著者の所属・活動拠点の国は、カザフスタンです。

掲載誌:Biology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

イチゴは味や栄養面で価値の高い作物ですが、カビの仲間(菌類)などによる病気が収量や商品価値を大きく左右します。異なる菌が似た症状を起こすことが多いため、見た目だけで原因菌を判断すると、誤った特定や不適切な防除につながるおそれがあると著者らは指摘しています。

カザフスタンでは、イチゴの病原菌に関する情報がまだ限られていました。同国南東部の調査で「アルテルナリア属」と呼ばれる菌のグループが見つかっていましたが、種や系統のレベルまでは特定されず、植物に病気を起こす力(病原性)も調べられていませんでした。そこで研究チームは、アルマティ州の商業イチゴ農園で症状の出た株からアルテルナリア属菌を分離し、その種類や見つかった品種・器官、病原性を明らかにすることを目指しました。

調べた方法

研究チームは2025年7〜8月、アルマティ州の4つの商業農園を訪れ、病気の症状が見られるイチゴの株を選んで採取しました。対象は9品種、合計70株です。葉、茎、根、そして実が付いていれば実からも組織を取り、菌を培養しました。

得られた菌は、まず培養したときの見た目や顕微鏡で見た胞子の形でアルテルナリア属と仮に判定しました。ただし近縁の種どうしは形がよく似ているため、さらにDNAの3つの領域(ITS、GAPDH、TEF1)の塩基配列を読み取り、既知の基準株と比べて系統関係を調べました。

病原性の確認では、代表的な2つの菌株をそれぞれ健康なイチゴ3株の葉に接種し、菌を接種しない対照の株と比べました。症状は目で見て評価し、症状の出た組織から同じ菌が再び分離できるかも確かめました。

主な結果

採取した70株のうち、アルテルナリア属菌が分離されたのは14株(20.0%)でした。研究チームは、症状のある株を狙って採取しており品種や農園ごとの株数もそろっていないため、この割合を病気の発生率や品種ごとの病気へのかかりやすさとして読むべきではないと注意を促しています。

3つのDNA領域すべてで一貫したデータが得られた19菌株のうち、14株(73.7%)がアルテルナリア・アルテルナータ(A. alternata)系のグループ、5株(26.3%)がアルテルナリア・テヌイッシマ(A. tenuissima)系のグループに仮に分類されました。これらの菌株は、ビバラ、ムラーノ、アルビオン、クレリー、アプリカの5品種から得られ、由来は葉(47.4%)と実(36.8%)が多く、茎や根からも見つかりました。

一方、系統解析では、テヌイッシマの名を持つ基準配列どうしが一つのまとまりにならないなど、2つのグループを明確に別の種として区別することはできませんでした。著者らは、テヌイッシマとされた菌株がアルテルナータの中の遺伝的に分化した系統である可能性もあるとし、種名の扱いには慎重さが必要だと述べています。

接種試験では、2菌株とも接種3日後に葉に小さな黒っぽい病斑が現れ、10日後には葉の巻き込み、黒い壊死斑、茎の黒い病斑がよりはっきり見られました。対照の株には症状が出ず、症状の出た組織からは元の菌と同じ特徴を持つ菌が再び分離されました。ただし試験は定性的なもので、2菌株の病原性の強さは比較していません。

研究が示すこと

著者らによると、この研究はアルマティ州の商業イチゴ農園に関するアルテルナリア属菌について、DNAで特徴づけた初めてのデータです。この地域のイチゴに関わるアルテルナリア属菌が一つの種に限られず、近縁の複数の仲間が症状に関わっている可能性が示されました。同時に、これらの近縁種を見分けることの難しさも浮かび上がり、正確な識別には複数の遺伝子領域やゲノム全体を使う手法が役立つことが改めて示されています。

原著論文の著者・所属:Darya Bogatko(Laboratory of Plant Bioengineering, M.A. Aitkhozhin Institute of Molecular Biology and Biochemistry, Almaty 050012, Kazakhstan)、Rabiga Uakhit(Laboratory of Biodiversity and Genetic Resources, National Center for Biotechnology, Astana 010000, Kazakhstan; Laboratory of Plant Bioengineering, M.A. Aitkhozhin Institute of Molecular Biology and Biochemistry, Almaty 050012, Kazakhstan)、Ainura Smagulova(Laboratory of Biodiversity and Genetic Resources, National Center for Biotechnology, Astana 010000, Kazakhstan; Laboratory of Plant Bioengineering, M.A. Aitkhozhin Institute of Molecular Biology and Biochemistry, Almaty 050012, Kazakhstan)、Yuliya Yefremova(Educational Institution, Kazakh-German University in Almaty, Almaty 050010, Kazakhstan; Laboratory of Plant Bioengineering, M.A. Aitkhozhin Institute of Molecular Biology and Biochemistry, Almaty 050012, Kazakhstan)、Vladimir Kiyan(Laboratory of Biodiversity and Genetic Resources, National Center for Biotechnology, Astana 010000, Kazakhstan; Laboratory of Plant Bioengineering, M.A. Aitkhozhin Institute of Molecular Biology and Biochemistry, Almaty 050012, Kazakhstan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Darya Bogatko, Rabiga Uakhit, Ainura Smagulova, et al. Alternaria Species Associated with Strawberry Cultivars in the Almaty Region of Kazakhstan: Diversity, Multilocus Characterization and Pathogenicity. Biology 2026-10-09. DOI: 10.3390/biology15201803. 原著ライセンス:CC BY.