この研究は、エジプト、サウジアラビア、ウズベキスタンの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Scientific Reports

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、お酒をほとんど飲まない人の肝臓に脂肪がたまる病気で、世界で最も多い慢性の肝臓病とされています。肥満や糖尿病、脂質異常症などと深く関わり、体内の炎症や、活性酸素による細胞へのダメージ(酸化ストレス)が病気の進行に関わると考えられています。

研究チームが注目したのは、血液中の好中球の数をリンパ球の数で割った「好中球・リンパ球比(NLR)」です。好中球とリンパ球はどちらも白血球の一種で、NLRは一般的な血液検査から簡単に計算でき、全身の炎症の目安として使われています。また、食事に含まれる抗酸化栄養素の摂取状況を総合的に評価するために「食事抗酸化品質スコア(DAQS)」も用いました。DAQSは、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、セレン、亜鉛の5つの栄養素について、それぞれ推奨量の3分の2以上をとっていれば1点を与える指標で、0〜5点の範囲をとり、点数が高いほど抗酸化栄養素の摂取が充実していることを示します。

著者らによれば、NAFLDの人でNLRと代謝の指標との関係を調べた研究はこれまでなく、DAQSとNAFLDの関係も十分に検討されていませんでした。そこで本研究は、NAFLDの成人を対象に、NLRと血糖・脂質などの代謝の指標、そしてDAQSとの関係を調べることを目的としました。

何をどのように調べたか

研究チームは、腹部超音波検査でNAFLDと診断された18〜65歳の成人257人を対象に、ある一時点のデータを分析する横断研究を行いました。少しでも飲酒する人、ウイルス性肝炎などほかの肝臓病がある人、抗酸化サプリメントや脂質を下げるサプリメントを最近使っていた人は対象から除かれました。

参加者には、空腹時の採血で血糖値、総コレステロール、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)、中性脂肪、HDLコレステロール、肝機能の指標(ALT、AST)などを測定し、血球数からNLRを計算しました。体格や体組成、身体活動量も測定・調査しました。食事については、過去1年間に146種類の食品をどのくらい食べたかを面接で尋ねる質問票を使い、栄養素の摂取量を推定してDAQSを算出しました。

分析では、参加者をNLRの値によって低い群・中間の群・高い群の3つにほぼ同数ずつ分け、各群の特徴を比較しました。年齢、性別、病気の程度、BMI、喫煙、身体活動、摂取エネルギー、高血圧、家族歴などの影響を統計的に調整したうえで比較し、さらにNLRを連続した数値として扱う分析でも結果を確かめています。

主な結果

論文によると、NLRが高い群ほど代謝の状態が好ましくない傾向が見られました。空腹時血糖は、NLRが最も高い群で最も低い群より有意に高く、総コレステロールとLDLコレステロールもNLRが高い群ほど高くなる傾向が認められました。NLRを連続した数値として扱った分析でも、NLRは空腹時血糖、総コレステロール、LDLコレステロールと正の関連を示し、主な分析とおおむね一致する結果でした。一方、中性脂肪、HDLコレステロール、肝機能の指標(ALT、AST)には、NLRの群による有意な違いは見られませんでした。BMI、腹囲、体脂肪率などの体格・体組成にも、群による有意な差はありませんでした。

食事との関係では、ビタミンAとビタミンCを十分にとれている人の割合が群によって異なりました。ビタミンAが十分な人の割合は中間の群で84.5%と最も高く、NLRが最も高い群で63.1%と最も低くなっていました。DAQSの平均は、NLRが最も高い群で4.26点と、中間の群の4.51点より有意に低い値でした。ビタミンE、亜鉛、セレンの摂取状況には群による有意な違いはなく、セレンと亜鉛は大多数の参加者が十分な量をとっていました。

身体活動量別に見ると、関連の現れ方には違いがありました。活動量が少ない人では空腹時血糖が高いことがNLRの高い群に属することと関連し、活動量が多い人では総コレステロールとの関連が見られました。中程度の活動量の人では、調べた項目に有意な関連は認められませんでした。

研究の意味

著者らは、NLRで示される全身の炎症が、NAFLDの人における血糖やコレステロールの好ましくない状態、そして抗酸化栄養素の摂取の少なさと結びついている可能性があると考察しています。NLRは安価で手軽に得られる指標であるため、NAFLDの人の炎症の状態や代謝のリスクを把握する手がかりになりうる点を著者らは強調しています。

ただし、この研究は一時点の状態を調べた横断研究であり、示されたのはあくまで関連です。炎症が代謝の悪化を招くのか、食事が炎症に影響するのかといった因果関係や、その向きはこの研究からは分かりません。また、食事の内容は本人の記憶に基づく自己申告であるため、思い出し違いや過少申告の影響を受けうることも、著者ら自身が限界として挙げています。そのうえで本研究は、身近な血液指標と食事の質を同時に検討し、脂肪肝の人の炎症と生活習慣を一体的にとらえる視点を示したものといえます。

著者:Amr Ali Mohamed Abdelgawwad El‐Sehrawy(Diabetes, Endocrinology and Metabolism, Department of Internal Medicine, Diabetes, Endocrinology and Metabolism, Mansoura University, Mansoura, Egypt)、Ahmed M. Salah(Internal Medicine Department, Nephrology unit, Faculty of Medicine, Zagazig University, Zagazig, Egypt)、Ismail kandil(Geriatric Medicine Unit, Internal Medicine Department, Faculty of Medicine, Mansoura University, Mansoura, 35516, Egypt)、Sherif M Yusuf(Medical Research Institute, Alexandria University, Alexandria, Egypt)、Mohammad Abohassan(Central Labs, King Khalid University, P.O. Box 960, AlQura’a, Abha, Saudi Arabia)、Mansuor Ahmed Alanazi(Family and Community Medicine Department, Diabetes and Chronic Diseases Unit, Faculty of Medicine, University of Tabuk, Tabuk, Saudi Arabia)、Feruza Kurbaniyazova(Department of Obstetrics and Gynaecology, Samarkand state medical university, Samarkand, Uzbekistan)、Taghreed Saud M Almansouri(Department of Medical Laboratory Science, Faculty of Applied Medical Sciences, King Abdulaziz University, Jeddah, Saudi Arabia)、Tina Saeed Basunduwah(Department Medical Student, University Albatterjee College, Jeddah, Saudi Arabia)、Safa Labib(Internal Medicine Department, Faculty of Medicine, Cairo University, Cairo, Egypt)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Amr Ali Mohamed Abdelgawwad El‐Sehrawy, Ahmed M. Salah, Ismail kandil, et al. Neutrophil-to-lymphocyte ratio (NLR) in relation to metabolic profile and dietary antioxidant quality in adults with non-alcoholic fatty liver disease. Scientific Reports 2026-10-01. DOI: 10.1038/s41598-026-72096-8. 原著ライセンス:CC BY.