著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:食事の「幅」と特定の食品を組み合わせて調べる

認知症や、その手前とされる軽度認知障害は、高齢化が進む社会で大きな課題です。研究チームは、変えることのできる生活習慣の中でも、食事に注目しました。

これまでの研究では、さまざまな種類の食品群をまんべんなく食べること(食事の多様性)が、認知機能の良さと関連すると報告されてきました。また、食用のきのこや藻類についても、認知機能の低下と関連する可能性が示されてきました。ただし、この二つが組み合わさったときにどう関わるのか、互いに効果を強め合う「相互作用」があるのかは、十分に分かっていませんでした。そこで著者らは、65歳以上の中国の高齢者を対象に、食事の多様性ときのこ・藻類の摂取が、それぞれ、また組み合わせとして、認知機能障害とどのように関連するかを調べました。

何を調べたか:全国調査のデータを4つのグループで比較

研究チームは、中国の23の省で行われている全国的な高齢者調査「中国高齢者健康長寿縦断調査」の2017〜2018年のデータを用い、条件を満たした65歳以上の1万1636人を分析しました。ある一時点のデータを使って関連を調べる「横断研究」と呼ばれる方法です。

食事の多様性は、野菜、果物、肉、魚、卵、豆類、乳製品、ナッツ、お茶の9つの食品群について、よく食べているものがいくつあるかを0〜9点で数えて評価しました。5点以上を「多様性が高い」、5点未満を「低い」としています。きのこ・藻類は、ほぼ毎日または週1回以上食べていれば「摂取が多い」としました。この二つを掛け合わせて、参加者を「多様性が低く、きのこ・藻類も少ない」「多様性は低いが、きのこ・藻類は多い」「多様性は高いが、きのこ・藻類は少ない」「どちらも高い・多い」の4グループに分けました。

認知機能障害は、認知症の診断を報告した人に加え、それ以外の人については認知機能の簡易検査(MMSE)の点数で判定しました。点数は教育歴の影響を受けるため、学校に通った年数に応じて異なる基準が使われています。分析では、年齢・性別・居住地などの属性、喫煙や運動などの生活習慣、日常生活動作、抑うつ症状、複数の慢性疾患の有無といった要因の影響を統計的に取り除くよう調整しました。

主な結果:多様な食事が土台となる関連

分析対象者のうち約21%が認知機能障害に該当しました。また、食事の多様性が高く、きのこ・藻類もよく食べている人は全体の約18%にとどまりました。

さまざまな要因を調整した後でも、「どちらも低い・少ない」グループと比べて、「どちらも高い・多い」グループでは、認知機能障害のオッズ(起こりやすさを表す指標)が約0.64倍と低くなっていました。「多様性は高いが、きのこ・藻類は少ない」グループでも約0.77倍と、低い関連が見られました。一方、「多様性は低いが、きのこ・藻類は多い」グループでは、統計的に意味のある関連は認められませんでした。

研究チームは、二つの要因が互いの関連を強め合っているかどうかも検証しましたが、統計的に意味のある相互作用は見られませんでした。著者らはこれを、食事の多様性ときのこ・藻類がそれぞれ別々に関わっている結果と解釈しています。分類の仕方や統計手法を変えた追加の分析でも、主な結果はおおむね同様でした。

この研究が示すこと

著者らは、食事の多様性が認知機能障害の少なさと独立して関連していること、そしてきのこや藻類の摂取は、多様な食事という土台があるときにのみ、さらなる関連が見られたと結論づけています。特定の食品だけに注目するのではなく、食事全体の質を考えることの大切さを示す結果といえます。

ただし、これは一時点の調査に基づく研究であり、食事が認知機能に影響したという因果関係を示すものではありません。認知機能が低下した人では食事内容の記憶や回答が不正確になる可能性など、逆向きの関係も否定できないと著者ら自身が述べています。この研究は、食事の多様性ときのこ・藻類の摂取が高齢者の認知の状態とどう結びついているかについて、組み合わせの視点から手がかりを示したものです。

原著論文の著者・所属:Qian Yu(Department of Science and Technology, Affiliated Hospital of Nanjing University of Chinese Medicine (Jiangsu Province Hospital of Chinese Medicine))、Yingtian Wang(School of Nursing, Nanjing University of Chinese Medicine)、Manshu Yu(Office of Clinical Research Institute, Affiliated Hospital of Nanjing University of Chinese Medicine (Jiangsu Province Hospital of Chinese Medicine))、Fangyi Chen(School of Public Health, Nanjing University of Chinese Medicine)、Haining Qi(School of Nursing, Nanjing University of Chinese Medicine)、Meng Jiang(GCP Center, Affiliated Hospital of Nanjing University of Chinese Medicine (Jiangsu Province Hospital of Chinese Medicine))、Xiaoxiao Wang(Office of Clinical Research Institute, Affiliated Hospital of Nanjing University of Chinese Medicine (Jiangsu Province Hospital of Chinese Medicine))、Wei Wang(GCP Center, Affiliated Hospital of Nanjing University of Chinese Medicine (Jiangsu Province Hospital of Chinese Medicine))

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Qian Yu, Yingtian Wang, Manshu Yu, et al. Joint effects of dietary diversity and intake of edible mushrooms and algae on cognitive impairment among Chinese older adults: a population-based cross-sectional study. Frontiers in Nutrition 2026-10-22. DOI: 10.3389/fnut.2026.1960150. 原著ライセンス:CC BY.