著者の所属・活動拠点の国は、クロアチアです。
掲載誌:Naše more
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的
研究チームは、ムラサキイガイ(Mytilus galloprovincialis)の体内の脂肪酸組成が、水温と餌の量の組み合わせによってどう異なるかを調べました。とくに、多価不飽和脂肪酸や、その一部であるオメガ3系脂肪酸などの割合に注目しました。
これまでの研究では、水温と餌の影響を別々に調べたり、給餌量を一定にしたりする例が多く、同じ量の餌を与えたときに、水温が違っても同じような脂肪酸組成になるのかは十分に分かっていませんでした。
何を、どのように調べたか
研究チームは、水を循環させる飼育設備で、水温12、18、24℃と、乾物量基準で3.0、4.5、6.0%の給餌量を組み合わせ、計9条件を比較しました。各条件に水槽を1つ用い、実験開始時には各水槽に約110個体を入れました。7日間、餌を与えずに水温などに慣らした後、微細藻類のティソクリシス・ルテア(Tisochrysis lutea)を15日間与えました。
給餌前と15日間の給餌後に、各水槽から30個体ずつ採取し、10個体をまとめた試料を3つ作りました。殻を除いた軟らかい組織と餌の脂肪酸を、成分を分離して測定するガスクロマトグラフィーで分析しました。結果は、同定できた脂肪酸の合計に対する各成分の割合として示しています。
主な報告結果
給餌後の脂肪酸組成は、水温と給餌量の組み合わせによって異なりました。研究チームが最も良好な組成と評価したのは、18℃・給餌量3.0%の条件でした。この条件では、多価不飽和脂肪酸が51.41%、オメガ3系脂肪酸が47.81%で、いずれも比較した条件の中で最高でした。一方、飽和脂肪酸は23.84%と最低でした。
オメガ3系脂肪酸の割合は、12℃・給餌量3.0%でも42.48%と比較的高く、それ以外の条件では30.90~32.37%でした。18℃・給餌量3.0%では、とくにDHAの割合が41.45%に達し、同じ18℃で給餌量を増やした条件のおよそ2倍でした。
オメガ6系脂肪酸の割合は、どの水温でも給餌量が多いほど高くなり、オメガ6系とオメガ3系の比率も上昇しました。オメガ6系の割合は、12℃・給餌量3.0%で1.06%、18℃・給餌量6.0%で7.38%でした。
餌の脂肪酸にはDHAが13.48%含まれていた一方、EPAは0.69%と少量でした。貝の組織では、EPAはすべての条件で、量を定量できる下限を下回りました。研究チームは、こうした結果を理解するうえで、餌そのものの脂肪酸組成が重要だと述べています。
この報告が示すこと
著者らは、ムラサキイガイの脂肪酸組成を考えるには、餌の量だけでなく、水温との組み合わせや餌に含まれる脂肪酸にも目を向ける必要があると結論づけています。今回の条件では、餌を多く与えることが、そのまま著者らの評価する栄養面で望ましい組成につながるわけではありませんでした。
ただし、各条件に使った水槽は1つずつで、水槽固有の影響と水温・給餌量の影響を分けられません。そのため、著者らは統計的な有意差の検定を行わず、観察された傾向として報告しています。また、示された値は脂肪酸全体に占める割合であり、ある成分の割合が高いことは、その成分の絶対量が多いことを必ずしも意味しません。
原著論文の著者・所属:Petar Zuanović(University of Zadar Department of Ecology, Agronomy and Aquaculture)、Zoran Zorić(University of Zadar Department of Ecology, Agronomy and Aquaculture)、Ivan Župan(University of Zadar Department of Ecology, Agronomy and Aquaculture)、Tomislav Šarić(University of Zadar Department of Ecology, Agronomy and Aquaculture)、Tibor Janči(Faculty of Food Technology and Biotechnology Laboratory for Meat and Fish Technology)、Ana Dobrinčić(Faculty of Food Technology and Biotechnology Laboratory for Biochemical Engineering, Industrial Microbiology and Malting and Brewing Technology)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Petar Zuanović, Zoran Zorić, Ivan Župan, et al. Effects of Temperature and Feeding Regime on the Fatty Acid Composition of the Mediterranean Mussel (Mytilus galloprovincialis). Naše more 2026-10-23. DOI: 10.17818/nm/2026/2.6. 原著ライセンス:CC BY.