この研究は、エジプト、アメリカの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Fermentation

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: Crossref

研究の目的

アイスクリームに比べて脂肪が少なく、生きた乳酸菌を含む冷凍ヨーグルトは、より健康的な冷菓として関心を集めています。この研究で著者らが着目したのは「焼成発酵乳(baked fermented milk、以下BFM)」と呼ばれる素材です。BFMは、牛乳を高温で長めに加熱してから乳酸菌で発酵させたもので、ロシアやウクライナ、ベラルーシなど東欧で古くから親しまれてきました。加熱の過程でたんぱく質と乳糖のあいだにメイラード反応(焼き色や香ばしさを生む化学反応)が起こり、カラメルのような風味と褐色、独特のコクが生まれます。

研究チームは、通常の発酵乳(traditional fermented milk、以下TFM)の代わりにこのBFMを使った新しいプロバイオティクス冷凍ヨーグルト(PBFY)をつくり、従来型のプロバイオティクス冷凍ヨーグルト(PTFY)と比べて、物理化学的性質、微生物の生残性、官能特性(味や食感の評価)がどう違うかを調べることを目的としました。

何をどう調べたか

著者らは、脱脂粉乳を水で戻したものと生クリームを混ぜた同じベースを三つに分け、一つは90℃で5分加熱してTFM用に、一つはオートクレーブで115℃・20分加熱してBFM用に、残りは低脂肪アイスクリームミックス用に処理しました。TFMとBFMのベースには、ヨーグルトの基本菌であるStreptococcus thermophilusとLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusに加え、プロバイオティクス菌株のLactobacillus acidophilusとBifidobacterium animalis subsp. lactisを同時に接種して発酵させています。

できあがった発酵乳をアイスクリームミックスに25%、50%、75%の割合で混ぜて凍結し、合計6種類の製品を作製しました。評価項目は、ミックスのpHと酸度、表面張力、粘度、泡立ちやすさ(ホイッピング性)、製品側のオーバーラン(凍結時に取り込まれる空気の量)、脂肪の不安定化、溶けやすさ、抗酸化活性(DPPH法とABTS法という二種類の指標)、そしてマイナス20℃で90日保存したあいだの各菌の生菌数です。官能評価は訓練された17名のパネルが、風味・食感・外観を9点尺度で採点しました。

報告された主な結果

発酵乳の配合割合を増やすほど、ミックスのpHは下がって酸度が上がり、表面張力は低下し、粘度は上昇したと報告されています。ただし75%という高い配合では、泡立ちにくくなってオーバーランが減り、脂肪の不安定化が大きくなり、溶ける速度が遅くなったうえ、保存中の菌の生残性も低下しました。

BFMを使ったPBFYと従来型のPTFYを比べると、PBFYのほうが溶ける速度が速く、粘度は低めでした。一方で抗酸化活性はPBFYが上回り、DPPH法で1.31倍、ABTS法で1.33倍のラジカル消去活性を示したと報告されています。オーバーランについては、同じ配合水準どうしでは発酵乳の種類による有意な差は認められませんでした。脂肪の不安定化については、PBFYのほうがPTFYより低い値を示したものの、その差が統計的に有意となったのは最も高い配合水準においてのみだったと報告されています。

保存中の菌の変化では、S. thermophilusが最も安定しており、減少速度は1か月あたり0.6〜0.69 log10 CFU/mLでした。これに対しB. animalis subsp. lactisの減少はより速く、1か月あたり0.80〜0.89 log10 CFU/mLでした。官能評価では、BFMを50%配合したものが最も好ましいと判断され、なめらかな食感、薄い褐色、カラメルを思わせる風味が評価されています。

この研究が示すこと

この研究は、東欧の伝統的な発酵乳であるBFMを冷凍ヨーグルトの材料として使えることを、物性・微生物・官能の各面から具体的に示したものです。配合を増やせば酸味や粘度は高まりますが、同時に泡立ちや空気の取り込み、菌の生き残りには不利に働くという、はっきりしたトレードオフが確認されました。

著者らの報告によれば、その折り合いがつく点が50%配合であり、官能評価でこの水準が最も好ましいとされたうえ、空気の取り込みの面でも従来型と差のない製品が得られました。抗酸化活性については、BFMを用いた製品全体が従来型を上回ったと報告されています。配合割合と加熱履歴という二つの条件が、冷菓の質感と機能性の両方を左右することを示した点に、この研究の意味があります。

著者:Sameh S. El-Hadad(Dairy Department, Food Industries & Nutrition Research Institute, National Research Centre, Giza 12622, Egypt)、Amira A. Ayad(Center for Excellence in Post-Harvest Technologies, North Carolina Agricultural and Technical State University, Kannapolis, NC 28081, USA)、Leonard L. Williams(Center for Excellence in Post-Harvest Technologies, North Carolina Agricultural and Technical State University, Kannapolis, NC 28081, USA)、Ahmed Y. Okda(Dairy Department, Food Industries & Nutrition Research Institute, National Research Centre, Giza 12622, Egypt)、Laila K. Hassan(Dairy Department, Food Industries & Nutrition Research Institute, National Research Centre, Giza 12622, Egypt)、Mahmoud Abd El-Aziz(Dairy Department, Food Industries & Nutrition Research Institute, National Research Centre, Giza 12622, Egypt)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sameh S. El-Hadad, Amira A. Ayad, Leonard L. Williams, et al. Novel Probiotic Frozen Yogurt Formulated with Baked Fermented Milk: Physicochemical, Microbiological, and Sensory Characteristics. Fermentation 2026-08-01. DOI: 10.3390/fermentation12090398. 原著ライセンス:CC BY.