著者の所属・活動拠点の国は、トルコ、アゼルバイジャン、ポーランドです。

掲載誌:Molecules

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

オリーブは地中海地域を代表する作物で、果実やオリーブオイルには一価不飽和脂肪酸や、ポリフェノールと総称されるフェノール化合物が含まれることが知られています。トルコはオリーブ栽培の歴史的な中心地の一つで、地域ごとの気候に適応した多くの品種や在来系統が受け継がれてきました。

研究チームが注目したのは、トルコ北東部アルトヴィン県ユスフェリ地区で栽培されてきた在来オリーブ「ブトコ」です。この地域は国内のオリーブ栽培地の北東端にあたり、ブトコは地元の生産者によって近縁の在来型とともに少なくとも数十年にわたり維持されてきました。過去にも果実の形や脂肪酸組成などの報告はありましたが、個々のフェノール化合物の詳しい分析や鉄還元力の測定はなく、果実の形態、フェノール類、抗酸化能、脂肪酸を同じ試料と分析計画でまとめて調べたデータもありませんでした。そこで著者らは、これらを一つの研究で記述し、ブトコの基礎的な成分データを示すことを目的としました。

何をどう調べたか

試料は2025年10月にユスフェリ地区デミルケント村の果樹園で収穫されました。同じ園内の健全な成木5〜8本ほどから手摘みした果実を混ぜ合わせて一つの代表試料とし、収穫から24時間以内に分析を始めています。測定値の多くは、この混合試料から作った3つの抽出液の結果です。論文は、これらが木ごとに独立した反復ではなく、1回の収穫・1か所の試料に基づく予備的なデータであると明記しています。

果実30個について、重さ、長さ、直径のほか、果肉と種の重さや大きさを測りました。さらに、果実のペーストからヘキサンという溶媒で油分を抽出し、その脂肪酸の組成をガスクロマトグラフィーという分離分析法で調べました。フェノール類はメタノールと水の混合液で抽出し、フェノール類とフラボノイド類の総量を測定したうえで、液体クロマトグラフィーを用いて26種類の標準物質と照合し、個々の化合物を探しました。

抗酸化能は、試験管内での2種類の化学的な試験で評価しました。一つは、DPPHと呼ばれる安定なラジカル(反応性の高い分子)を抽出液がどれだけ消去できるかを調べる方法で、ラジカルの半分を消去するのに必要な抽出液の濃度(SC50)で表します。この値は小さいほど作用が強いことを意味します。もう一つは、鉄イオンを還元する力を測るFRAP法です。

主な結果

ブトコの果実は平均2.61グラム、長さ20.41ミリ、直径14.98ミリでした。果肉が重さの約75%、種が約25%を占め、果肉と種の重量比は約3.08でした。著者らは、文献上のオリーブとしては小さめから中程度の果実で、細長い形であると位置づけています。また、同じ地区の在来型「オトゥル」の過去の報告と比べて明らかに小さく、ブトコが地元の在来型の中で最も小さな果実をつけると伝えられてきたこととも合っていると述べています。新鮮な果実重量あたりの油分の収率は11.50%でした。

フェノール類の総量は新鮮重100グラムあたり没食子酸換算で561.33ミリグラム、フラボノイド類の総量はケルセチン換算で51.36ミリグラムでした。同じブトコについての以前の報告(100グラムあたり152.09ミリグラム)より高い値で、著者らはこの差について、気候条件、収穫時期、熟度の違いに加え、抽出方法などの分析条件の違いが影響している可能性を挙げています。抗酸化能の試験では、DPPHのSC50が抽出液の濃度で1ミリリットルあたり1.15ミリグラム、FRAP値が果実1グラムあたり46.20マイクロモル(硫酸鉄換算)でした。

個別のフェノール化合物としては、カテキン、エピカテキン、ルテオリン、バニリン酸などが定量され、このうちカテキンが最も多く含まれていました。分析結果の中では一つの大きなピークが目立ちましたが、対応する標準物質が分析に含まれていなかったため確定できず、オリーブで代表的な成分であるオレウロペインではないかと推定するにとどめています。

脂肪酸では、一価不飽和脂肪酸が全体の70.86%を占め、その大部分がオレイン酸(69.37%)でした。次いでリノール酸が12.80%、パルミチン酸が11.49%で、飽和脂肪酸は合計14.82%でした。このほか、スクアレンと推定される成分が1.02%検出されましたが、論文はこの同定が暫定的で、標準物質などによる確認が必要だとしています。著者らは、一価不飽和脂肪酸が中心となるこの組成が、一般的なオリーブの脂質の特徴とおおむね一致すると述べています。

研究が示すこと

この研究は、地域で受け継がれてきた在来オリーブ「ブトコ」について、果実の形態からフェノール類、試験管内での抗酸化能、脂肪酸までを一つの試料群でまとめて示しました。著者らは、オレイン酸を中心とする脂肪酸組成とフェノール類の構成を好ましい特徴とみなし、ブトコを地域の貴重な遺伝資源と位置づけています。一方で、データは1回の収穫・1か所の果樹園に基づく予備的なものであり、在来系統の特徴を比較・評価するための出発点となる基礎データとして示されています。

原著論文の著者・所属:Ali Murat Kesemen(Department of Hotel, Restaurant and Food Services, Artvin Vocational School, Artvin Çoruh University, 08000 Artvin, Türkiye)、Fatma Yaylacı Karahalil(Department of Chemistry and Chemical Process Technologies, Maçka Vocational School, Karadeniz Technical University, 61080 Trabzon, Türkiye)、Anıl Akay(Travel, Tourism and Entertainment Services Department, Artvin Vocational School, Artvin Çoruh University, 08000 Artvin, Türkiye)、Sevgi Kolaylı(Department of Biochemistry, Faculty of Medicine, Nakhchivan State University, Nakhchivan 7012, Azerbaijan; Department of Chemistry, Faculty of Science, Karadeniz Technical University, 61080 Trabzon, Türkiye)、Anna Kurek-Górecka(Department of Microbiology and Immunology, Faculty of Medical Sciences in Zabrze, Medical University of Silesia in Katowice, Jordana 19, 41-808 Zabrze, Poland)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ali Murat Kesemen, Fatma Yaylacı Karahalil, Anıl Akay, et al. Preliminary Phytochemical, Fatty Acid, and In Vitro Antioxidant Characterization of the ‘Butko’ Olive (Olea europaea L.) Genotype from the Eastern Black Sea Region of Türkiye. Molecules 2026-09-26. DOI: 10.3390/molecules31193426. 原著ライセンス:CC BY.