著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Journal of Artificial Intelligence and Technology Information (JAITI)

ライセンス: CC BY-SA 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究のねらい

コーヒーの香りや味、豆の最終的な色は、生豆を加熱して飲める状態にする「焙煎(ロースト)」で大きく左右されます。論文によると、インドネシアでは多くの農家や生産者が焙煎度合いの見極めに苦労しています。家庭規模の生産現場では、同じ種類の豆でも焙煎が一定しないために味が違ってしまうことがあるといいます。

インドネシアの研究チームは、焙煎度の判定を人の主観に頼らず一貫して行う方法を探りました。そのために、豆の画像から取り出した色の情報を使い、人工ニューラルネットワークで焙煎度を自動分類する仕組みを作りました。研究の中心にあるのは、色を数値で表す二つの方式「HSV」と「LAB」のどちらが焙煎度の違いをよく捉えられるかという比較です。HSVは色を色相・彩度・明度に分けて表します。LABは明るさと、緑から赤、青から黄という二つの色の軸で表します。著者らは、これまでの研究の多くが一種類の色表現しか使っておらず、色表現どうしの性能を詳しく比べていなかった点を課題として挙げています。

どのように調べたか

分類する焙煎度は、生豆(グリーンビーン)、浅煎り、中煎り、深煎りの4段階です。画像は合計1600枚を用いました。各段階300枚、計1200枚を学習用とし、各段階100枚、計400枚を性能の確認用としました。確認用の画像は学習には使っていません。

まず画像から背景を取り除き、豆の部分だけを切り出しました。この処理では、色の範囲で豆の領域を抽出し、ノイズや欠けを整える処理を加えています。こうして分類に使う色情報が豆の部分だけから得られるようにしました。切り出した画像はHSVとLABそれぞれの形式に変換し、その色の特徴をニューラルネットワークに入力しました。

分類には「誤差逆伝播法(バックプロパゲーション)」で学習するニューラルネットワークを使いました。これは、予測と正解のずれをもとに内部の重みを少しずつ調整していく学習方法です。ネットワークは入力3つ、出力4つで、中間層の大きさを7と8の二通り試しました。さらに学習の歩幅にあたる学習率を3通り、学習の繰り返し回数を3通り変え、最も良い設定を探しました。最後に、二つの色表現で同じ確認用画像に対する結果を比べ、その差が偶然の範囲を超えるかどうかをマクネマー検定という統計手法で調べました。

主な結果

最も良い設定での確認用画像に対する正解率は、HSVが99.25%、LABが99.75%でした。学習用データでの正解率はHSVが99.00%、LABが99.41%です。学習時と確認時の正解率がともに高く、値も近いことから、著者らは、モデルが学習データを丸暗記しているだけだという強い兆候は見られなかったとしています。

誤分類の数はLABのほうが少なくなりました。ただし、マクネマー検定の結果は0.500(p>0.05)で、二つの色表現の差は統計的に有意ではないと報告されています。著者らはLABの誤りが少なかった理由を次のように考察しています。LABの二つの色の軸は、緑の生豆から濃い茶色の深煎りへと段階的に変わる色の変化を表すのに適している。一方、HSVの色相は彩度が低い色や暗い色で不安定になりやすく、誤りは中煎りの豆で多く生じた。

論文は、正解率が高くなった背景として、データの条件にも触れています。すべての画像がほぼ同じ照明と均一な背景で撮影され、焙煎段階ごとの色の違いも比較的はっきりしていたため、分類しやすいデータだったという説明です。また、使った分類手法が一種類だけであることも、限界として挙げています。

この研究が示すこと

この研究は、撮影条件がそろった画像であれば、豆の色の情報だけでも4段階の焙煎度をHSVとLABのどちらでも非常に高い精度で分類できたことを報告しています。LABは誤りがやや少なかったものの、その優位は統計的には確かめられませんでした。焙煎度の見極めを人の目に頼ってきた現場に対し、色にもとづく一貫した判定の可能性を示した成果といえます。

原著論文の著者・所属:Uswatun Hasanah(Universitas Sulawesi Barat)、Sulfayanti Sulfayanti(Universitas Sulawesi Barat)、Nurhikma Arifin(Universitas Sulawesi Barat)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Uswatun Hasanah, Sulfayanti Sulfayanti, Nurhikma Arifin Perbandingan Ruang Warna HSV dan LAB pada Klasifikasi Tingkat Roasting Biji Kopi Menggunakan Jaringan Syaraf Tiruan Backpropogation. Journal of Artificial Intelligence and Technology Information (JAITI) 2026-09-21. DOI: 10.58602/jaiti.v4i3.301. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。