この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Antigen Jurnal Kesehatan Masyarakat dan Ilmu Gizi

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的と背景

手術は体にとって大きな負担であり、組織の損傷をきっかけに炎症やストレスホルモンの増加、インスリン抵抗性、そして体のたんぱく質が分解される「カタボリズム」が進むと、この研究の著者らは説明しています。そのため手術後はエネルギーとたんぱく質の必要量が増え、不足すると体のたんぱく質分解が進んで「窒素バランス」が負に傾く可能性があるとされます。

窒素バランスとは、食事から取り入れた窒素(たんぱく質に含まれる)と、体から出ていく窒素の差を比べた指標です。論文では、プラスであれば体内でたんぱく質の合成が分解を上回っている状態、マイナスであればその逆の状態を示すものとして扱われています。著者らは、手術後の患者を対象にしたこの関係を調べた研究はまだ限られているとし、インドネシア・バンジャルマシンのウリン州立病院で、エネルギーとたんぱく質の摂取量が窒素バランスとどう関係するのかを分析することを研究の目的に掲げました。

何をどのように調べたか

研究チームは2026年1月から3月にかけて、同院の手術後の入院患者15人を対象に、ある一時点の状況を観察する横断的な調査を行いました。対象となったのは18歳以上で、2日以上入院し、意識があって口から食事がとれ、予定された手術(緊急ではない手術)を受けた患者です。重症の状態、急性の下痢、腎臓や肝臓の機能障害などがある場合は対象から除かれました。参加者には事前に同意書への署名を求めています。

食事内容は、24時間に食べたものを聞き取る「食事思い出し法」を2日続けて実施して把握し、栄養計算用のデータベースとソフトで解析しました。窒素の摂取量はたんぱく質摂取量に係数6.25を用いて換算し、体から出ていく窒素は24時間ためた尿から測る尿中尿素窒素に、尿以外からの損失分として1日4グラムを加えて求めています。摂取量と排出量の差から、窒素バランスを「負」「均衡」「正」の3つに分類しました。統計的な関連の分析にはスピアマンの順位相関を用いています。

受けた手術の種類は、がんに関する外科(10人)が最も多く、血管外科と脳神経外科が各2人、泌尿器科が1人でした。

報告された主な結果

著者らの報告によると、病院の食事基準に照らしてエネルギー摂取量が重度に不足していた患者は66.7%、たんぱく質摂取量が重度に不足していた患者は46.7%でした。それにもかかわらず、窒素バランスが正だった患者は73.3%にのぼり、負だったのは26.7%でした。論文はこの点について、対象が予定手術の患者であり、データ収集が食事が比較的安定する手術後2日目から始まったこと、管理栄養士による摂取量の把握や手術後24時間以内の食事提供などが関係していると考察しています。

エネルギー摂取量と窒素バランスのあいだには、統計的に意味のある関連は見つかりませんでした(p = 0.121)。一方、たんぱく質摂取量と窒素バランスのあいだには有意な関連が認められ(p = 0.016)、相関係数は0.611で、正の方向の強い相関と報告されています。つまり、たんぱく質摂取が良好な患者ほど窒素バランスが正に傾く傾向が見られたということです。なお、これは観察された関連であり、因果関係を直接証明したものではありません。

著者らは、エネルギー摂取との関連が見られなかった理由として、窒素バランスがたんぱく質の摂取量と窒素の排出量から計算される指標であるため、たんぱく質の摂取の変化がより直接的に反映されやすいこと、また手術前の栄養状態が正常だった患者が73.3%を占め、体内に残る蓄えが回復初期の代謝を支えた可能性などを挙げています。先行研究との比較では、重症の子どもを対象にした研究では同様に関連が見られず、重症高齢者を対象にした研究では関連が見られたとして、対象者の特性や病気の段階の違いが結果の差につながると論じています。

この研究が示すこと

著者らの結論は、手術後の窒素バランスに対しては、エネルギー摂取よりもたんぱく質摂取のほうが影響の大きい要因だというものです。回復期の栄養管理を考えるとき、総カロリーだけを見るのではなく、たんぱく質がどれだけとれているかに目を向ける必要があることを、この研究は限られた人数の観察から示しています。

同時に著者らは、対象が15人と少なく調査期間も短いことを踏まえ、今後はより代表性のある人数や長い期間での検討が必要だと述べています。病院に対しては、院外から持ち込まれる食事も含めて患者の食事摂取の把握を強め、食事基準を患者の状態に合わせて見直すことを提案しています。

著者:Hannia Fredlina Adhimulya(Poltekkes Kemenkes Banjarmasin)、Magdalena Magdalena(Poltekkes Kemenkes Banjarmasin)、Rosihan Anwar(Poltekkes Kemenkes Banjarmasin)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hannia Fredlina Adhimulya, Magdalena Magdalena, Rosihan Anwar Hubungan Asupan Energi dan Protein dengan Keseimbangan Nitrogen Pada Pasien Pasca Bedah. Antigen Jurnal Kesehatan Masyarakat dan Ilmu Gizi 2026-08-31. DOI: 10.57213/antigen.v4i3.1128. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。