著者の所属・活動拠点の国は、台湾です。

掲載誌:Food Quality and Preference

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

味と形の結びつきは、どんな条件でも同じなのか

人は、甘さを丸い形に、酸っぱさをとがった形に結びつけやすいことが、これまでの研究で知られてきました。左右対称な形は甘味と、非対称な形は酸味や苦味と結びつきやすいという報告もあります。このように、異なる感覚の間に人々が共通して感じる対応関係は「クロスモーダル対応」と呼ばれます。

一方で、これまでの多くの研究は、参加者に「この味にはどの形が合うか」をはっきり答えてもらう方法に頼ってきました。著者らは、こうした結びつきが、どの味どうしを比べるかという文脈や、調べ方の違いによって変わる可能性に注目しました。この研究の目的は、味と形の対応が、比較する味の組み合わせ、対応づけの向き(味から形を選ぶか、形から味を選ぶか)、そして答えを直接尋ねるか間接的に測るかによって変わるのか、それとも安定しているのかを確かめることです。

三つの味と二種類の形の特徴を、複数の方法で調べる

研究チームは、甘味・酸味・苦味の三つの味と、形の二つの特徴である「丸い/角ばった」と「左右対称/非対称」の関係を調べました。味は実際の食品ではなく、中国語で味を表す文字(甜・酸・苦)で示しました。形は、輪郭を規則的に波打たせた閉じた図形で、丸い形と角ばった形、対称な形と非対称な形の組が用意されました。

実験は四つあります。実験1では甘味と酸味、実験2では甘味と苦味、実験3では酸味と苦味という二つの味の組み合わせを比べ、実験4では三つの味をまとめて扱いました。参加者は台湾の国立成功大学の学部生・大学院生で、四つの実験を合わせて579人です。

直接的な方法としては、オンラインで、味に合う形を選ぶ課題と、形に合う味を選ぶ課題の両方を同じ参加者に行い、実験4では選択の代わりに評定(どの程度合うかの点数付け)を行いました。間接的な方法としては、潜在連合テスト(IAT)を用いました。これは、画面に出る形や味の文字に左右のキーで素早く反応してもらい、「甘い」と「丸い」を同じキーに割り当てたときと、逆の組み合わせにしたときの反応時間の差から、本人が意識して答えなくても表れる結びつきの強さを測る方法です。

甘味は丸く対称、酸味と苦味は角ばって非対称

直接尋ねる課題では、全体として、甘味は丸い形や対称な形と、酸味と苦味は角ばった形や非対称な形と結びつけられました。たとえば実験1では、甘味に丸い形を選んだ人が約78%、対称な形を選んだ人が約73%でした。

ただし、酸味と苦味の関係は文脈によって変わりました。酸味と苦味だけを比べた実験3では、どちらの味も角ばった形に結びつけられ、両者の違いははっきりしませんでした。一方、甘味も一緒に評価した実験4では、酸味のほうが苦味より角ばった形として評定されました。著者らはこの結果から、甘味が酸味と苦味を形に対応づける際の「基準」の役割を果たしていると考えています。

対応づけの向きによる違いも見られました。著者らによると、味から形を選ぶ課題のほうが、形から味を選ぶ課題よりも実験間で一貫した結果になりました。たとえば、角ばった形や対称な形から味を選ぶ場合には、はっきりした結びつきが出ないことがありました。なお、課題ごとに測定の尺度が異なるため、著者らはこの比較を統計的な検定ではなく記述的なものとしています。

間接的な方法であるIATでは、甘味と酸味の組み合わせでのみ、丸さ・対称性のどちらについても安定した結びつきが確認されました。甘味と苦味、酸味と苦味の組み合わせでは、効果がなかったり、効果が小さく確かとは言えなかったりしました。甘味と苦味の組み合わせは、直接尋ねる方法では結びつきが見られたのに間接的な方法では見られなかった点で、特に違いが目立ちました。

味と形の結びつきは、比べ方と測り方に左右される

この研究は、味と形の対応関係が常に一定なのではなく、どの味と比べるか、どの向きで対応づけるか、どのような方法で測るかによって表れ方が変わることを示しています。特に、甘味と酸味の対比は直接・間接のどちらの方法でも安定していた一方、苦味が関わる対応は条件によって揺らぎやすいことが報告されました。著者らは、これらの知見が味と形の対応が生まれる仕組みの理解につながるとし、また、丸さと対称性という形の特徴を組み合わせて使うことで、ブランドやパッケージのデザインで期待される味をより的確に伝えられる可能性も述べています。

なお、著者らは、実際の味ではなく文字を使ったこと、参加者が台湾の若い成人に限られていたことなどを研究の限界として挙げています。結果がどこまで実際の味や他の文化圏の人々に当てはまるかは、まだ分かっていません。

原著論文の著者・所属:Yi-Chuan Chen(School of Medicine, MacKay Medical University, New Taipei City, Taiwan)、Pi-Chun Huang(Department of Psychology, National Cheng Kung University, Tainan, Taiwan)、Yi-Chun Hung(Department of Psychology, National Cheng Kung University, Tainan, Taiwan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yi-Chuan Chen, Pi-Chun Huang, Yi-Chun Hung. Shaping tastes: Context- and task-dependent correspondences between basic tastes and visual forms. Food Quality and Preference 2026-10-08. DOI: 10.1016/j.foodqual.2026.106143. 原著ライセンス:CC BY.