皮つきのままソテーにした、養殖のアトランティックサーモンの切り身がひと切れ、皿にのっている。

この切り身にはたんぱく質が含まれるが、それがそのまま私たちの筋肉や臓器のたんぱく質になるわけではない。では、食べたあと体のどこで何になるのか。その途中で姿を見せるアミノ酸の一つ、アスパラギン酸を追ってみる。

皮つきソテーの成分表にある、アスパラギン酸という欄

成分表を見ると、この皮つきのソテーには「たんぱく質」の欄とは別に「アスパラギン酸」の欄があり、可食部100g当たり2600mgと載っている。アスパラギン酸は、アミノ酸の一種類の名前である。食品の中のアミノ酸は、多くが一つずつばらばらにあるのではなく、たんぱく質やペプチドのように、アミノ酸がつながった形の中に含まれている。成分表の値は、このつながった形の中にあるアミノ酸も含めて数えた量である。

表のアスパラギン酸の欄の値は、アスパラギン酸そのものに、別のアミノ酸であるアスパラギンの分を合わせた量である。つながった形のものと遊離の形のものも区別せず、まとめて示している。なお「たんぱく質」の欄の値は、アミノ酸を一つずつ足し上げたものではなく、別の求め方で出されている。

たんぱく質・アスパラギン酸の成分値(可食部100g当たり)
食品・収録状態たんぱく質アスパラギン酸
たいせいようさけ 養殖 皮つき ソテー25.2g2600mg

出典:日本食品標準成分表

食べた切り身のたんぱく質は、まずアミノ酸にほどかれる

皿のサーモンを食べると、切り身のたんぱく質は胃や小腸で消化され、アミノ酸として吸収される。切り身の中でつながった形をとっていたアミノ酸は、ここで一つずつにほどかれる。食事のたんぱく質からほどかれて体に入るアミノ酸の一つが、アスパラギン酸である。吸収されたアミノ酸は肝臓などへ運ばれ、その先でたんぱく質の合成やエネルギーとしての利用などに回る。

体のたんぱく質の並びに入る

人の体のたんぱく質をつくるアミノ酸は20種類ある。その組み合わせとつながる順序を変えることで、数多くのたんぱく質が生み出される。食事のたんぱく質からほどかれたアスパラギン酸もこの20種類の一つで、体のたんぱく質が組み立てられるとき、並びの中の一つの位置を占める。こうしてできるたんぱく質は骨・筋肉・臓器などの主成分で、体重の約20%を占めるとされる。体内の代謝や反応を調節する酵素やホルモンの材料にもなる。

体のたんぱく質は、一度できたらそのまま残るわけではない。体内で分解と合成を繰り返しながら、一定の量に保たれている。ほどかれたアミノ酸が新しい並びに加わる一方で、体の側でも壊されていくたんぱく質がある。さらに、アスパラギン酸は非必須アミノ酸の一種である。非必須アミノ酸とは体内でつくることのできるアミノ酸の分類で、アスパラギン酸も体内で生成できるとされる。そのためアスパラギン酸は、食事のたんぱく質からほどかれる分と、体内でつくられる分の両方から供給される。

エネルギー利用に回るとき:窒素を手放し、炭素の部分が別の物質になる

では、吸収されたアミノ酸がエネルギーとしての利用に回るとき、アスパラギン酸には何が起こるのか。アミノ酸には、窒素と水素からなるアミノ基という部分がある。分解されるアミノ酸がこのアミノ基を別の分子へ渡す反応を、アミノ基転移という。アスパラギン酸のアミノ基が2-オキソグルタル酸へ移る反応では、アミノ基を受け取った側がグルタミン酸になる。窒素を含む部分は、こうして別の分子へ受け渡される。

アミノ基を手放したあとに残る部分は、炭素骨格と呼ばれる。アスパラギン酸の炭素骨格は、オキサロ酢酸という物質になる。では、このオキサロ酢酸はどこで使われるのか。

オキサロ酢酸は、クエン酸回路(TCA回路)と呼ばれる一連の反応の途中に現れる物質、つまり中間体である。この回路は細胞の中のミトコンドリアで進み、活動に必要なエネルギーの多くを供給するとされる。アスパラギン酸は、オキサロ酢酸になってこの回路に入り、窒素代謝やエネルギー代謝にかかわるとされる。

皿の上の切り身のたんぱく質は、そのままの形で筋肉や臓器のたんぱく質になるのではない。いったん一つずつのアミノ酸という材料に分かれ、その一部が、体のたんぱく質に応じた組み合わせと順序で組み直される。食事のたんぱく質からほどかれるアミノ酸の一つであるアスパラギン酸は、体のたんぱく質の並びの一か所に収まることもあれば、エネルギーとしての利用に回ることもある。

参照した公開資料