著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。

掲載誌:Ágora

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

世界では十分な食料を安定して得られない「食料不安」が続いています。著者らは、食材を無駄なく使い、廃棄物を減らしてきた料理の技術を歴史からたどり直すことが、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標2「飢餓をゼロに」を進める手がかりになると考えました。

そこで研究チームは、古くから文化の土台となってきたアジアの料理に注目しました。東洋の料理が南米のさまざまな社会の食文化にどう影響したかを分析し、東西の交流を示すことを目的としています。調べた観点は、調理技術、地域で手に入る食材への置き換え、地理的・社会文化的な違い、食材を余さず使う工夫です。あわせて、ブラジルを中心とする食品ロスの深刻な状況や、目標12「つくる責任 つかう責任」との関係も論じています。

方法と取り上げた内容

この研究は、新たな実験や調査ではなく、既存の文献を集めて整理する文献レビューです。東洋の食文化とその地域ごとの変化に関する文献をもとに、食文化の移り変わりを、文明の広がりや国際関係の変化と結びつけて読み解いています。

論文によると、日本料理は長く中国の料理の影響を受けながら、独自の特徴を育てました。2013年12月には、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されています。20世紀初めには日本人移民がブラジルに渡り、日本料理が少しずつ広まりました。論文はその例としてパン粉を挙げ、日本人がパンづくりをポルトガル人から学んだという経緯にも触れています。

ペルーについては、中国人、のちに日本人の移民が、現地の食材に合わせて調理技術を変えていったことが紹介されています。論文が引く文献によれば、1849年から1874年の間に約9万人の中国人がペルーに渡り、綿花やサトウキビの農園で働きました。中国人はペルー料理の形成にも大きな役割を果たしたとされています。

主な報告:食材を無駄にしない考え方

著者らは、食品ロスへの取り組みが特に進んだ国として日本を取り上げています。土地の制約や戦争などの歴史を背景に、日本では無駄を許さない文化が育ち、「もったいない」という生活の考え方が生まれたと論文は説明します。これは、あらゆる資源をその寿命の最後まで生かす姿勢を指します。廃棄を出さない循環型経済とよく似ていますが、環境のための一時的な習慣ではなく、暮らし方そのものを変える点が異なるという見方が引用されています。

また、持続可能な食の中心的な考え方として、植物性・動物性を問わず、普段は捨てられがちな部分まで食材を丸ごと使う「食材の全体利用」が紹介されています。日本料理については、旬の時期に食材を選んで質と量を確保すること、豊かな時期に保存食を作って実りの少ない時期に備えることが挙げられています。発酵は食品を安全に保存するだけでなく、ビタミンB群を増やすという文献の記述も取り上げられています。

著者らは、日本の文化と料理が環境の持続可能性に良い形で貢献でき、とくにブラジルで広げられる具体的な実践を示していると述べています。

研究が示す意味

著者らは、料理の本質は農業にあり、食料の安全は土地を守ることにかかっていると結論づけています。東洋の食の考え方は領土の拡大や人の移動を通じて多くの社会に根づき、色・香り・味・食感・盛り付けを大切にする現代の料理に受け継がれているといいます。

食材を無駄にしないという文化的な価値を学ぶことは環境教育につながります。資源を適切に使えるようになれば、人々の食と栄養の安全を取り戻せる、と著者らは考えています。料理の歴史を振り返ることが食品ロスや飢餓という現代の課題を考える支えになる、というのがこの論文の伝えるメッセージです。

原著論文の著者・所属:Laura Kiyoko Ide(Universidade Federal do Rio de Janeiro)、Carlos Alberto Figueredo da Silva(Universidade Salgado de Oliveira)、José Teixeira de Seixas Filho(Fundação Instituto de Pesca do Estado do Rio de Janeiro - FIPERJ)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Laura Kiyoko Ide, Carlos Alberto Figueredo da Silva, José Teixeira de Seixas Filho. um The concept of Eastern cuisine and the sustainability of contemporary South American societies. Ágora 2026-09-03. DOI: 10.17058/agora.v28i1.20258. 原著ライセンス:CC BY.