著者の所属・活動拠点の国は、イランです。
掲載誌:Applied Food Research
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
日持ちしにくいイチゴの品質をどう保つか
イチゴは収穫後も呼吸が盛んで、収穫後に品質が落ちやすいため、日持ちが短い果物です。研究チームは、収穫後の品質低下を抑える方法として、収穫前に施す処理に着目しました。
使われたのは、カニやエビの殻などに由来する多糖類「キトサン」と、オレガノやタイムなどの植物の香り成分として知られる「カルバクロール」を組み合わせた処理液です。研究の目的は、この処理液に含まれるカルバクロールの濃度と貯蔵期間の組み合わせが、貯蔵中のイチゴの品質にどう影響するかを調べ、品質を保ちやすい条件を見つけることでした。
濃度と貯蔵日数を組み合わせて調べる
抄録によると、研究チームは品種「パロス(Paros)」のイチゴを対象に、1.5%のキトサンにカルバクロールを0〜0.6%の範囲で加えた処理液を収穫前に施しました。比較対象として、蒸留水だけを用いた無処理区も設けています。収穫後は30日間貯蔵し、その間の品質の変化を調べました。
評価した項目は、ポリフェノールの総量(総フェノール含量)、フラボノイドの総量、ビタミンC、果汁に溶けている糖などの量を示す可溶性固形分、果肉の硬さ、そして水分が抜けることによる重量の減少です。
分析には「応答曲面法」と呼ばれる手法が用いられました。これは、濃度や日数といった複数の条件を変えながら得た結果をもとに数式のモデルを作り、条件の組み合わせが結果にどう影響するかを見積もったり、最もよい条件を探したりするための統計的な方法です。
重量の減少を抑え、成分や硬さを保つ傾向
著者らの報告では、収穫前にキトサン・カルバクロール処理を施したイチゴは、蒸留水で処理した対照と比べて、貯蔵中の重量の減少が有意に少なく、生理活性をもつ成分や果肉の硬さがよく保たれていました。
作成した数式モデルについて、研究チームは、実際のデータへの当てはまりがよく、予測する力も高いと評価しています。当てはまりの度合いを示す指標である決定係数(R²)は0.89を上回ったと報告されています。
さらにモデルから求めた最適条件は、カルバクロール濃度0.55%、貯蔵期間およそ20日であり、この条件で品質の安定性が最も高くなったとされています。
自然由来の素材で品質を保つ可能性
著者らは、収穫前に施すキトサン・カルバクロール処理が、収穫後の流通過程でイチゴの日持ちを延ばし、栄養面の品質を保つための、自然由来で効果的な方法になりうると述べています。その仕組みについては、酸化に関わる過程への作用や果肉の組織構造の維持が関係している可能性を挙げていますが、抄録の中でも可能性として示されている段階です。
この研究は、収穫後の保存方法だけでなく、収穫前の処理や処理液の配合の調整によっても、イチゴの貯蔵中の品質が左右されうることを示した報告といえます。
原著論文の著者・所属:Zeinab Ghasemi Arshad(Department of Horticultural Sciences, Faculty of Agriculture, Lorestan University, Khorramabad, Iran)、Abdollah Ehtesham Nia(Department of Horticultural Sciences, Faculty of Agriculture, Lorestan University, Khorramabad, Iran)、Isa Hazbawi(Department of Biosystems Engineering, Faculty of Agriculture, Lorestan University, Khorramabad, Iran)、Hasan Momivand(Department of Horticultural Sciences, Faculty of Agriculture, Lorestan University, Khorramabad, Iran; Department of Horticultural Sciences, Faculty of Agriculture, University of Guilan, Rasht, Iran)、Morteza Soleimani Aghadam(Department of Horticultural Science, Imam Khomeini International University, Qazvin, Iran)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zeinab Ghasemi Arshad, Abdollah Ehtesham Nia, Isa Hazbawi, et al. Modeling and optimization of the effect of preharvest carvacrol concentration in chitosan–carvacrol composite treatment on the postharvest quality of strawberry during storage using response surface methodology (RSM). Applied Food Research 2026-10-23. DOI: 10.1016/j.afres.2026.102738. 原著ライセンス:CC BY.