著者の所属・活動拠点の国は、ウクライナです。

掲載誌:Scientific Progress & Innovations

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

腐植酸(フミン酸)は、土壌や石炭などに含まれる有機物から得られる物質群です。論文によると、腐植酸は多様な化学的な構造(官能基)をもち、金属などと強く結びつく性質があります。農業では、植物への微量栄養素の供給を助ける目的などで使われてきました。

家禽の飼料に腐植物質を加える研究は、これまで主に成長や健康、抗生物質の使用削減に関するものでした。肉の品質への影響、とくにウズラの肉や卵に含まれる脂肪の質についての情報は限られていました。そこで著者は、腐植物質を主成分とする飼料添加物を与えたときに、ウズラの肉と卵の脂肪酸組成がどう変わるかを調べました。脂肪酸組成とは、脂肪を構成する多様な脂肪酸がそれぞれどのくらいの割合を占めるかを示すものです。

どのように調べたか

試験に使った「Humivet」は、ウクライナ・チェルカースィ産の褐炭を原料とし、腐植酸を4%含む腐植酸ナトリウム溶液として作られた添加物です。もう一つの試験群には、経口用の動物用製剤「Chiktonikvet」を用いました。

生後90日のフェニックス・ゴールデン種のウズラを、20羽ずつ3群に無作為に分けました。1群目は何も加えない対照群、2群目は飲み水1リットルあたりHumivetを4ミリリットル、3群目は飲み水1リットルあたりChiktonikvetを2ミリリットル与えました。投与は21日間続けました。

投与期間の終了後、各群から5羽分の肉と5個の卵を採取しました。そして、ガスクロマトグラフィーという、成分を分離して量を測る方法で脂肪酸組成を分析しました。結果は、全脂肪酸に占める各脂肪酸の割合として示されています。

主な結果

肉では、HumivetとChiktonikvetのどちらを与えた群でも、対照群に比べていくつかの飽和脂肪酸の割合が低くなりました。対象はアラキジン酸、ベヘン酸、ミリスチン酸、ヘプタデカン酸です。飽和脂肪酸とは、分子内に二重結合をもたない脂肪酸です。一価不飽和脂肪酸のミリストレイン酸も減少しました。一方、飽和脂肪酸のうちステアリン酸だけは、添加物を与えた群で割合が高くなりました。

Humivet群の肉では、不飽和脂肪酸の割合が対照群より高くなりました。統計的に意味のある差が報告されたのは、リノール酸(対照群18.4%に対し19.9%)、オレイン酸、γ-リノレン酸、cis-8,11,14-エイコサトリエン酸の増加です。Chiktonikvet群でも、リノール酸の割合が対照群の18.4%に対して20.7%となり、統計的に意味のある増加が報告されました。

卵ではHumivet群で、リノール酸(対照群9.26%に対し11.7%)とオレイン酸(48.1%に対し49.0%)の割合が統計的に意味のある水準で高くなりました。ドコサヘキサエン酸(DHA)の割合も3群の中で最も高い値でした。論文によれば、卵に含まれるω-3脂肪酸の合計もHumivet群が最も高く、0.66%でした。Chiktonikvet群の卵では、アラキジン酸とヘプタデカン酸の割合が対照群より有意に高くなりました。対照群の卵では、エイコサペンタエン酸(EPA)などの割合が他の群より高い結果でした。

研究が示すこと

著者は、Humivetを飲み水1リットルあたり4ミリリットル与えると、ウズラの肉ではステアリン酸を除く飽和脂肪酸の割合が下がり、不飽和脂肪酸の割合が上がったと結論づけています。卵ではリノール酸とオレイン酸の割合が高まったとしています。

論文では、このような変化の仕組みについて考察もしています。腐植酸は、消化の働きや腸内細菌の状態を整えることを通じて間接的に作用している可能性があるといいます。ただし、これは先行研究に基づく考え方であり、仕組みそのものを今回の試験で確かめたわけではありません。この研究は、飲み水に加える腐植物質の添加物によって、ウズラの肉や卵の脂肪酸の構成が変わりうることを示した報告といえます。

原著論文の著者・所属:M. Stankov(Odesa State Agrarian University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):M. Stankov. Fatty acid composition of quail meat and eggs following dietary supplementation with a humic-based feed additive. Scientific Progress & Innovations 2026-09-12. DOI: 10.31210/spi2026.29.02.19. 原著ライセンス:CC BY.