掲載誌:FUDMA Journal of Sciences

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

捨てられがちな果物の種に注目した理由

果物の加工では、果皮や搾りかす、種などが大量に残ります。論文によると、世界の果物生産量は2022年に9億3300万トンに達したと報告されており、果物の種類や加工方法によっては、こうした副産物が果実全体の重さの最大60%を占めるとされています。その多くは価値のある原料として使われず、廃棄物として扱われています。

研究チームが注目したのは、これらの副産物のうち果物の種です。種には食物繊維が多く含まれると報告されています。食物繊維は、人の消化酵素ではほとんど分解されない植物由来の成分です。一方で、種の食物繊維に関する既存研究は、果物の種類や品種、熟度、分析方法、抽出条件がまちまちで、結果を直接比べにくいという問題があります。また、健康への効果に関する根拠の多くは、果物の種に由来する繊維を直接調べた研究ではなく、食物繊維一般についての研究から得られています。

そこで著者らは、果物の種に由来する食物繊維について、成分、取り出し方、食品としての性質、健康に関する知見、安全性、食品への応用をまとめて整理しました。あわせて、比較やより広い利用を妨げている課題を明らかにすることも目的としています。

どのように文献を整理したか

この論文は、新たな実験を行った研究ではありません。既存の文献を読み解いてテーマごとにまとめる「ナラティブレビュー」と呼ばれる形式をとっています。決まった手順で網羅的に文献を集めて評価する系統的レビューではなく、複数の研究結果を統計的に統合するメタ解析も行っていないと、著者ら自身が明記しています。

対象は主に2020年から2026年に発表された査読付き論文で、基礎的な情報を含む場合はそれ以前の文献も用いました。学術データベースで、果物の種、食品への応用、安全性、栄養の吸収を妨げる成分(反栄養因子)などの語を組み合わせて検索しています。

重点的に取り上げたのは、マンゴー、アボカド、ブドウ、オレンジ、リンゴの種です。これらを選んだ理由は、成分、機能、加工、食品応用について比較的多くの研究の蓄積があるためです。数ある果物の種の優劣を順位づける意図ではないと説明されています。

報告された主な内容

整理された文献からは、種ごとに特徴が報告されていました。たとえばアボカドの種については、乾燥重量100グラムあたり69.2グラムの食物繊維を含むという研究が引用されています。ブドウの種については、総食物繊維が100グラムあたり40.2〜43.7グラムという報告が紹介されています。全体として、水に溶けにくい不溶性の繊維が主体である種が多いとされました。また、種にはポリフェノールやフラボノイドといった生理活性をもつ成分も一緒に含まれていると報告されています。

食品素材としての性質については、水を抱え込む性質、とろみをつける性質、油と水を混ざった状態に保ちやすくする働き、抗酸化性などが報告されています。これらの性質を背景に、パンや焼き菓子、ヨーグルトやアイスクリームなどの乳製品、肉製品に使われた例がまとめられました。ただしパンでは、繊維が多くの水を吸うため、膨らみが小さくなったり固くなったりすることがあるとも報告されています。

健康面では、腸内環境、血糖の管理、心血管の健康との関連を示す文献が紹介されています。ただし前述のとおり、こうした根拠の多くは食物繊維一般に関する研究に基づいています。著者らは、より広く利用するには人を対象とした研究による強い裏付けが必要だとしています。

安全性にも注意が向けられています。リンゴなどの種には、組織が壊れると有毒なシアン化水素を生じうるアミグダリンという成分が含まれます。オレンジの種でも反栄養因子が報告されています。そのため著者らは、加工条件や使用量を慎重に評価すべきだとしています。さらに、規制上の受け入れは栄養成分だけから判断せず、種ごとに確認すべきだと指摘しています。

このレビューが示すこと

著者らは、果物の種が、捨てられていた資源を多用途の食品素材に変えうる持続可能な食物繊維源であると結論づけています。一方で、課題も明確に示しました。成分が種類や栽培条件によって大きくばらつくこと、抽出や分析の方法が統一されていないこと、AIなどの新しい技術がまだほとんど活用されていないことです。

このレビューは、果物の種の食物繊維について「有望な素材である」という期待と、「比較や安全性の評価に必要な基盤がまだ整っていない」という現状の両方を整理したものといえます。

著者:Raliya Iliyasu(Aliko Dangote University of Science and Technology)、Hassana Jibril、Hauwa Dauda Adamu、Aisha Idris Ali、Olajoke Mofoluke Alalade、Aminu Barde、Adamu Isa

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Raliya Iliyasu, Hassana Jibril, Hauwa Dauda Adamu, et al. Dietary Fiber from Fruit Seeds: Functional Properties, Health Benefits and Food Applications. FUDMA Journal of Sciences 2026-10-08. DOI: 10.33003/fjs-2026-1020-4585. 原著ライセンス:CC BY.