著者の所属・活動拠点の国は、ニュージーランドです。

掲載誌:Journal of Dairy Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

牛乳の脂肪には、炭素の鎖の長さや結合の種類が異なる、さまざまな脂肪酸が含まれています。研究チームは、放牧を中心に飼われている乳牛を対象に、品種によって乳の脂肪酸組成がどう違うのかを調べました。また、その品種差が、分娩後に乳を出し続ける期間(泌乳期)の段階によって変わるのかも検討しました。

対象は、ホルスタイン・フリーシアン種、ジャージー種、そして両者を掛け合わせた交雑種の3グループです。

調べた方法

研究チームは、春に分娩した乳牛90頭(ホルスタイン・フリーシアン33頭、交雑種31頭、ジャージー26頭)から、2023〜2024年の泌乳シーズンにわたって試料を集めました。毎月の牛群検定の記録790件を使い、乳量と乳成分の推移を把握しました。

乳の脂肪酸量は、乳に中赤外線を当てて得られるスペクトル(光の吸収のパターン)から推定しました。推定には、120試料についてガスクロマトグラフィーという分析法で実際に測った脂肪酸の値をもとに作った統計モデルを用いています。泌乳期を通じた変化のパターンは、個々の牛ごとのばらつきも考慮できる回帰モデルで表しました。

主な結果

論文によると、脂肪酸組成のばらつきに最も大きく関わっていたのは、品種よりも泌乳期の段階でした。短い鎖や中くらいの鎖の脂肪酸、そして飽和脂肪酸は、泌乳初期から後期にかけて増えました。一方、乳腺で新たに作られるのではなく血液から取り込まれた脂肪酸(既成脂肪酸)は減少しました。

乳脂肪率はジャージーが6.29%と最も高く、交雑種が5.50%、ホルスタイン・フリーシアンが5.32%と続きました。ジャージーの乳は、ホルスタイン・フリーシアンに比べて飽和脂肪酸が約23%多く、乳100グラムあたり0.80グラム多いと報告されています。

泌乳期全体を平均すると、交雑種は多くの脂肪酸グループでホルスタイン・フリーシアンに近い値を示しました。ただし、その傾向は脂肪酸の種類によって異なり、短い鎖の脂肪酸では両親の品種の中間でしたが、中くらいの鎖の脂肪酸ではホルスタイン・フリーシアンに近い値でした。

品種差は、泌乳期全体をまとめて分析した場合よりも、泌乳期の段階ごとに見たほうがはっきり表れました。段階によって品種の順位が入れ替わることはなく、変わったのは差の大きさでした。たとえば、ジャージーとホルスタイン・フリーシアンの飽和脂肪酸の差は、初期から後期にかけて乳100グラムあたり約0.11グラム広がりました。

研究が示すこと

著者らは、交雑種の乳の脂肪酸組成は脂肪酸の種類や泌乳期の段階によって異なり、両親の品種の単純な平均としては予測できないと結論づけています。品種と泌乳期の段階をあわせて見ることが、放牧牛の乳の脂肪の性質を理解するうえで重要であることを示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Yaliska Moreno-González(School of Agriculture and Environment, Massey University, Palmerston North 4442, New Zealand; Universidad de Panamá, Facultad de Ciencias Agropecuarias, Panamá City 0819, Panamá. Electronic address: [email protected])、Daniel Donaghy(School of Agriculture and Environment, Massey University, Palmerston North 4442, New Zealand)、Ignacio F. López(School of Agriculture and Environment, Massey University, Palmerston North 4442, New Zealand)、Benjamin Carter(School of Agriculture and Environment, Massey University, Palmerston North 4442, New Zealand)、Stephen E. Holroyd(Fonterra Research and Development Centre, Palmerston North 4442, New Zealand)、Alastair MacGibbon(Fonterra Research and Development Centre, Palmerston North 4442, New Zealand)、Nicolas López-Villalobos(School of Agriculture and Environment, Massey University, Palmerston North 4442, New Zealand. Electronic address: [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yaliska Moreno-González, Daniel Donaghy, Ignacio F. López, et al. Breed differences in milk fatty acid composition across lactation in grazing Holstein-Friesian, Jersey, and Holstein-Friesian × Jersey crossbred cows. Journal of Dairy Science 2026-09-01. DOI: 10.3168/jds.2026-28804. 原著ライセンス:CC BY.