著者の所属・活動拠点の国は、マレーシアです。

掲載誌:Frontiers in Human Neuroscience

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

たんぱく質の量や食品の違いに着目

研究チームは、高齢者の食事からのたんぱく質摂取が、うつ症状や認知機能の低下などとどのように関連しているかを調べるため、既存の研究を整理しました。摂取量だけでなく、動物性・植物性といった、たんぱく質を含む食品の違いにも着目しています。

研究では、これまでにどのような知見があるかを広く見渡す「スコーピングレビュー」という方法を用いました。3つの文献データベースを2025年4月11日まで検索し、60歳以上の高齢者を対象とする13件の研究を採用しました。扱われていたのは、うつ症状、認知機能の低下や障害、アルツハイマー病などです。

良好な状態との関連はあるが、結果は一様ではない

著者らによると、動物性たんぱく質については、摂取量が多いことと、認知機能の低下や障害が少ないこととの関連を報告した研究が多くありました。対象となった食品には魚介類、肉、卵、乳製品などが含まれます。ただし、関連が認められなかった研究もあり、魚介類の場合も、たんぱく質以外の脂質やビタミンなどが結果に関わっている可能性があるとしています。

植物性たんぱく質については、豆類などを多く含む食事パターンと、良好な認知機能や低いうつ症状の得点との関連が報告されていました。一方、健康的な植物性食品を重視する食事の指標が高いほど、うつ症状の得点も高かった研究もありました。これは食事全体の指標との関連であり、植物性たんぱく質そのものの影響を示すものではありません。

総たんぱく質摂取量についても、結果はそろいませんでした。たんぱく質の不足とうつ症状との関連が高齢男性では見られ、女性では見られなかった研究がある一方、総摂取量とアルツハイマー病の発症、認知機能、うつ症状との間に明確な関連を認めなかった研究もありました。

摂取量だけでは説明できない関係

著者らは、研究によって対象者の特徴、食事の調べ方、評価する症状などが異なることを指摘しています。また、多くは食事と症状を同じ時点で調べる研究であり、たんぱく質の摂取が症状を変えたのかどうかは判断できません。たんぱく質を含む食品にはほかの栄養素も含まれるため、その関連をたんぱく質だけに帰することもできないとしています。

このレビューが示したのは、高齢者のたんぱく質摂取と心の健康・認知機能との関係は、一律に「多いほどよい」とはいえないということです。著者らは、摂取量の多寡や特定の食品が一貫した利益をもたらすと判断するには証拠が不十分であり、今回の結果から精神的な不調に対する具体的な食事の推奨は導けないと結論づけています。

原著論文の著者・所属:Nur Adlyn Nadhirah Mohamad Halil(Department of Nutrition Sciences, Kulliyyah of Allied Health Sciences, International Islamic University Malaysia)、Noor Suzana Osman(Department of Nutrition Sciences, Kulliyyah of Allied Health Sciences, International Islamic University Malaysia)、Roszanadia Rusali(Department of Nutrition Sciences, Kulliyyah of Allied Health Sciences, International Islamic University Malaysia)、Aliza Haslinda Hamirudin(Department of Nutrition Sciences, Kulliyyah of Allied Health Sciences, International Islamic University Malaysia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nur Adlyn Nadhirah Mohamad Halil, Noor Suzana Osman, Roszanadia Rusali, et al. The association between dietary protein intake and mental disorders in older adults: a scoping review. Frontiers in Human Neuroscience 2026-11-04. DOI: 10.3389/fnhum.2026.1949231. 原著ライセンス:CC BY.