明治時代、白米中心の食事をとっていた日本海軍では、脚気(かっけ)が深刻な問題になっていたといいます。肉や野菜をたっぷり使ったカレーを取り入れて栄養を補ったところ、患者の数は激減したと伝えられています。農林水産省は、カレーライスのルーツの一説としてこの話を紹介しています。

脚気は、ビタミンB1が足りなくなって起こる病気です。白いごはんが中心の食事だと、なぜそれが足りなくなるのか。食品成分表の数字で追ってみます。

ビタミンB1は、糖質を使うために要る

食品成分表の説明によると、ビタミンB1(チアミン)は、体の中でいくつもの酵素を助ける補酵素として働き、糖質などの代謝に欠かせません。足りなくなると、だるさや食欲不振、むくみを伴う脚気などが起こることが知られています。ごはんやパンの糖質を、体がエネルギーとして使うときに要る栄養素です。そして白いごはんは、その糖質がおもな食べ物で、炊いた白米100gのうち炭水化物が37.1gを占めます。

ビタミンB1は、削られるぬかにある

ところが、その白いごはんには、ビタミンB1がわずかしかありません。もとの玄米から削り取ってしまうからです。炊いたごはんは水を含んで値が小さくなるので、炊く前の米100gで比べます。白米にするときに削るのは重さで1割足らず(精白歩留り90.4〜91.0%)ですが、ビタミンB1は玄米の0.41mgに対して白米は0.08mgで、8割ほど少なくなっています。

その削られた側の米ぬかは、成分表の全食品の中でも、ビタミンB1の多さで上位に入ります。値の載っている2,531食品を100gあたりで並べると、次のとおりです。

ビタミンB1の多い食品(100g当たり)
順位食品ビタミンB1
1パン酵母(乾燥)8.81mg
2だいこんのみそ漬3.70mg
3米ぬか3.12mg
4パン酵母(圧搾)2.21mg
5豚ヒレ(赤肉・焼き)2.09mg
6小麦はいが1.82mg
7ひまわりの種(フライ・味付け)1.72mg
8けしの実(乾)1.61mg
9即席中華めん(油揚げ味付け)1.46mg
10豚ヒレ(赤肉・生)1.32mg

3位が米ぬか、6位が小麦はいがです。米ぬかは玄米を白米にするときに削ったぬか、小麦はいがは小麦粉を作るときに出る皮(ふすま)から分けた胚芽で、白いごはんや小麦粉には入っていません。豚肉も5位と10位に入っています。

茶碗1杯では

白米は、玄米からぬか層と胚芽を取り除いた米です。胚芽精米も精米した米ですが、ぬか層だけを取り除いて胚芽を残したもので、胚芽が80%以上残っているものをこう呼びます。

炊いたごはんの茶碗1杯をおよそ150gとすると、ビタミンB1は玄米で0.24mg、胚芽精米で0.12mg、白米で0.03mgです。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」は、ビタミンB1の推奨量を30〜49歳で女性0.9mg、男性1.2mgとしています。女性なら、玄米の1杯でおよそ27%、胚芽精米で13%、白米では3%ほどにあたります。エネルギーは、100gあたり玄米152kcal、胚芽精米159kcal、白米156kcalと、ほとんど変わりません。

おかずでとるなら

おかずの側でビタミンB1が多いのは、上位にも入っていた豚肉です。焼いたおかずを、同じ100gで並べます。

焼いたおかずのビタミンB1(100g当たり)
おかずビタミンB1
豚ヒレ(赤肉)焼き2.09mg
豚もも(皮下脂肪なし)焼き1.19mg
豚ロース(脂身つき)焼き0.90mg
たらこ 焼き0.77mg
うなぎのかば焼0.75mg
鶏もも(皮なし)焼き0.14mg

焼いた豚ヒレなら、50gで約1.0mgとれ、30〜49歳の女性の推奨量0.9mgを上回ります。焼いた豚ロースでも、100gで0.90mgです。同じ肉でも、焼いた鶏もも肉(皮なし)は0.14mgで、豚肉に比べてずっと少なくなっています。

実は、統計ではビタミンB1の摂取量が推奨量に届いてない事がわかっています。厚生労働省の令和5年国民健康・栄養調査では、1日の摂取量は30〜39歳の平均で男性1.09mg、女性0.83mgで、推奨量まで男性は0.11mg、女性は0.07mg足りません。普段のおかずや、最近では手軽に白米に混ぜる食材などがありますので、ビタミンB1の存在を気にすることも大事です。

※参考資料

以下の公開資料をもとにNutriMapが構成・執筆しました。