著者の所属・活動拠点の国は、アメリカ、エジプトです。

掲載誌:Food systems

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:オリーブ油の副産物を食品素材に

オリーブ油をつくる工程では、果肉や種の残りが半固形の搾りかす(オリーブポマス)として大量に出ます。水分や有機物が多く処理が難しいため、業界にとって大きな廃棄物問題とされています。一方で、この搾りかすには食物繊維や不飽和脂肪酸、ミネラル、ポリフェノールなどの成分も含まれています。

パンやビスケットに塗るチョコレートスプレッドは、室温で塗り広げやすくするために脂質を多く含み、砂糖も多い食品です。エジプトの研究チームは、オリーブの搾りかすを乾燥させて粉末にし、チョコレートスプレッドに加えることで、食物繊維と抗酸化成分を補う素材として使えるかを調べました。

何を調べたか

研究チームは、コロネイキ種オリーブの搾りかすを50℃で乾燥させて粉砕し、粉末にしました。この粉末を、ひまわり油、砂糖、脱脂乳、レシチン、ココアパウダーの一部と置き換える形で、2%、4%、6%、8%の割合で配合した4種類のスプレッドをつくり、粉末を加えない対照品と比べました。

調べた項目は、水分や脂質、糖、繊維などの成分、ポリフェノール類の総量と種類、抗酸化活性、色、硬さや粘りなどの食感、粘度、微生物の状態、そして官能評価です。抗酸化活性は、DPPHと呼ばれる試薬由来の不安定な分子(ラジカル)をどれだけ消す働きがあるかで測りました。官能評価では、訓練を受けていない50人が色、香り、口どけ、異味のなさ、パンへの塗りやすさ、全体的な好ましさを9段階で採点しました。試料は25±3℃の室温で3か月保存されました。

主な結果

粉末そのものは、粗繊維が35.10%と多く、ポリフェノールの総量が乾燥重量1グラムあたり没食子酸換算で97.77ミリグラム、DPPHによる抗酸化活性が93.92%と高い値を示したと報告されています。個別の成分では、ピロガロールやエラグ酸、チロソール、ヒドロキシチロソールなどが検出されました。

スプレッドでは、粉末の割合が増えるほど粗繊維やセルロース、ヘミセルロース、リグニンといった繊維成分が増えました。粗繊維は対照品の0.67%から、8%配合品では3.76%になりました。ポリフェノールの総量も対照品の1グラムあたり4.11ミリグラムから8%配合品の11.60ミリグラムへ、フラボノイドの総量も0.80ミリグラムから1.06ミリグラムへと段階的に増え、抗酸化活性は69.22%から82.14%へ高まりました。論文は、抗酸化活性の上昇がポリフェノール量の増加と連動していたと述べています。一方、水分、水分活性(微生物が利用できる水の目安)、脂質、総糖量は配合量が増えるにつれて下がりました。

見た目と食感にも変化がありました。粉末が多いほど明るさが下がり、色合いを示す色相角が小さくなりました。色相角は6%と8%配合品で最も小さく、対照品と2%配合品が最も高い評価になりました。硬さ、まとまりやすさ、付着性、粘度は8%配合品が最も高い値を示しました。3か月の保存中、すべての試料が微生物学的に安定していたと報告されています。

官能評価では、全体的な好ましさについて2%と4%配合品の間に有意な差はなく、これらに対照品と6%配合品が続きました。8%配合品は最も低い評価でした。

研究が示すこと

この研究は、廃棄物として扱われがちなオリーブ油の搾りかすを、チョコレートスプレッドの食物繊維とポリフェノールを増やす素材として利用できる可能性を示しています。成分面では配合量が多いほど数値が上がる一方、色や食感が変わり、8%では好まれにくくなりました。今回の評価では、2〜4%程度の配合が、成分の上乗せと食べやすさを両立した範囲として位置づけられます。

原著論文の著者・所属:R. M. ELSaid(Horticultural Crops Technology Research Department, Food Technology Research Institute, Agricultural Research Center)、H. M. Abotaleb(Special Food and Nutrition Department, Food Technology Research Institute, Agricultural Research Center)、A. H. S. Soliman(Horticulture Crops Technology Department, Food Technology Research Institute, Agricultural Research Center)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):R. M. ELSaid, H. M. Abotaleb, A. H. S. Soliman. Utilization of olive pomace as a dietary fiber and antioxidant source in chocolate spread. Food systems 2026-10-22. DOI: 10.21323/2618-9771-2026-9-3-558-566. 原著ライセンス:CC BY.