著者の所属・活動拠点の国は、メキシコです。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
歯周炎は、歯を支える歯ぐきや歯槽骨などの組織に慢性的な炎症が続き、進行すると歯を失うこともある病気です。著者らによると、重度の歯周炎は世界の成人の約11%、7億人以上に見られ、公衆衛生上の大きな負担となっています。また、2型糖尿病や代謝症候群、心血管疾患などのリスク上昇との関連も指摘されています。
食事は、歯周炎に関わる炎症や酸化ストレス、歯ぐきの下にすむ細菌のバランスの乱れに影響しうる、本人が変えられる要因と考えられています。ただし、特定の食品や栄養素、食べ方と歯周炎との関係を調べた研究はばらばらに行われており、どのような栄養面の取り組みが予防や治療に役立つのかについて合意はありません。そこで研究チームは、成人の普段の食事内容と歯周炎の臨床的な指標との関連について、これまでの研究を体系的に整理することにしました。
どのように調べたか
本研究はスコーピングレビューという手法を用いています。これは、ある分野でどのような研究が行われ、何が報告されているのかを幅広く整理し、知識の空白を明らかにするためのものです。著者らは医学文献データベースのPubMedで、2012年1月から2026年6月までに英語で発表された、18歳以上の成人を対象とする原著研究を検索しました。
対象としたのは、食品や栄養素の摂取を調べ、歯周炎の診断や臨床指標と関連づけた研究です。臨床指標には、歯と歯ぐきの間の溝の深さ(歯周ポケットの深さ)、歯を支える組織がどれだけ失われたかを示すアタッチメントロス、器具で探ったときの出血、歯槽骨の吸収、歯の喪失などが含まれます。一方、サプリメントや薬、洗口剤を用いた研究や、妊婦、子ども、糖尿病や肥満などの持病がある人を対象とした研究は除外しました。
最終的に36件の研究が選ばれました。内訳は、ある時点の状態を調べる横断研究が26件、人々を一定期間追跡するコホート研究が6件、ランダム化比較試験が3件、症例対照研究が1件です。研究の多くは北米とヨーロッパで行われていました。著者らは結果を「個々の栄養成分」「栄養素や食品のグループ」「食事パターン」の3段階に分けて整理しています。
主な結果
個々の栄養成分については、著者らは、たんぱく質を十分にとっている人では歯ぐきの出血が少なかったと報告しています。食物繊維の摂取が多いことは、歯槽骨の吸収や歯の喪失が少ないことと関連していました。また、ビタミンCやビタミンDの摂取が多いほど、歯周炎のリスクが低いという関連も示されています。
栄養素や食品のグループでは、ビタミンA・C・E・K、フラボノイド、食物繊維、緑黄色野菜を含む野菜、果物の摂取が、歯周ポケットの深さ、アタッチメントロス、歯の喪失、地域の歯周状態を評価する指数などと逆の関連を示しました。つまり、これらを多くとっている人ほど歯周の状態が良い傾向が見られたということです。
食事全体のパターンに目を向けると、炎症を抑える方向の健康的な食事パターンを守っている人ほど歯周炎のリスクが低い関連が一貫して見られました。反対に、炎症を促す方向の食事パターンは、リスクが高い方向の関連を示しました。
ただし、すべての研究で関連が見られたわけではありません。たとえば、キウイフルーツを1日2回食べる試験では、歯周治療と組み合わせた場合に治療を上回る追加の効果は認められなかったと報告されています。また、4週間砂糖を避ける試験では、出血などの改善が見られたものの、対照群との間に差はありませんでした。収集された研究の大半は横断研究であり、示されているのは主に関連です。
この研究が示すこと
このレビューは、個々の栄養素から食品のグループ、食事全体のパターンまで、さまざまな段階で食事内容と歯周炎との関連が報告されていることを一つにまとめました。著者らは、歯科診療の場で一人ひとりに合わせた栄養指導を取り入れることが、体の側の状態に働きかけて歯周治療の成果を高めるための有用な方法になりうると結論づけています。
原著論文の著者・所属:Nydia Y. Sanchez-Orozco(Doctorado en Ciencias de la Nutrición Traslacional, Departamento de Alimentación y Nutrición, Centro Universitario de Ciencias de la Salud, Universidad de Guadalajara, Guadalajara 44340, Jalisco, Mexico)、Miguel A. Robledo-Valdez(Doctorado en Ciencias de la Nutrición Traslacional, Departamento de Alimentación y Nutrición, Centro Universitario de Ciencias de la Salud, Universidad de Guadalajara, Guadalajara 44340, Jalisco, Mexico)、Alondra Ruiz-Gutierrez(Especialidad en Periodoncia, Departamento de Clínicas Odontológicas Integrales, Centro Universitario de Ciencias de la Salud, Universidad de Guadalajara, Guadalajara 44340, Jalisco, Mexico)、Carmen de la Rocha(Doctorado en Ciencias de la Nutrición Traslacional, Departamento de Alimentación y Nutrición, Centro Universitario de Ciencias de la Salud, Universidad de Guadalajara, Guadalajara 44340, Jalisco, Mexico; Instituto de Investigación en Cáncer en la Infancia y Adolescencia, Crecimiento y Desarrollo Infantil, Departamento de Clínicas de la Reproducción Humana, Centro Universitario de Ciencias de la Salud, Universidad de Guadalajara, Guadalajara 44340, Jalisco, Mexico)、Fabiola Márquez-Sandoval(Doctorado en Ciencias de la Nutrición Traslacional, Departamento de Alimentación y Nutrición, Centro Universitario de Ciencias de la Salud, Universidad de Guadalajara, Guadalajara 44340, Jalisco, Mexico)、Lucrecia Carrera-Quintanar(Doctorado en Ciencias de la Nutrición Traslacional, Departamento de Alimentación y Nutrición, Centro Universitario de Ciencias de la Salud, Universidad de Guadalajara, Guadalajara 44340, Jalisco, Mexico; Instituto de Investigación en Cáncer en la Infancia y Adolescencia, Crecimiento y Desarrollo Infantil, Departamento de Clínicas de la Reproducción Humana, Centro Universitario de Ciencias de la Salud, Universidad de Guadalajara, Guadalajara 44340, Jalisco, Mexico)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nydia Y. Sanchez-Orozco, Miguel A. Robledo-Valdez, Alondra Ruiz-Gutierrez, et al. Dietary Intake Associated with Periodontitis in Adults: A Scoping Review. Nutrients 2026-10-27. DOI: 10.3390/nu18213537. 原著ライセンス:CC BY.