この研究は、カナダの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Maturitas
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何を明らかにしようとした研究か
月経が12か月続けて止まった状態を自然閉経と呼び、その年齢は人によってかなり幅があります。研究チームは、カナダでは自然閉経がおおむね51歳ごろに起こる一方で個人差が大きいこと、そして閉経が早い場合は心血管疾患や骨粗鬆症などのリスクが高いとされ、遅い場合はホルモンに反応しやすいがんのリスクが高いとされることを、これまでの研究をもとに紹介しています。そのため閉経の時期を左右する要因を知ることには、集団の健康を考えるうえで意味があると述べています。
閉経の時期には遺伝や妊娠・出産に関わる要因が大きく関わりますが、食事は本人が変えられる要因の一つです。著者らは、酸化ストレスや炎症、インスリンの効きにくさ、ホルモン調節といった仕組みを通じて食事が卵巣の老化に関わる可能性が指摘されてきたと説明しています。ただしこれまでの研究結果はばらつきが大きく、食事全体のパターンと閉経時期との間に一貫した関係は確認されていないとしています。そこで本研究は、食事の「質」と食品の「加工の度合い」という二つの側面を同時に取り上げ、自然閉経の年齢と関連するかどうかを検討しました。
どのように調べたか
用いたのは、カナダ縦断的加齢研究(CLSA)という全国規模の追跡調査のデータです。研究チームは、調査開始時点で45歳以上かつ閉経前だった生物学的女性1,972人を分析対象としました。自然閉経より前に子宮摘出を受けた人や、乳がん・卵巣がんなど特定のがんの既往がある人、開始時点で化学療法を受けていた人などは除外しています。対象者は開始時(2011〜2015年)から2回の追跡調査を通じて観察されました。
食事は開始時に短い食事質問票で調べ、二つの指標に変換しています。一つはPURE健康食スコアで、果物と野菜、豆類、ナッツ、魚、乳製品、全粒穀物、未加工の肉という体によいとされる7つの食品グループの摂取状況を0〜28点で表したものです。点数が高いほどこの食事パターンに沿っていることを示します。もう一つは超加工食品の摂取で、工業的な加工の度合いで食品を分類する「Nova」という枠組みを参考に、加工肉や菓子パン、板チョコなどに当たる項目を三人の研究者が話し合って判別し、1日あたり何回食べるかとして集計しました。
解析にはCox比例ハザードモデルという、ある出来事が起こるまでの時間を扱う統計手法を用い、開始時の年齢、祖先の民族的・文化的背景、学歴、世帯収入、喫煙、飲酒、身体活動、初経年齢、子どもの数などの影響を順番に調整していきました。この手法では、ハザード比が1より大きいほど閉経までの時間が短い(閉経が早く起こる)ことを意味します。
報告された主な結果
平均4.08年(標準偏差1.93年)の追跡期間中に、1,148人が自然閉経を迎えました。閉経を迎えた人の平均年齢は53.07歳(標準偏差2.55歳)でした。開始時点の平均値は、超加工食品の摂取が1日5.60回、PURE健康食スコアが13.98点と報告されています。
他の要因を調整しない段階では、PURE健康食スコアが高いほど閉経までの時間が短いという関連がみられました(ハザード比1.013、95%信頼区間1.001〜1.025)。一方、超加工食品の摂取と閉経時期との間には統計的に意味のある関連はありませんでした。しかし、社会経済的な条件、生活習慣、妊娠・出産に関わる要因をすべて調整した最終的なモデルでは、超加工食品の摂取(ハザード比1.024、95%信頼区間0.977〜1.073)もPURE健康食スコア(ハザード比1.006、95%信頼区間0.986〜1.025)も、閉経までの時間とは独立した関連を示しませんでした。著者らは、調整前にみられた関連は主に開始時年齢や社会経済的要因、健康行動による交絡で説明できると述べています。
この結果は、超加工食品の分類をより厳しくした場合、閉経年齢を55歳以下に限定した場合、年齢そのものを時間軸として解析し直した場合など、複数の感度分析でも変わりませんでした。
研究チームは自ら限界も挙げています。使われた食事質問票はNovaの枠組みで食品を分類する目的で作られておらず、ヨーグルトやチーズ、ピーナッツバターなどは実際の商品によって加工の度合いが異なるため区別しきれないこと、1回あたりの量が記録されていないため摂取頻度しか把握できないことなどです。こうした測定上の誤差は関連を実際より小さく見せる方向に働きうるため、関連が確認されなかったという結果はその点を踏まえて読む必要があると説明しています。また食事は開始時の1回しか測定されていません。
この報告が示すこと
著者らは、閉経の時期は数十年かけて卵巣の卵胞が減っていく過程を反映しており、生涯にわたるさまざまな要因の積み重ねで決まると考えられると述べています。本研究で食事を測定したのは参加者が平均50歳ごろ、多くがすでに閉経の移行期に近づいた時点でした。その段階では卵巣の予備能はすでにかなり減っているため、中年期に測った食習慣では閉経の時期を左右しにくいのではないか、というのが著者らの解釈です。
同時に研究チームは、この結果を「食事が閉経前後の健康に関係ない」という意味に受け取るべきではないと明確に注意しています。今回調べたのは生殖の老化のうち閉経の時期という一つの側面だけであり、食事は体組成や骨・筋肉の健康、心臓や代謝の健康、認知機能の加齢変化、更年期症状や生活の質など、他の多くの健康の側面に関わりうるからです。閉経がいつ訪れるかは、中年期の食事よりも、より長い人生の経過全体を映すものかもしれない——本研究が投げかけているのは、そうした見方です。
著者:Bhavana Soma(Department of Kinesiology, McMaster University, Ivor Wynne Centre, 1280 Main Street West, Hamilton, Ontario, L8S 4K1, Canada. Electronic address: [email protected])、Dr Jennifer Heisz(Department of Kinesiology, McMaster University, Ivor Wynne Centre, 1280 Main Street West, Hamilton, Ontario, L8S 4K1, Canada. Electronic address: [email protected])、Alison Shea(Department of Obstetrics and Gynecology, Faculty of Health Sciences, McMaster University, 1280 Main Street West, Hamilton, Ontario, L8S 4K1, Canada. Electronic address: [email protected])、Kirsten Bell(Department of Kinesiology, McMaster University, Ivor Wynne Centre, 1280 Main Street West, Hamilton, Ontario, L8S 4K1, Canada. Electronic address: [email protected])、Anthea Christoforou(Department of Kinesiology, McMaster University, Ivor Wynne Centre, 1280 Main Street West, Hamilton, Ontario, L8S 4K1, Canada. Electronic address: [email protected])
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Bhavana Soma, Dr Jennifer Heisz, Alison Shea, et al. Dietary exposures and age at natural menopause: Evidence from the Canadian Longitudinal Study on Aging. Maturitas 2026-08-26. DOI: 10.1016/j.maturitas.2026.109104. 原著ライセンス:CC BY.