、最終的に36件の研究を分析の対象としています。

対象となった研究は、目的も実験方法も測定項目もさまざまでした。そのため著者らは、数値を統計的に統合する手法はとらず、副産物の部位や働きの種類ごとに内容を文章で整理する方法を選んでいます。

部位ごとに異なる豊富な成分

レビューによると、柿の副産物には、没食子酸やカフェ酸、フェルラ酸などのフェノール酸、ケルセチンやカテキン類などのフラボノイド、カロテノイド、タンニン、食物繊維、脂質といった多様な成分が含まれています。

部位別に見ると、葉はフラボノイドなどのポリフェノールが豊富です。皮は果肉よりもフェノール化合物やカロテノイドを多く含みうることが報告されており、乾燥重量の最大40%を食物繊維が占める場合もあるとされます。種は全体の約70.4〜78.3%が脂肪酸で、リノール酸やオレイン酸が主な成分です。へたにも没食子酸やクロロゲン酸などのポリフェノールが含まれますが、個々のフラボノイドの種類や量はまだ十分に解明されていません。

報告されている働きと、その証拠の段階

これらの成分については、抗酸化作用、炎症を抑える作用、血糖や血中脂質に関わる作用、抗菌作用などが報告されています。たとえば、柿の葉の抽出物は試験管内の実験で、糖の分解・吸収に関わる酵素(α-グルコシダーゼ)の働きを、比較に用いた糖尿病治療薬アカルボースよりも強く抑えました。さらにラットを用いた実験では、抽出物の投与量が多いほど糖を摂取した後の血糖値の上昇が抑えられたと報告されています。このほか論文では、柿のタンニンが脂質の吸収や肝臓での脂肪合成に関わる仕組みに影響し、腸内細菌のバランスを変化させたとする研究報告も紹介されています。

ただし著者らは、こうした知見の大部分が試験管内の実験や動物実験から得られたものであり、人を対象とした臨床的な裏付けはまだ限られていると強調しています。がん細胞に対する作用の報告もありますが、それをもって人でのがん予防や治療効果を示すものではないとしています。また、成分の濃度が高いからといって必ずしも健康への効果が大きいとは限らないこと、研究ごとに抽出方法や評価方法が異なるため、結果を単純に比べにくいことも課題として挙げています。

このレビューが示すこと

このレビューは、これまで捨てられることの多かった柿の皮、種、葉、へたが、多様な成分を含む資源になりうることを、部位ごとに整理して示しました。同時に、現時点で報告されているのはあくまで「生理的な働きの可能性」であり、人での効果が確かめられた段階ではないという線引きも明確にしています。未利用資源の価値と、まだ解明されていない部分の両方を見渡せる点に、この研究の意義があります。

原著論文の著者・所属:Huiwen Wang(Faculty of Science, School of Agriculture, Food and Ecosystem Science, The University of Melbourne, Parkville, VIC 3010, Australia)、Weishi Hou(Faculty of Science, School of Agriculture, Food and Ecosystem Science, The University of Melbourne, Parkville, VIC 3010, Australia)、Haseeb Anwar(School of Agriculture, Environmental, and Veterinary Sciences, Charles Sturt University (CSU), Wagga Wagga, NSW 2650, Australia)、Muhammad Sajid Arshad(Faculty of Science, School of Agriculture, Food and Ecosystem Science, The University of Melbourne, Parkville, VIC 3010, Australia)、Malik Adil Nawaz(Faculty of Science, School of Agriculture, Food and Ecosystem Science, The University of Melbourne, Parkville, VIC 3010, Australia; School of Agriculture and Food Sustainability, The University of Queensland, St Lucia, QLD 4072, Australia)、Hafiz Ansar Rasul Suleria(Faculty of Science, School of Agriculture, Food and Ecosystem Science, The University of Melbourne, Parkville, VIC 3010, Australia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Huiwen Wang, Weishi Hou, Haseeb Anwar, et al. Persimmon By-Products: Bioactive Phytochemicals, Sustainable Valorization and Potential Food and Health Applications. Nutrients 2026-09-27. DOI: 10.3390/nu18193194. 原著ライセンス:CC BY.