著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Aquaculture nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: Europe PMC
研究の背景と目的
グリーンフィン・ファイルフィッシュ(学名 Thamnaconus septentrionalis)は北西太平洋に分布するカワハギの仲間で、経済的に重要な魚です。論文によると、中国では天然資源が大きく減ったことを受けて人工繁殖や稚魚育成の技術開発が進みました。その結果、かつては混獲される程度だったこの魚が、主要な養殖魚へと変わってきました。主に沿岸の海面いけすで育てられ、春に稚魚を入れて8〜12か月ほどで300〜500グラムの出荷サイズになるといいます。
一方で、養殖の餌は長く冷凍オキアミに頼ってきました。著者らは、オキアミは高価なうえ、天然のオキアミ資源への負担もあり、持続可能ではないと指摘しています。代わりとなる配合飼料をつくるには、魚の体づくりに特に重要なタンパク質と脂質がどれだけ必要かを知る必要があります。しかし、この魚の必要量はまだはっきりしていませんでした。
先行研究では、タンパク質43%・脂質7%という組み合わせが良好とされていました。ただしこの研究は、精製した乳タンパク質(カゼイン)を使った試験用の餌によるもので、実際の商業飼料とは原料が異なります。そこで研究チームは、実際の養殖現場で使われるような原料で作った「実用配合飼料」を用い、体重約5グラムの稚魚に適したタンパク質量と脂質量を調べることにしました。
2段階の飼育試験
研究チームは、二つの飼育試験を順番に行いました。最初の試験ではタンパク質の適量を調べました。魚粉を主なタンパク源とし、大豆タンパクや鶏肉粉なども加えた餌を用意しました。脂質はどの餌も約10%にそろえ、タンパク質(粗タンパク質、飼料に含まれるタンパク質の総量)だけを乾燥重量あたり38%から53%まで6段階に変えています。
2番目の試験では、最初の試験で得られた最適なタンパク質量を土台にしました。そのうえで、脂質を6%から13.5%まで6段階に変えた餌を用意しました。
どちらの試験でも、各餌を3つの水槽に割り当て、1水槽あたり70尾を56日間飼育しました。餌は1日3回、魚が食べなくなるまで手で与えました。試験後には成長、餌の効率、生き残り、体や肝臓の成分、肝臓の酵素の働き、抗酸化能力、肝臓の組織の様子を調べています。最適値の推定には、餌の成分量と成長の関係を山なりの曲線で表す「二次回帰」という統計手法を使いました。
主な結果
タンパク質の試験では、成長はタンパク質47%の餌まで高まり、それより多いと低下しました。47%の群では、最終体重18.61グラム、1日あたりの成長率2.27%が最も高い値でした。飼料要求率(体重を1増やすのに必要な餌の量で、低いほど効率が良い)も、この群が最も低い0.85でした。生残率は餌による差がありませんでした。曲線から推定した最適なタンパク質量は約46%で、先行研究の43%より高い値でした。著者らはこの違いについて、植物性タンパク質や鶏肉粉を含む実用原料は、魚粉やカゼインに比べて消化されにくいことなどが影響した可能性があると考察しています。
タンパク質を増やすと、肝臓の重さの割合や肝臓の脂質は減りました。組織の観察でも、44%以上では肝細胞内の脂肪の粒が少なくなっていました。
脂質の試験では、成長は脂質10.5%で最も高くなり、飼料要求率も同じ10.5%で最小の0.83になりました。成長率と飼料要求率から推定した最適値は、それぞれ9.69%と10.39%でした。一方、脂質を増やすほど肝臓や内臓の割合、体内の脂質が増えました。脂質12%では肝細胞に大きな脂肪の粒が目立ち、細胞が膨らむ変化も見られ、顕著な脂肪肝の状態でした。生残率は脂質13.5%の群で最も低く、73.33%でした。
脂質が増えると肝臓の抗酸化能力も低下し、12%と13.5%の群では細胞の酸化的な傷みの指標となる物質が増えていました。著者らはこうした結果から、成長面では脂質10.5%まで許容されるものの、酸化ストレスを避けるには10%以下が必要だと述べています。
研究が示すこと
研究チームは結論として、実用配合飼料ではタンパク質46%、脂質9.7〜10.4%、炭水化物33%以下を推奨しています。これらは、効率的な成長、脂肪の少ない体の組成、代謝面の健康を両立する目安とされています。
ただし著者ら自身も、いくつかの限界を挙げています。タンパク質と脂質を別々の試験で調べたため、ほかの組み合わせでも十分に育つ可能性は否定できません。また、餌の量を調整するために加えた消化されないセルロースの量が餌によって異なり、それが結果に影響した可能性もあります。さらに、消化率は測定していません。
それでもこの研究は、実際の養殖に近い原料を使って、この魚の稚魚に必要なタンパク質と脂質の量を具体的な数値で示しました。冷凍オキアミに頼ってきた養殖で専用の配合飼料を設計するための、栄養面の基礎となる知見といえます。
原著論文の著者・所属:Song Z(Shandong Marine Resource and Environment Research Institute Yantai 264006 China.)、Li H(Shandong Shengsuo Feed Technology Co., Ltd. Yantai 265500 China.)、Li P(Shandong Marine Resource and Environment Research Institute Yantai 264006 China.)、Yu L(Shandong Marine Resource and Environment Research Institute Yantai 264006 China.)、Xu X(Daoyi Human Resources Service Co., Ltd. Yantai 264003 China.)、Zhang J(Shandong Marine Resource and Environment Research Institute Yantai 264006 China.)、Sun Y(Shandong Shengsuo Feed Technology Co., Ltd. Yantai 265500 China.)、Wang C(Shandong Marine Resource and Environment Research Institute Yantai 264006 China.)、Wu Y(Shanghai Ocean University Shanghai 201306 China shou.edu.cn.)、Wang X(Shandong Marine Resource and Environment Research Institute Yantai 264006 China.)、Sun Y(Shandong Marine Resource and Environment Research Institute Yantai 264006 China.)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Song Z, Li H, Li P, et al. Optimizing Dietary Protein and Lipid Levels for Greenfin Filefish (<i>Thamnaconus septentrionalis</i>) in Practical Feeds: Effects on Growth Performance, Feed Utilization, and Physiological Status. Aquaculture nutrition 2026-10-22. DOI: 10.1155/anu/2928232. 原著ライセンス:CC BY.