著者の所属・活動拠点の国は、韓国です。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
韓国では、思春期早発症(性別ごとに通常より早い年齢で胸のふくらみなどの二次性徴が始まる状態)で医療機関を受診する子どもが大きく増えています。同じ時期に子どもの食生活の欧米化も進んでおり、食事と思春期の早まりとの関係に関心が集まっています。
研究チームは、この状況を背景に、2017〜2021年の韓国の1〜11歳の子どもについて、食品群や主要栄養素の摂取量に男女でどのような違いがあり、年ごとにどう変化したかを記述しました。とくに、思春期早発症の診断の目安となる年齢の直前にあたる6〜11歳に注目しています。著者らは、食事の摂取量が思春期早発症の男女差を説明するかどうかを検証する研究ではなく、全国規模の食事摂取の監視(サーベイランス)として位置づけています。
何をどのように調べたか
食事のデータには、韓国の全国調査である国民健康栄養調査(KNHANES)の2017〜2021年の公表値を使いました。12の食品群(豆類、海藻、肉、卵、乳製品、果汁飲料、コーラなど)と、炭水化物・たんぱく質・動物性たんぱく質・脂質の4つの栄養素について、性別・年・年齢層(1〜2歳、3〜5歳、6〜11歳)ごとの1日あたり摂取量を分析しています。分析の単位は一人ひとりの子どもではなく、「ある年の男児」「ある年の女児」といった集計値で、性別ごとに5年分の値を比べています。
あわせて、健康保険審査評価院(HIRA)の請求データから、思春期早発症の病名コードで受診した人数を同じ年齢層別にまとめ、背景情報として示しました。この数には確定した新規診断だけでなく、検査や経過観察の受診も含まれます。また、食事データと受診データは個人単位で結びつけられておらず、受診数は食事で説明される結果としては扱われていません。
統計的には、男女の摂取量の差を比べる検定、男女で年ごとの変化の傾きが違うかを調べるモデル、さらに多くの食品群の摂取量の関係をまとめて少数の軸で表す主成分分析を用いました。
主な結果
背景となる受診データでは、2017〜2021年に男女とも思春期早発症に関する受診率が上がり、女児の方がはるかに多い状態が続いていました。6〜11歳では、人口10万人あたりの受診率が男児で509から1676へ、女児で5825から9723へ増えていました。
食事については、男児の方が多くの食品群や栄養素で摂取量が多い傾向が見られました。1〜11歳全体の比較では、炭水化物、たんぱく質、動物性たんぱく質、コーラで男児の方が多く、これらは多数の比較を行ったことへの補正後も統計的に意味のある差として残りました。6〜11歳に限ると、肉、コーラ、炭水化物、たんぱく質、動物性たんぱく質、脂質で男児の方が多い差が見られた一方、豆類では差が見られませんでした。ただし著者らは、摂取量の差そのものは小さく、男女の摂取パターンには大きな重なりがあったと述べています。
年ごとの変化を見ると、6〜11歳では4つの栄養素の男女差が数値上は縮まり、肉とコーラでは差が広がっていました。しかし、男女で変化の傾きが違うかを正式に検定した結果はいずれも統計的に意味のある差に達しておらず、記述的な観察にとどまるとされています。
主成分分析では、最初の軸が全体的な摂取量の多さを反映し、男児と女児をはっきり分けていました。この軸は、どの年を除いて分析し直しても安定していました。著者らは、この軸が食事の内容の違いだけでなく、食べる量や体格の違いを反映している可能性も指摘しています。2番目の軸は、乳製品・海藻・飲料に寄った食べ方と、肉・卵・コーラが中心の食べ方を区別していましたが、こちらは年の除外に対して不安定で、慎重な解釈が必要とされています。
この研究が伝えること
この研究は、思春期早発症の受診が増える中で、韓国の子どもの食事に男女で異なるパターンがあることを全国データから描き出しました。一方で、男児の方が多く食べているにもかかわらず受診は女児に多いことからも、著者らは摂取量の多さが受診の男女差を説明するとは示されていないと強調しています。研究チームは今回の結果を、今後の個人単位の研究で検討すべき候補を示すものと位置づけ、食事と思春期の早まりの関係を単純化して語ることには注意が必要だと結論づけています。
原著論文の著者・所属:Junho Yang(Institute for Agricultural Product Quality & Safety Assessment, Kyungpook National University, Daegu 41566, Republic of Korea)、Jinyoung Lee(Department of Food Sciences and Nutrition, Pukyong National University, Busan 48513, Republic of Korea)、Hyunji Og(Department of Food Sciences and Nutrition, Pukyong National University, Busan 48513, Republic of Korea)、Minsoo Jeong(Department of Applied Biosciences, Kyungpook National University, Daegu 41566, Republic of Korea; NGS Center, Kyungpook National University, Daegu 41566, Republic of Korea)、Seungjun Lee(Department of Applied Biosciences, Kyungpook National University, Daegu 41566, Republic of Korea)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Junho Yang, Jinyoung Lee, Hyunji Og, et al. Five-Year Trends in Dietary Intake by Gender Among Korean Preschoolers (2017–2021): Nationwide Survey-Based Surveillance Amid Rising Demand for Medical Care for Precocious Puberty. Nutrients 2026-10-20. DOI: 10.3390/nu18203445. 原著ライセンス:CC BY.