日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:栄養と炎症をまとめて見る指標は予後と関係するか

肝内胆管がんは、肝臓の中を通る胆管から生じるがんです。治療の中心は肝臓の一部を切除する手術ですが、手術後の経過は患者さんによって大きく異なります。そこで、手術前の情報から経過の見通し(予後)を推し量る手がかりが求められています。

がん患者では、栄養状態と体内の炎症の強さが経過に関わると考えられています。栄養評価によく使われる「高齢者栄養リスク指標(GNRI)」は、血液中のアルブミンというたんぱく質の値と、実際の体重と理想体重の比から計算されます。ただしアルブミンは、肝臓の働きの低下や炎症の影響を強く受けます。そこで、アルブミンの代わりに炎症の指標であるCRP(C反応性たんぱく)を組み込んだ「修正版GNRI(mGNRI)」が考案されました。食道がんや膵臓がんでは、GNRIよりも優れた予後の指標になると報告されています。

著者らによると、肝内胆管がんでmGNRIと予後の関係を調べた報告はこれまでありませんでした。研究チームは、手術前のmGNRIが肝切除後の長期的な経過と関連するかを調べました。あわせて、手術後に口から摂れる食事量と関連するかも調べました。

何を調べたか

対象は、2008年4月から2022年8月に関西医科大学附属病院で肝切除を受け、肝内胆管がんと確定した患者99人です。過去の診療記録をさかのぼって分析する、単一施設の後ろ向き研究です。

研究チームはまず、栄養・免疫・炎症の状態を表す7つの指標を比べました。比べたのは、手術後3年時点で生存していたかどうかを見分ける力です。この見分ける力は、AUCという値で表されます。その結果、mGNRIのAUCが0.648で、比べた指標の中で数値上最も高くなりました。この分析から得られた境界値88.2を使い、患者を「mGNRI低値群」45人と「高値群」54人に分けました。

そのうえで、両群の経過を比べました。比べたのは、再発せずに生存している期間(無再発生存)と、死亡までの期間(全生存)です。さらに、手術後3日目から6日目に口から摂った食事についても比べました。対象は、エネルギーや栄養素の量と、必要量に対してどれだけ摂れたかを示す割合(エネルギー充足率)です。

主な結果

低値群は高値群に比べ、BMIやヘモグロビン、アルブミンの値が低くなっていました。一方で、CRPや白血球数は高くなっていました。著者らは、低値群では栄養状態が悪く、炎症が強い状態だったと説明しています。また低値群では、腫瘍が大きい人やリンパ節に転移がある人の割合が高くなっていました。開腹手術や広い範囲の肝切除を受けた人の割合も高くなっていました。

追跡期間の中央値は53.0か月でした。5年全生存率は低値群21.3%、高値群52.6%でした。5年無再発生存率は低値群18.1%、高値群41.6%でした。全生存と無再発生存のどちらも、低値群のほうが有意に不良でした。

研究チームは、肝機能や手術、腫瘍に関わる要因をあわせて考慮する分析も行いました。その結果、mGNRI低値は全生存の悪さと独立して関連していました(ハザード比1.86)。一方、無再発生存については、この分析ではmGNRIとの関連は統計的に有意ではありませんでした。

手術後の食事では、低値群のほうがエネルギー摂取量やエネルギー充足率が有意に低くなっていました。エネルギー充足率は、手術後3日目から6日目の期間を通じて高値群を下回っていました。著者らは、その理由として二つの可能性を挙げています。一つは、手術前からの炎症によって食欲が落ちていたことです。もう一つは、低値群で体への負担が大きい開腹手術が多かったことです。

この研究が示すこと

この研究は、mGNRIが肝内胆管がんの手術後の生存と関連することを示しました。mGNRIは、日常の診療で得られる体重と血液検査の値から計算できます。著者らは、手術前に注意が必要な患者を見つける手がかりになり得るとし、手術前後に栄養状態を評価する重要性を強調しています。

ただし、これは一つの施設の比較的少ない患者を、過去にさかのぼって調べた結果です。著者らは、ほかにもいくつかの注意点を挙げています。まず、境界値88.2はこの患者集団から導いた探索的な値です。また、mGNRIを二群に分けずに連続した数値のまま扱い、先の分析と同じ要因で調整した場合には、全生存・無再発生存のいずれとも有意な関連は見られませんでした。さらに、mGNRIは純粋な栄養指標というより、栄養と炎症をあわせて反映する指標として解釈すべきだとしています。手術後の食事量の少なさが生存の差を生む仕組みに関わっているのかどうかも、まだ分かっていません。

原著論文の著者・所属:Moriyasu Takada(Department of Health and Nutrition, Faculty of Health Sciences, Osaka Aoyama University; Department of Hepatobiliary Surgery, Kansai Medical University)、Thanh Tung Lai(Department of Hepatobiliary Surgery, Kansai Medical University; Department of Surgery, Hanoi Medical University)、Kyoko Inoue(Department of Hepatobiliary Surgery, Kansai Medical University; Department of Nutrition, Osaka Seiki College)、Van Khanh Nguyen(Department of Hepatobiliary Surgery, Kansai Medical University; Internal Gastroenterology Department, VNU University of Medicine and Pharmacy)、Kosuke Matsui(Department of Hepatobiliary Surgery, Kansai Medical University)、Hidekazu Yamamoto(Department of Hepatobiliary Surgery, Kansai Medical University)、Hisashi Kosaka(Department of Hepatobiliary Surgery, Kansai Medical University)、Gozo Kiguchi(Department of Hepatobiliary Surgery, Kansai Medical University)、Hideyuki Matsushima(Department of Hepatobiliary Surgery, Kansai Medical University)、Takuya Ohigashi(Department of Hepatobiliary Surgery, Kansai Medical University)、Hoang Hai Duong(Department of Hepatobiliary Surgery, Kansai Medical University; Department of Hepatobiliary and Gastrointestinal Surgery, Thai Nguyen National Hospital)、Kengo Yoshii(Department of Mathematics and Statistics in Medical Sciences, Kyoto Prefectural University of Medicine)、Masaki Kaibori(Department of Hepatobiliary Surgery, Kansai Medical University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Moriyasu Takada, Thanh Tung Lai, Kyoko Inoue, et al. Modified geriatric nutritional risk index as a prognostic indicator for patients with intrahepatic cholangiocarcinoma undergoing liver resection. Frontiers in Nutrition 2026-10-29. DOI: 10.3389/fnut.2026.1965547. 原著ライセンス:CC BY.