著者の所属・活動拠点の国は、イラン、アメリカです。
掲載誌:Applied Food Research
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
石油由来プラスチックに代わる包装材を探して
石油を原料とするプラスチック包装は、環境への負荷が問題視されています。そのため、食品包装でも持続可能な代替素材を探す動きが加速しています。
この論文は新しい実験の報告ではなく、これまでの研究成果を整理した総説(レビュー)です。著者らが取り上げたのは、動物の筋肉に含まれるタンパク質を原料とした「可食性フィルム」と「可食性コーティング」です。可食性フィルムは食品を包む薄い膜、可食性コーティングは食品の表面に直接施す被膜を指し、どちらも食べられる素材でできています。
なぜ筋肉タンパク質が注目されるのか
著者らによると、筋肉タンパク質は膜を形づくりやすく、酸素を通しにくい性質を持っています。さらに、生体になじみやすいこと、栄養価があること、自然に分解される素材であることからも、有望な包装材料として注目されてきたと述べています。
総説では、この素材を使った包装について、最近の研究の進展をまとめています。取り上げているのは、物理的・化学的な性質、包装材としての機能、そして食品への応用です。応用の例としては、食品の保存や日持ちの延長、揚げ物の調理中に食品が吸い込む油の量を減らす用途が挙げられています。また、包装自体が食品に働きかける「アクティブ包装」や、食品の状態に関する情報を伝える「インテリジェント包装」への利用も扱われています。
宗教的配慮と実用化への課題
この総説の特徴の一つは、イスラム教の「ハラール」やユダヤ教の「コーシャ」といった食の戒律に目を向けている点です。著者らは、可食性包装に使う筋肉タンパク質の原料を選び、加工する際に、こうした宗教上の配慮の重要性が増していると論じています。
一方で、課題も指摘されています。水に弱いこと、保存中の安定性、大規模な生産、そして消費者に受け入れられるかどうかです。著者らは、これらがまだ商業化を妨げていると述べています。
この総説が示すこと
著者らは全体として、筋肉タンパク質によるフィルムやコーティングを、持続可能で機能的な次世代の食品包装を開発するための有望な土台と位置づけています。同時に、実用に向けては素材の弱点や生産・受容の面で越えるべき壁が残っていることも、この総説は示しています。
原著論文の著者・所属:Shahab Naghdi(Seafood Processing Department, Marine Sciences Faculty, Tarbiat Modares University, Noor, Iran)、Masoud Rezaei(Seafood Processing Department, Marine Sciences Faculty, Tarbiat Modares University, Noor, Iran)、Parisa Noormohammadi(Seafood Processing Department, Marine Sciences Faculty, Tarbiat Modares University, Noor, Iran)、Joe M. Regenstein(Department of Food Science, Cornell University, Ithaca, NY 14853-7201, USA)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shahab Naghdi, Masoud Rezaei, Parisa Noormohammadi, et al. Advances in Muscle Protein-Based Edible Films and Coatings: Emerging Strategies for Active, Intelligent, and Sustainable Food Packaging. Applied Food Research 2026-10-01. DOI: 10.1016/j.afres.2026.102769. 原著ライセンス:CC BY.