著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Jurnal Kesmas dan Gizi (JKG)
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的:辛い食べ物と体重の関係を整理する
肥満は世界でもインドネシアでも増え続けている公衆衛生上の課題です。著者らは、肥満を招く要因の一つとして不健康な食事、とくに辛い食べ物のとりすぎに着目しました。辛い料理によく使われる唐辛子には、焼けるような辛さのもとになる「カプサイシン」という成分が含まれ、食欲やエネルギー摂取、体重の調節に影響する可能性があるとされています。
一方で、辛い料理は食欲を刺激して一食の量を増やしたり、油や肉、チリソース、ラー油などエネルギーの高い材料と一緒に調理されたりすることが少なくありません。辛さを和らげるために甘い食べ物や飲み物をとることもあり、全体のエネルギー摂取が増える可能性もあります。こうした点を踏まえ、著者らは辛い食べ物の摂取と過体重・肥満との関係を分析しました。中心となった問いは、辛い食べ物を食べる頻度や辛さの強さが過体重・肥満と関連するのか、そしてその関係にどのような要因が影響するのか、の二つです。
方法:既存研究を集めて読み比べる
この研究は、新たに参加者を集めて調査したものではなく、すでに発表された研究を集めて内容を整理・比較する「ナラティブ文献レビュー」です。著者らは2025年4月に学術文献データベースのGoogle ScholarとPubMedで検索を行い、2015年から2025年に発表された10件の文献を対象としました。そのうち、対象者、調べた摂取内容、結論が明確に示された9件の研究を中心に結果をまとめています。
取り上げられた研究の多くは中国の成人を対象としたもので、米国の全国健康栄養調査のデータを使った研究も含まれます。著者らは各研究の結論を、肥満に関する結果、食事や生活習慣による影響、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)に関する結果という三つの観点に分けて整理しました。
主な結果:関連は一様ではない
著者らによると、辛い食べ物と肥満の関係は研究によって一様ではありませんでした。中国の成人約1万3千人を中央値で9年間追跡した研究では、唐辛子の摂取が多いほど過体重・肥満になりにくいという逆向きの関連が報告されていました。ただし、この研究では唐辛子の摂取量を3日間だけで測っており、長期の食習慣を反映していない可能性があると著者らは指摘しています。
これに対し、ある時点での状態を調べる横断研究の多くと、9件の横断研究(参加者約19万人)をまとめたメタ分析では、辛い食べ物を多く・頻繁に食べることや、強い辛さを好むことが、全身の肥満、腹部の肥満、あるいは体格指数(BMI)の高さと関連していました。ある研究では、脂肪からとるエネルギーがこの関連を仲介している可能性も示されています。
著者らは、この食い違いの理由として、実験研究ではカプサイシン類を単独で調べることが多いのに対し、集団を観察する研究では実際の食生活が反映される点を挙げています。現実の辛い料理には油、肉、塩分、精製された炭水化物が含まれることが多く、こうした組み合わせによってエネルギー摂取が増えることが、肥満との関連を説明する一因になりうるとしています。また、年齢、性別、喫煙や飲酒、身体活動などの生活習慣、地域の気候や食文化(たとえば油の多い火鍋)も関係に影響しているようだと述べています。
血液中の脂質については、辛い食べ物の摂取が、いわゆる悪玉のLDLコレステロールの低さや善玉のHDLコレステロールの高さと関連していたという報告がありました。その一方で中性脂肪は高くなる傾向も見られ、著者らは、油やエネルギーの多い食事と組み合わさることが影響している可能性を指摘しています。
この研究が示すこと
著者らは、辛い食べ物を食べる頻度や辛さの強さは、とくに油や肉の多い高エネルギーの料理と一緒にとる場合に、肥満や腹部肥満と関連することが多いとまとめています。ただし、対象となった研究の多くは横断研究であるため、辛い食べ物が肥満の原因になると言い切ることはできません。また、摂取量の多くが本人の記憶による回答に基づくことや、「辛い食べ物」の定義や辛さの程度が研究ごとに異なることも限界として挙げられています。
このレビューから伝わるのは、辛さやカプサイシンそのものだけでなく、料理全体の中身や量、食べる頻度、生活習慣を含めて食事をとらえる必要があるという視点です。著者らは、辛い料理は適度にとり、料理全体の組み合わせにも気を配ることを勧めています。
原著論文の著者・所属:Amanda Haliza Meylannurdiya(Universitas Airlangga)、Triska Susila Nindya(Universitas Airlangga)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Amanda Haliza Meylannurdiya, Triska Susila Nindya. The Relationship Between Spicy Food Consumption and Overweight or Obesity: A Literature Review. Jurnal Kesmas dan Gizi (JKG) 2026-10-28. DOI: 10.35451/jkg.v9i1.3751. 原著ライセンス:CC BY.