紅麹(Monascus purpureus という酵母でコメ(Oryza sativa)を発酵させたもの)を含む食品サプリメントは、コレステロール対策を意識する人たちの間で広く使われています。含まれる代表的な成分であるモナコリンKは、乳酸型の状態では医薬品ロバスタチンと化学的に同一とされ、EUでは「制限物質」「共同体による精査対象物質」として扱われる、安全性・品質面で注意が必要な成分です。ただし食品サプリメントは医薬品よりも規制上の品質基準が緩く、錠剤やカプセルとしての「作り」の質にばらつきがあると指摘されてきました。ブルガリアの薬学部に所属する研究者らは、実際に市販されている紅麹サプリメント15製品を購入し、医薬品の公的な品質基準(欧州薬局方第12版)に沿って、崩壊性や壊れにくさなどを実測する研究を行いました。
どんな製品を、どう調べたのか
対象はブルガリア国内で薬局やオンライン薬局、サプリメント販売店などから購入した紅麹含有サプリメント15製品で、内訳はコーティング錠2種、素錠(コーティングなしの錠剤)4種、硬カプセル8種、軟カプセル1種でした。なお、ブルガリアの食品安全機関の登録データベースを確認したところ、紅麹含有サプリメントとして登録されていた製品は累計142件(2007年から2026年にかけて登録、廃番も含む集計)あり、カプセル剤89件、錠剤29件、その他の剤形6件、剤形不明18件という内訳だったことも報告されています。品質評価では、20個ずつのサンプルを使った質量のばらつき(含量均一性に相当する重量偏差)の測定、10錠を使った破壊強度(硬さ)の測定、素錠の摩損度(転がして削れる割合)の測定、そして6個ずつを使った崩壊時間(水中でどれだけの時間でバラバラになるか)の測定を行っています。崩壊試験はすべて同じ日(2026年4月7日)に、同じ担当者・同じ条件で実施されました。
製品によって「崩れやすさ」「壊れにくさ」に差があった
素錠4種の摩損度はいずれも欧州薬局方の基準(1.0%以下)を満たし、最も低い製品では0.12%でした。錠剤の破壊強度(硬さ)は製品によって58.6ニュートンから280ニュートンまで幅があり、最も硬かった製品は摩損度も最も低く、同時に崩壊にかかる時間も最も長い(40分)という結果でした。崩壊時間は全体では5分から40分までばらつき、傾向としてカプセル剤のほうが錠剤より速く崩壊していました。硬カプセル8種のうち2種は、規定の質量ばらつきの基準を満たしませんでした。一方、素錠4種はすべてが欧州薬局方の崩壊時間の上限(コーティングのない錠剤は15分以内)を超えており、基準を満たした製品はありませんでした。研究チームは、こうした差は製剤に使われる添加物(賦形剤)の種類や配合量の違いを反映している可能性があるとし、微結晶セルロースやポリビニルピロリドン、ヒプロメロースといった成分は錠剤の硬さを高める方向に、デンプンやクロスカルメロースは崩壊を促す方向に働きうると考察しています。また、脂溶性の成分や植物エキスの配合も剤形の性質に影響しうるとされています。錠剤やカプセルの直径についても触れられており、分析した製品の直径は11ミリから24ミリまで幅があり、多くはアメリカ食品医薬品局が目安とする「最大径22ミリ以下」を満たしていたものの、2製品はこれを上回っていたことも報告されています。
この研究を読むうえでの注意点
この研究はブルガリア国内で入手可能な15製品という限られたサンプルを対象にした実測調査であり、紅麹サプリメント全般に一般化できる結論ではありません。また著者ら自身が述べているように、各製品に実際どの添加物がどのくらいの量含まれているかはメーカー側から開示されておらず、パッケージに表示された成分名から推測した仮説の域を出ない点、圧縮の強さや密度・多孔性といった製造条件を直接測定したわけではない点も限界として挙げられています。今回の試験はあくまで錠剤・カプセルとしての物理的な品質(崩れやすさや壊れにくさ)を調べたものであり、モナコリンKなどの含有量そのものやコレステロールへの効果を検証したものではない点にも注意が必要です。
まとめ
今回の研究では、市販の紅麹含有サプリメント15製品を欧州薬局方の基準に沿って比較したところ、質量のばらつきや崩壊時間などの品質特性に製品ごとの差が見られ、一部の製品では基準からの逸脱も確認されました。研究チームは、これらの結果は市販品の間に技術的な品質のばらつきが存在することを示しており、今後も系統的な品質評価が必要だとしています。一つの調査研究の結果であり、特定の製品や紅麹サプリメント全体の安全性・有効性を判断するものではない点を踏まえて読む必要があります。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Katerina Slavcheva, Yana Gvozdeva, Radiana Staynova, et al. Pharmaceutical technological evaluation of red yeast rice food supplements: Quality characteristics of tablets and capsules. ファルマシア (2026). DOI: 10.3897/pharmacia.73.e208174. 原著ライセンス: cc-by.