著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

高齢化が進むなか、アルツハイマー病などの認知症を早い段階で見つけ、予防につなげることが重要な課題になっています。その手がかりとして注目されているのが「主観的認知機能低下(SCD)」です。SCDとは、検査の成績ではまだ低下が見られないのに、本人が「以前より物覚えや考える力が落ちた」と感じている状態を指します。軽度認知障害の前段階とされ、認知症の早期の警告サインの一つと考えられています。

研究チームは、食生活と心理面という二つの側面に着目しました。これまでの研究では、砂糖入り飲料(SSB)の摂取と認知機能の低下との関連や、気分や感情の状態と認知機能との関連が、それぞれ別々に調べられてきました。しかし、これらを組み合わせて検討した研究は多くありません。また論文によると、中国の農村の高齢者は都市部の高齢者に比べてSCDの有病率がかなり高いとされています。そこで著者らは、中国北西部・寧夏の農村に住む高齢者を対象に、砂糖入り飲料の摂取と感情の状態が、SCDとどのように関連し合っているのかを調べました。

どのように調べたか

研究チームは、寧夏の5つの市からそれぞれ2つの県を選び、各県から1つの村を抽出しました。これら10の村に暮らす60歳以上の住民を対象に、調査員が一人ずつ聞き取りを行いました。有効な回答は485人分で、平均年齢は約70歳でした。

SCDの程度は9項目の質問票で測り、0〜9点のうち点数が高いほど自覚する低下が強いことを示します。砂糖入り飲料については、炭酸飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、茶飲料、ミルクティーなど8種類について過去1か月の摂取状況を尋ねました。この地域の高齢者には頻繁に飲む人が少なかったため、月1回以上飲んだ人を「摂取あり」としています。感情の状態は、過去1か月に感じた前向きな感情(ポジティブ感情)と、不安や落ち込みといった否定的な感情(ネガティブ感情)の強さを質問票で測りました。

分析では、性別、教育歴、持病の種類、自己評価による健康状態などの影響を統計的に調整しました。そのうえで、飲料の摂取と感情の状態の組み合わせがSCDの点数とどう関連するかを調べました。さらに、飲料摂取の有無と感情の高低によって参加者を4つのグループに分け、グループ間でSCDの点数を比較しました。

主な結果

全体として、ポジティブ感情が強い人ほどSCDの点数が低く、ネガティブ感情が強い人ほど点数が高い傾向がありました。また、女性であること、教育歴が短いこと、自分の健康状態を悪いと評価していることが、それぞれSCDの点数の高さと関連していました。

研究チームが特に重視したのは、砂糖入り飲料の摂取とポジティブ感情との間に統計的に意味のある「交互作用」が見られたことです。交互作用とは、一方の要因の関連の強さが、もう一方の要因によって変わることを指します。具体的には、砂糖入り飲料を飲まない人では、ポジティブ感情が強いほどSCDの点数が低いという関連がはっきり見られました。一方、飲料を飲む人では、この関連が弱まっていました。4グループの比較では、飲料を飲まずポジティブ感情が強いグループのSCDの点数が最も低くなりました。これに対し、飲料を飲まずポジティブ感情が弱いグループでは、点数が有意に高くなっていました。

一方、砂糖入り飲料の摂取とネガティブ感情の間には、意味のある交互作用は見られませんでした。飲料を飲むかどうかにかかわらず、ネガティブ感情が弱い人はSCDの点数が低い傾向にありました。点数が最も低かったのは、飲料を飲み、かつネガティブ感情が弱いグループでした。著者らは、飲料の摂取とネガティブ感情は、それぞれ独立してSCDと関連している可能性があると述べています。

この研究が示すこと

この研究は、ある一時点の状態を調べた横断研究です。そのため、示されたのは関連であり、砂糖入り飲料や感情がSCDの原因になるかどうかは分かりません。著者らは限界として、次の点も挙げています。飲料の摂取を「月1回以上か否か」という大まかな区分でしか扱っていないこと。睡眠や運動、喫煙、飲酒などの要因を調整できていないこと。対象が寧夏の農村の高齢者に限られていること。

それでも、これまで研究の少なかった農村の高齢者において、食生活と感情という二つの要因を合わせて検討した点に、この研究の新しさがあります。ポジティブ感情とSCDの関連が、砂糖入り飲料を飲むかどうかで異なって見えたという結果は、栄養と心理の要因が組み合わさって認知面の自覚と関わっている可能性を示す、予備的な疫学的手がかりと位置づけられています。

原著論文の著者・所属:Yahong Guo(General Hospital of Ningxia Medical University)、Jing Shi(General Hospital of Ningxia Medical University)、Xinjin Li(School of Nursing, Ningxia Medical University)、Cailing Yang(School of Nursing, Ningxia Medical University)、Weijuan Kong(General Hospital of Ningxia Medical University)、Meiman Li(General Hospital of Ningxia Medical University)、Yuxin Mao(School of Nursing, Ningxia Medical University)、Min Jia(School of Nursing, Ningxia Medical University)、Ruixue Liu(School of Nursing, Ningxia Medical University)、Yanhua Ning(School of Nursing, Ningxia Medical University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yahong Guo, Jing Shi, Xinjin Li, et al. The interaction between sugar-sweetened beverage consumption and emotional status with subjective cognitive decline among rural older adults: a cross-sectional study. Frontiers in Nutrition 2026-08-12. DOI: 10.3389/fnut.2026.1879896. 原著ライセンス:CC BY.