著者の所属・活動拠点の国は、フィンランド、アメリカです。
掲載誌:British Journal Of Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
年を重ねても健康と生活機能を保つには、十分なたんぱく質をとることが欠かせません。しかし研究チームによると、在宅で暮らす高齢者の最大7割が、広く推奨されている体重1キログラムあたり1日1.0〜1.2グラムのたんぱく質を摂取できていないとされます。フィンランドの国の推奨では、65歳を超える高齢者のたんぱく質摂取量は体重1キログラムあたり1日1.2〜1.5グラムで、世界的にも高い水準です。特に80歳を超えると、病気や食欲の低下によってたんぱく質が不足しやすくなります。
それにもかかわらず、たんぱく質の摂取不足を見つけるための道具はほとんどありません。著者らが知る限り、既存のものはオランダで研究用に開発された「Protein Screener 55+」だけです。このツールは摂取量が体重1キログラムあたり1日1グラム未満である可能性を評価するもので、より高い推奨量を採用する北欧諸国では支援が必要な人をすべて見つけられません。また、食習慣は国や文化によって異なるため、その国でよく食べられる食品に基づくツールが必要だと研究チームは述べています。
そこで研究チームは、フィンランドの高齢者栄養学会(GERY)が開発した簡易テスト「GERYPROT(GERYたんぱく質摂取スクリーニングテスト)」が、80歳以上の在宅高齢者のたんぱく質摂取不足をどの程度正しく見分けられるかを検証しました。あわせて、不足を見分けるのに最も適した判定の境目(カットオフ値)を求めることも目的としました。
テストの仕組みと調べ方
GERYPROTは2021〜2023年に開発された紙のテストで、フィンランドの高齢者の食事によく登場する19種類のたんぱく源を対象としています。牛乳、ヨーグルト、チーズ、卵、肉、魚、豆類、パン、おかゆなどです。食品ごとに1食分の量が写真で示され、1食分はたんぱく質約7グラムに相当します。その日に食べた食品の食数を記入し、料理に含まれる分も数えます。食数に7グラムを掛け、栄養補助食品やプロテイン飲料などの分を足すと、1日のたんぱく質摂取量の推定値が出ます。
調査には、ヘルシンキで長期にわたって続く高齢者研究「Helsinki Aging Study」の参加者のうち、80〜100歳の在宅高齢者140人が参加しました。64%が女性です。参加者はフィンルランド語を母語とし、自宅で食事記録をつけられるだけの認知機能と生活機能がありました。
参加者は、ふだんどおりの食事をした1日について、食べたもの・飲んだもの・サプリメントをすべて記録する「1日食事記録」をつけました。同じ日の終わりか翌朝にはGERYPROTにも回答しました。その後、研究補助者が電話で聞き取りを行い、両方の内容を確認しました。食事記録から求めたたんぱく質摂取量を基準とし、体重1キログラムあたり1日1.2グラム未満を「摂取不足」と定義しました。そのうえで、GERYPROTの結果が食事記録とどれほど一致するか、不足している人とそうでない人をどれほど正しく区別できるかを統計的に評価しました。
主な結果
2つの方法で求めたたんぱく質摂取量の一致度を示す指標(一致相関係数)は0.87で、研究チームは両者がよく一致していると報告しています。この指標は1に近いほど一致がよいことを表します。一方で、GERYPROTは食事記録と比べて摂取量をやや少なめに見積もる傾向がありました。2つの方法の差は、大部分の場合で体重1キログラムあたり1日0.44グラム以内に収まると見込まれ、臨床で使う際にはこの差を考慮すべきだとしています。
不足の見分けやすさについては、感度が0.85、特異度が0.81でした。感度は「実際に不足している人のうち、テストで不足と判定された人の割合」を、特異度は「不足していない人のうち、テストで不足なしと判定された人の割合」を表します。判別力を総合的に示すAUCは0.90でした。ただし、不足と判定されることが実際の不足をどれだけ強く示すかを表す陽性尤度比(4.40)については、著者ら自身が「中程度」と評価しています。
食事記録で体重1キログラムあたり1日1.2グラム未満の不足を見分けるには、GERYPROTの推定値が体重1キログラムあたり1日1.00グラム未満であることを判定の境目にするのが最適でした。誤判定の多くは、実際には不足しているのに見逃される側でした。著者らは、この境目が現行の推奨量より低いことも踏まえ、臨床での有用性は損なわれないと考察しています。
研究が示すこと
著者らは、GERYPROTがフィンランドの80歳以上の在宅高齢者でたんぱく質の摂取不足を見つける道具として妥当性が高いと結論づけています。フィンランドの人々を対象に開発・検証された、たんぱく質不足に特化した初めてのスクリーニングテストだとしています。
一方で、いくつかの限界も示しています。基準とした食事記録は1日分だけで、日による食事の変動を捉えきれない可能性があります。テストの記入には良好な認知機能が必要です。参加者は長年の追跡調査に参加し続けた、栄養状態と認知機能が比較的良好な人に限られており、結果を当てはめられる範囲も限られます。また、たんぱく質を多くとる人ほどエネルギーなど他の栄養素の摂取量も多く、たんぱく質の量は食事全体の量に強く左右されていた可能性があるため、判定の境目は慎重に解釈すべきだとしています。ほかの食文化の地域では、内容を調整しなければ使えないとも述べています。
この研究は、身近な食品の写真と食数の記入だけでできる簡単なテストでも、条件を満たす高齢者であれば、たんぱく質が足りていない人をかなりの精度で見つけられる可能性があることを示しています。
原著論文の著者・所属:Riikka T. Niskanen(University of Helsinki)、Aava Ranta(University of Helsinki)、Heli Salmenius-Suominen(Society for Gerontological Nutrition in Finland (GERY))、Martta Jalavisto(Society for Gerontological Nutrition in Finland (GERY))、Marianna Markkanen(Society for Gerontological Nutrition in Finland (GERY))、Susanna Kunvik(Satakunta University of Applied Sciences)、Satu K. Jyväkorpi(University of Helsinki)、Hannu Kautiainen(University of Helsinki)、Kaisu H. Pitkälä(University of Helsinki)、Merja H. Suominen(University of Helsinki)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Riikka T. Niskanen, Aava Ranta, Heli Salmenius-Suominen, et al. Validation of the GERY Protein Intake Screening Test among community-dwelling oldest-olds in Finland. British Journal Of Nutrition 2026-10-27. DOI: 10.1017/s0007114526109398. 原著ライセンス:CC BY.