日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。

掲載誌:Food Research International

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

食品の泡は、空気と液体の境目(気液界面)で起こる分子の働きによって保たれています。泡を支える主役のひとつはタンパク質ですが、タンパク質のどのような性質が、目に見える泡のでき方や持ちのよさを決めているのかは、まだ十分には分かっていません。

研究チームは、タンパク質の構造の「しなやかさ」(構造の柔軟性)を数値で捉え、それが泡の性質とどう関係するのかを調べることを目指しました。

何を調べたか

著者らが用いたのは、水素・重水素交換(HDX)とMALDI質量分析を組み合わせ、多数の試料を効率よく測定できる手法です。タンパク質を重水(通常の水素より重い重水素を含む水)に触れさせると、タンパク質の骨格にある水素の一部が重水素に置き換わります。構造が固く守られた部分では置き換わりにくく、動きやすい部分では置き換わりやすいため、重さの変化を質量分析で測ると、タンパク質の構造の柔軟性を見積もることができます。

研究では、分子の大きさ、構造の安定性、表面の疎水性(水をはじきやすい性質)が互いに異なる4種類のモデルタンパク質を選び、それぞれの性質と泡の性質を系統的に調べました。泡については、泡のできやすさ(起泡性)と、できた泡がどれだけ保たれるか(泡の安定性)を区別して扱っています。

主な結果

相関分析の結果、泡のできやすさはタンパク質表面の疎水性と強い正の関係を示しました。研究チームはこの結果から、泡ができる段階は主に、タンパク質が気液界面へ吸着する速さによって左右されていると解釈しています。

一方、泡の安定性は、重水素への置き換わりがゆっくり進む骨格部分の水素が、どれだけ交換されたかという量と強く相関していました。この量は、タンパク質のなかでも比較的守られた領域にある構造の柔軟性を反映するものとされています。

著者らは、HDXから得られる構造の柔軟性と、泡を安定に保つ性能との間に明確な関連があることが示されたと報告しています。

研究が示す意味

この研究は、泡の「できやすさ」と「持ちのよさ」が、タンパク質の異なる性質と結びついている可能性を示しました。著者らは、HDXに基づく手法が泡の安定性と関連する構造の柔軟性を定量的に捉えられるとし、従来の界面の測定と組み合わせることで、タンパク質が泡を支える仕組みをより深く理解し、食品向けに泡立ちのよいタンパク質を選んだり設計したりするための土台になりうると述べています。

原著論文の著者・所属:Tetsuo Torisu(Department of Biotechnology, Graduate School of Engineering, The University of Osaka, 2-1 Yamadaoka, Suita, Osaka 565-0871, Japan. Electronic address: [email protected])、Moe Konishi(Department of Biotechnology, Graduate School of Engineering, The University of Osaka, 2-1 Yamadaoka, Suita, Osaka 565-0871, Japan)、Susumu Uchiyama(Department of Biotechnology, Graduate School of Engineering, The University of Osaka, 2-1 Yamadaoka, Suita, Osaka 565-0871, Japan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tetsuo Torisu, Moe Konishi, Susumu Uchiyama. Molecular determinants of protein foamability and foam stability revealed by hydrogen/deuterium exchange MALDI mass spectrometry. Food Research International 2026-08-18. DOI: 10.1016/j.foodres.2026.120435. 原著ライセンス:CC BY.