著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。

掲載誌:Food Science & Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

赤ビーツ(テーブルビート)は、鮮やかな赤紫色の色素「ベタレイン」やポリフェノールなどの成分を含む野菜です。一方、生のビーツは水分が多く傷みやすいため、乾燥させて保存性を高める方法がよく使われます。ただし乾燥中の熱によって、熱に弱い色素や成分が失われやすいことが課題とされています。

真空乾燥は、酸素の少ない環境で比較的低い温度のまま乾燥できる方法ですが、時間がかかるという弱点があります。研究チームは、乾燥の前にマイクロ波、超音波、赤外線、冷凍という4種類の下処理を行うと、乾燥の速さやスナックとしての品質がどう変わるのかを調べました。著者らによれば、こうした下処理と真空乾燥を組み合わせ、乾燥の進み方から成分、色、食感、内部構造までをまとめて評価した研究はまだ限られていました。

どのように調べたか

トルコで購入した赤ビーツの皮をむき、厚さ3ミリの輪切りにしました。下処理なしのものを比較対象とし、ほかに、マイナス18度で24時間以上冷凍したもの、赤外線で50度・30分加熱したもの、家庭用電子レンジで120ワット・20分処理したもの、水に浸して超音波を10分当てたものを用意しました。その後、すべてを50度の真空乾燥機で重さが変わらなくなるまで乾燥させました。

乾燥後のスナックについて、乾燥にかかった時間と水分の抜けやすさ、ベタレインやポリフェノールの量、抗酸化性の指標、色や褐変(茶色くなる変化)の程度、水に戻したときの吸水量、水分活性(微生物の増えやすさなどに関わる指標)、硬さ、電子顕微鏡で見た内部構造などを比べました。

主な結果

乾燥時間は、下処理なしの900分に対し、マイクロ波処理で290分、赤外線処理で420分、冷凍処理で510分、超音波処理で750分となり、下処理なしと比べて約17〜68%短くなったと報告されています。最も短かったのはマイクロ波処理で、水分が内部から移動する速さを示す値も最大でした。著者らは、マイクロ波が組織の内側から熱を生むことが理由と考えています。なお、冷凍処理は冷凍にかける時間を含めると全体の処理時間が長くなります。

成分では、ベタレインの量が最も多かったのは超音波処理、次いでマイクロ波処理で、冷凍処理が最も少なくなりました。ポリフェノールの量はマイクロ波処理が最も多くなりました。一方、抗酸化性の指標は下処理なしが最も高く、冷凍処理が最も低いという結果でした。著者らは、下処理なしでは長い乾燥中に褐変反応が進み、その過程でできた物質が抗酸化性の値を押し上げた可能性を挙げています。

見た目では、超音波処理のスナックが最も赤みが強く鮮やかで、褐変も少なめでした。冷凍処理のものは黄色寄りでくすんだ色になり、生のビーツとの色の差が最も大きくなりました。マイクロ波処理は生の色との差が最も小さくなりました。

水に戻したときの吸水量は、どの下処理でも下処理なしより高く、超音波処理が最も高くなりました。水分活性はすべての試料で、劣化反応や微生物の働きが急に進みやすくなるとされる0.4を下回っていました。硬さは下処理によって低下し、下処理なしが最も硬く、赤外線処理が最も柔らかくなりました。電子顕微鏡では、下処理なしの試料は組織がつぶれて縮んでいた一方、下処理をした試料には多くの穴があいた構造が見られ、冷凍処理では細胞構造が大きく傷ついていました。

この研究が示すこと

この研究は、真空乾燥の前にどんな下処理をするかで、赤ビーツのスナックの乾燥時間だけでなく、色素の残り方、色、食感、内部構造が大きく変わることを示しました。乾燥を速めるにはマイクロ波処理が、赤い色素と鮮やかな色を保つには超音波処理が有利だった一方、冷凍処理は色素や色の面で不利な結果でした。目的とする品質に応じて下処理を選ぶことの重要性が、具体的なデータで示された研究といえます。

原著論文の著者・所属:Nuray İnan‐Çınkır(Department of Food Technology, Faculty of Kadirli Applied Science Osmaniye Korkut Ata University Osmaniye Türkiye)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nuray İnan‐Çınkır. Effects of Different Pretreatments With Vacuum Drying on Drying Kinetics, Bioactive Properties and Physicochemical Characterization of Red Beetroot Snacks. Food Science & Nutrition 2026-08-01. DOI: 10.1002/fsn3.72234. 原著ライセンス:CC BY.