著者の所属・活動拠点の国は、スペイン、ペルーです。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:貧血と過体重が同じ子どもに重なる問題
栄養不良というと食べ物が足りない状態を思い浮かべがちですが、現在は過体重や肥満も栄養の偏りの一つとされています。栄養不足や微量栄養素の欠乏と、過体重・肥満が同じ人、同じ家庭、同じ地域の中で同時に見られる状態は「栄養不良の二重負担」と呼ばれます。この研究では、個々の子どもについて、貧血と過体重(BMIにもとづく過体重または肥満)が同時にある状態を二重負担と定義しています。
著者らによると、ペルーではこれまでの研究の多くが5歳未満の子どもや母子を対象としてきました。5〜13歳の学童期の子どもで、貧血と過体重が同時に起きている状況を調べた研究は、ペルーにはなかったといいます。研究チームは、ペルー南部イカ州の学童を対象に、三つの目的を立てました。貧血と過体重が同じ子どもに同時に見られる割合を明らかにすること、それに関連する要因を探ること、そして学校の食環境の特徴を記録することです。
何を調べたか
研究は2025年4月から12月にかけて、イカ州内の5地区にある6校で行われました。都市部と農村部の両方が含まれるよう、協力の得られた学校が選ばれています。対象は5〜13歳の学童656人で、農村部が411人、都市部が245人でした。調査は、ある一時点の状態を調べる横断研究です。
訓練を受けた看護スタッフが身長、体重、腹囲を測定しました。世界保健機関(WHO)の基準を用いて、年齢に比べた身長の低さ(発育阻害)、体重の少なさ、BMIにもとづくやせ・過体重・肥満を判定しています。腹囲を身長で割った値が0.5以上の場合は、おなか周りに脂肪がたまった「中心性肥満」とみなしました。中心性肥満は補助的な指標として別に評価され、二重負担の定義には含まれていません。あわせて携帯型の機器で血液中のヘモグロビン濃度を測り、WHOの年齢別基準値を下回った場合を貧血としました。
保護者への質問票で、住まいや水道、トイレなどの生活環境も調べました。さらに、ペルー保健省の公式様式の一部を使い、校内の売店でどのような食品や飲料が売られているかを観察しました。
主な結果
発育阻害は1.4%、低体重は0.5%、やせは1.1%で、従来型の栄養不足はまれでした。これに対し、過体重は26.2%、肥満は24.7%で、合わせると50.9%の子どもに過体重がありました。中心性肥満も50.9%に見られ、農村部では55.0%、都市部では44.1%でした。
貧血は23.5%で、およそ4人に1人に当たります。農村部では26.0%、都市部では19.2%で、農村部のほうが有意に高い結果でした。貧血と過体重が同じ子どもに同時にある「二重負担」は9.9%、ほぼ10人に1人に見られました。農村部では11.4%、都市部では7.3%でしたが、この差は統計的に有意ではありませんでした。
関連要因の分析では、性別、年齢、居住地域などの条件を考慮しても、二重負担と有意に関連する要因は見つかりませんでした。一方、貧血のある子どもは、貧血のない子どもに比べて過体重である見込みが低いという関連が報告されています。また、水洗式でないトイレの家庭の子どもは、過体重である見込みが高いという関連が見られました。中心性肥満については、都市部に住む子どもと11〜13歳の子どもで見込みが低く、水道管による給水のない家庭の子どもで見込みが高いという関連が見られました。これらは横断研究で示された関連であり、原因と結果の関係を示すものではありません。
学校の売店では、砂糖入り飲料、揚げ物、菓子、包装されたクッキーなどが広く販売されていました。果物や野菜、健康的な調理食品といった選択肢は、置かれている学校が少ない状況でした。健康的な食事を勧める掲示や、不健康な食品の販売を制限している様子が確認された学校はありませんでした。
この研究が示すこと
著者らは、調査対象の学童では従来型の栄養不足が少ない一方、過体重が非常に多く、貧血も一定の割合で残っていると結論づけています。この組み合わせは、食生活や生活様式が変化する「栄養転換」の途中にある集団について報告されてきた特徴と一致するとしています。体重が多いことは、必要な微量栄養素が足りていることを意味しません。複数の形の栄養不良が同じ集団の中で共存しうることを、この研究は学童期の子どもについて示しました。
論文は、今回の結果が、複数の栄養不良にまとめて対応する学校での栄養の取り組みや、根拠にもとづく公衆衛生政策を考えるための基礎データになると述べています。
原著論文の著者・所属:Davis J. Marquez-Guzman(Centro de Investigación Biomédica en Red (CIBER) de Enfermedades Infecciosas, Instituto de Salud Carlos III; Departamento de Parasitología, Facultad de Farmacia, Universidad de Valencia)、Marianela Pecho-Tataje(Facultad de Enfermería, Universidad Nacional San Luis Gonzaga)、Mariela E. Pecho-Tataje(Facultad de Enfermería, Universidad Nacional San Luis Gonzaga)、Jose A. Pachas-Atuncar(Facultad de Ciencias Biológicas, Universidad Nacional San Luis Gonzaga)、Luis Curotto-Palomino(Facultad de Medicina Humana, Universidad Nacional San Luis Gonzaga)、Carlos Alberto Dávila-Hernández(Facultad de Medicina Humana, Universidad Nacional San Luis Gonzaga)、M. Adela Valero(Centro de Investigación Biomédica en Red (CIBER) de Enfermedades Infecciosas, Instituto de Salud Carlos III; Departamento de Parasitología, Facultad de Farmacia, Universidad de Valencia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Davis J. Marquez-Guzman, Marianela Pecho-Tataje, Mariela E. Pecho-Tataje, et al. The double burden of anemia and excess weight among schoolchildren in Southern Peru: prevalence, associated factors, and the school food environment. Frontiers in Nutrition 2026-10-28. DOI: 10.3389/fnut.2026.1965478. 原著ライセンス:CC BY.