著者の所属・活動拠点の国は、ポーランドです。
掲載誌:Applied Sciences
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
肉は良質なたんぱく質やビタミンB群、鉄や亜鉛などのミネラルを含み、バランスのよい食事を支える食品です。その一方で、加熱や燻製などの加工の過程で、健康への悪影響が懸念される化合物が生じることがあります。
著者らは、こうした化合物のうち健康への影響が最も大きいとされる3つのグループに注目しました。燻製や焼き調理で生じやすい「多環芳香族炭化水素(PAH)」、たんぱく質の多い食品を加熱したときにできる「複素環式芳香族アミン(HAA)」、そして加工肉などで生じる「ニトロソアミン」です。論文によると、国際がん研究機関(IARC)は2015年に、加工肉を「ヒトに対して発がん性がある」グループ、赤肉を「おそらく発がん性がある」グループに分類しています。こうした背景を踏まえ、これらの化合物がどのように生じるのか、そして製造技術によってどこまで減らせるのかを既存の研究から整理することが、この論文の目的です。
何を調べたか
この研究は新たな実験ではなく、これまでに発表された研究をまとめた文献レビューです。著者らは主要な学術データベースから1990年から2023年までの文献を検索し、3つの化合物グループと肉・肉製品に関する研究を集めました。さらに、見つかった論文の参考文献もたどって関連研究を補いました。
論文はまず各化合物の性質と生成の仕組みを整理しています。PAHは、酸素が十分でない状態で有機物が不完全に燃えるときに生じ、肉製品では特に燻製品や網焼きの製品で多く見つかると紹介されています。HAAは、肉に含まれるアミノ酸、クレアチン・クレアチニン、糖が加熱によって反応してでき、加熱温度によってできる種類が変わるとされます。ニトロソアミンは、発色や保存のために使われる亜硝酸塩などが、肉に含まれるアミン類と反応して生じます。論文によれば、塩漬けしただけの生の製品からは見つからず、加熱によって生じます。
規制の状況にも触れています。EUでは燻製肉製品などのPAHについて上限値が定められている一方、HAAやニトロソアミンについては食品中の上限値が定められていないと論文は述べています。また、肉加工で使う亜硝酸塩の添加量の上限が引き下げられたことも紹介されています。
主な結論:有害物質を減らすための手立て
レビューの結果、著者らは化合物ごとに有効と考えられる技術的な対策をまとめています。燻製品のPAHについては、煙を発生させる温度や発生方法、製品が煙に触れる時間といった燻製工程の管理が中心的な対策になると結論づけています。
網焼きなど焼き調理した製品のPAHについては、熱源に直接当てない間接的な焼き方、食材と火の間に物理的な仕切りを設ける方法、そして脂肪分を減らすことが有効だとしています。
HAAについては、加熱の温度と時間をできるだけ抑えることに加え、抗酸化成分を含む植物素材を使うことで含有量を減らせるとしています。
ニトロソアミンについては、その材料となる物質、つまりアミン類の一種である生体アミンや亜硝酸塩を、加熱する原料の段階で減らしておくことが重要な戦略だと述べています。
この研究が示すこと
このレビューは、肉製品に含まれうる有害物質の量が、加工や加熱のやり方によって左右されることを示しています。著者らは、ここで整理した技術的な取り組みが、有害物質を減らすための製造上のルールを改善したり、新たな製品を開発したりする際の土台になりうると位置づけています。
原著論文の著者・所属:Adam Więk(Department of Food Microbiology, Meat Technology and Chemistry, Faculty of Food Science, University of Warmia and Mazury in Olsztyn, Plac Cieszyński 1, 10-719 Olsztyn, Poland)、Monika Modzelewska-Kapituła(Department of Food Microbiology, Meat Technology and Chemistry, Faculty of Food Science, University of Warmia and Mazury in Olsztyn, Plac Cieszyński 1, 10-719 Olsztyn, Poland)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Adam Więk, Monika Modzelewska-Kapituła. Technological Possibilities of Shaping the Health Safety of Meat Products—Selected Aspects. Applied Sciences 2026-09-21. DOI: 10.3390/app16189369. 原著ライセンス:CC BY.