著者の所属・活動拠点の国は、ブルガリアです。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の背景と目的
紅麹は、米をモナスカス属のカビで発酵させた伝統的な食品素材です。名前に「酵母」とつきますが、発酵に使われる菌は分類上カビです。発酵の過程で「モナコリン」と呼ばれる成分群ができ、その代表であるモナコリンKは、コレステロールを下げる作用があるとされる紅麹の主要な有効成分です。著者らによると、モナコリンKには2つの形があり、そのうち「ラクトン型」は、処方薬として使われるスタチン系薬剤のロバスタチンと構造が同じです。
欧州連合(EU)では、紅麹由来のモナコリンが含まれる食品サプリメントについて、1日分の摂取量でモナコリン類を合計3mg未満とする規制があります。一方で、製品ごとにモナコリン量が大きく異なることや、表示と実際の量が合わないことが、これまでの市場調査で繰り返し指摘されてきました。さらに、表示されていない医薬品成分が混入するおそれもあります。
研究チームは、ブルガリア市場で販売されている紅麹サプリメントを対象に、ラクトン型モナコリンKの量を測定し、比較できる場合は表示と照らし合わせること、そして表示されていない一部のスタチン系医薬品が含まれていないかを確認することを目的としました。
何をどのように調べたか
研究チームは、ブルガリアの薬局やオンライン販売店で購入した、紅麹を含むと表示された14製品を分析しました。成分を分離して量を測る分析法(液体クロマトグラフィー)を開発し、国際的な指針に沿って、測定の正確さやばらつきの小ささなどを確認したうえで、ラクトン型モナコリンKと、紅麹製品の真正性を確かめる手がかりの候補として評価したモナスコルビンという成分を測定しました。
あわせて、質量分析と組み合わせた2種類の手法で、スタチン系医薬品であるシンバスタチンとロスバスタチンが含まれていないかを、対象を絞って調べました。シンバスタチンはロバスタチンに近い構造を持つ半合成のスタチン、ロスバスタチンは広く処方されている合成スタチンであることから、確認の対象に選ばれました。
主な結果
メーカーが推奨する1日の最大摂取量で計算すると、測定されたラクトン型モナコリンKの量は製品によって1日あたり0.06mgから14.11mgまで大きな幅がありました。14製品のうち3製品は、1日あたり3mg以上に相当しました。また、分析で求めた量と製品の表示情報との間には違いが見られました。
一方、シンバスタチンとロスバスタチンは、今回の分析条件ではどの製品からも検出されませんでした。モナスコルビンも、いずれの製品からも検出されませんでした。
ただし著者らは、これらの結果の読み方に注意を促しています。EUの3mgという基準はモナコリン類の合計に対するものですが、今回測ったのはラクトン型モナコリンKだけです。そのため測定値はモナコリン総量の下限にあたり、この値だけで規制に適合しているかどうかは判断できないとしています。また、発酵でできたモナコリンKと外から加えられたロバスタチンは化学的に同じであり、今回の手法では区別できません。シンバスタチンとロスバスタチンが検出されなかったことは、調べた2成分についての結果にとどまり、製品が本物であることの証明にはならないと述べています。モナスコルビンについても、検出されなかったことは真正性の判断材料にはならず、単独では製品の真正性を判断する目印として十分ではないとしています。
研究から伝わること
この研究は、同じ紅麹サプリメントでも、表示どおりに飲んだ場合に摂取するラクトン型モナコリンKの量が製品によって大きく異なりうることを、ブルガリア市場の製品で具体的に示しました。著者らは、臨床的な効果や安全性は今回評価していないとしたうえで、複数の形のモナコリンを測れる分析法と、正確で分かりやすい表示が、紅麹サプリメントの品質管理に重要であると結論づけています。
原著論文の著者・所属:Velislava Todorova(Department of Pharmacognosy and Pharmaceutical Chemistry, Faculty of Pharmacy, Medical University of Plovdiv, 4002 Plovdiv, Bulgaria; Research Institute, Medical University of Plovdiv, 4002 Plovdiv, Bulgaria)、Zoya Dzhakova(Department of Pharmacognosy and Pharmaceutical Chemistry, Faculty of Pharmacy, Medical University of Plovdiv, 4002 Plovdiv, Bulgaria)、Kalin Ivanov(Department of Pharmacognosy and Pharmaceutical Chemistry, Faculty of Pharmacy, Medical University of Plovdiv, 4002 Plovdiv, Bulgaria; Research Institute, Medical University of Plovdiv, 4002 Plovdiv, Bulgaria)、Daniela Grekova-Kafalova(Department of Organisation and Economics of Pharmacy, Faculty of Pharmacy, Medical University of Plovdiv, 4002 Plovdiv, Bulgaria)、Katerina Slavcheva(Department of Organisation and Economics of Pharmacy, Faculty of Pharmacy, Medical University of Plovdiv, 4002 Plovdiv, Bulgaria)、Stanislava Ivanova(Department of Pharmacognosy and Pharmaceutical Chemistry, Faculty of Pharmacy, Medical University of Plovdiv, 4002 Plovdiv, Bulgaria; Research Institute, Medical University of Plovdiv, 4002 Plovdiv, Bulgaria)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Velislava Todorova, Zoya Dzhakova, Kalin Ivanov, et al. Quality and Authenticity Evaluation of Red Yeast Rice Food Supplements from the Bulgarian Market. Foods 2026-10-09. DOI: 10.3390/foods15203583. 原著ライセンス:CC BY.