著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。

掲載誌:Brazilian Journal of Microbiology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

種子を守り、生育を支える細菌を探す

研究チームは、トウモロコシに病気を起こす糸状菌フザリウム・ベルチシリオイデスに対し、納豆から分離した細菌バチルス・サブチリスがどのように働くかを調べました。この病原菌は種子や根、茎、穂などに感染し、穀粒をカビ毒で汚染することもあります。研究の目的は、細菌による病原菌の抑制と、種子の発芽や発芽後の生育への影響を確かめることでした。

対象にしたのはNT1とNT2という二つの菌株です。研究チームは培地で病原菌と一緒に育てて抑制作用を調べるとともに、細菌の芽胞を含む粉末製剤と懸濁液製剤を作り、トウモロコシ種子の処理に用いました。芽胞は、細菌がつくる耐久性の高い形態です。

病原菌の広がりを抑え、粉末処理では地上部の生育も促進

培地上の試験では、両菌株が病原菌の菌糸の成長を抑えました。細菌を加えない対照と比べた抑制率はNT1で52.3%、NT2で61.7%で、NT2の方が有意に高い結果でした。

種子を製剤で処理してから病原菌を人工的に接種した試験では、どちらの菌株でも、粉末と懸濁液の両方が病害の重さを示す指数を有意に低下させました。この指数は、種子表面を菌糸が覆った程度から評価したものです。

別に行った発芽・生育試験では、いずれの処理も発芽率に有意な影響を与えませんでした。生育試験の7日目には、両菌株の粉末処理で、未処理の種子に比べて地上部が長くなり、苗の乾燥重量も増えました。一方、根の長さはすべての細菌処理で短くなっており、生育への影響は測定項目によって異なりました。

生育に関わる性質も確認

研究チームは、両菌株が植物の成長を調節する物質インドール酢酸をつくり、水に溶けにくいリン酸鉄からリンを溶け出させることも確認しました。一方、鉄を捕らえる物質であるシデロフォアの産生は、今回の試験条件では検出されませんでした。著者らは、インドール酢酸の産生やリン酸の可溶化が、生育の変化に関係した可能性を挙げています。

この研究は、試験条件下で、二つの菌株による種子処理が病原菌の広がりを抑え、粉末処理では苗の地上部の生育も促すことを示しました。著者らは、病害の抑制と生育に関わる複数の性質を併せ持つ点から、両菌株をトウモロコシの生物的防除に使う候補と位置づけています。

原著論文の著者・所属:Melissa Tiemi Hirozawa(Department of Biochemistry and Biotechnology, State University of Londrina, P.O. box 10.011, Londrina, Paraná, 86057-970, Brazil)、Mario Augusto Ono(Department of Immunology, Parasitology and General Pathology, State University of Londrina, P.O. box 10.011, Londrina, Paraná, 86057-970, Brazil)、Igor Massahiro de Souza Suguiura(Department of Immunology, Parasitology and General Pathology, State University of Londrina, P.O. box 10.011, Londrina, Paraná, 86057-970, Brazil)、Amanda Kaori Sugahara(Department of Biochemistry and Biotechnology, State University of Londrina, P.O. box 10.011, Londrina, Paraná, 86057-970, Brazil)、Maria Inês Rezende(Department of Biochemistry and Biotechnology, State University of Londrina, P.O. box 10.011, Londrina, Paraná, 86057-970, Brazil)、André Luiz Martinez de Oliveira(Department of Biochemistry and Biotechnology, State University of Londrina, P.O. box 10.011, Londrina, Paraná, 86057-970, Brazil)、Elisabete Yurie Sataque Ono(Department of Biochemistry and Biotechnology, State University of Londrina, P.O. box 10.011, Londrina, Paraná, 86057-970, Brazil. [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Melissa Tiemi Hirozawa, Mario Augusto Ono, Igor Massahiro de Souza Suguiura, et al. Multifunctional action of Bacillus subtilis for Fusarium verticillioides biocontrol and growth promotion in corn seeds. Brazilian Journal of Microbiology 2026-09-11. DOI: 10.1007/s42770-026-02080-x. 原著ライセンス:CC BY.