食品成分表の「肉類」には、中々口にできない、くじらの本皮、すっぽんの肉、にほんじかの赤肉のデータが載っています。どれも「生」の状態です。 今回は、オメガ3系不飽和脂肪酸 で知られるEPA イコサペンタエン酸という成分の量を比べると、どんな違いがあるか見てみましょう。
イコサペンタエン酸(EPA)は魚油に含まれる成分
イコサペンタエン酸は「エイコサペンタエン酸」とも呼ばれ、略してEPAと書かれます。魚油、つまり魚の油に含まれる成分です。一般的には、血液サラサラ、中性脂肪の低下、抗炎症作用があると言われています。では、魚油に多く含まれるこの成分は、「肉類」に分類される食品にはどれくらいあるのでしょうか。数値を見る前に、比べる三つの食品がどの動物のどんな部分なのかを確かめておきます。
比べる三つの食品は、どの動物のどんな部分か
くじらの本皮:背側の黒皮とすぐ下の脂肪
「本皮」は、くじらの背側にある黒い皮と、そのすぐ下の脂肪の部分を指します。この本皮は、かつては鯨油を作る原料に使われていましたが、現在は刺身などで食べられています。
成分表の「くじら」は、現在ミンククジラが主に食用とされていることから、ミンククジラを対象にしています。ここで比べる本皮の値も、ミンククジラの本皮のものです。
すっぽんの肉:甲羅の柔らかいカメから、皮などを除いた部分
すっぽんは、河川や池にすむ体長約30cmのカメの一種です。ほかのカメと違って甲羅が柔らかく、英語ではSoft-shelled turtle(柔らかい甲羅を持つカメ)と呼ばれます。
成分表でいうすっぽんの「肉」は、甲殻、頭部、脚、内臓、皮などを除いたものです。くじらの本皮が皮とそのすぐ下の脂肪の部分であるのに対し、すっぽんの肉は皮を除いた部分を指しています。
にほんじかの赤肉:えぞしかなどの地域亜種を対象にしたしか肉
しか肉の大部分は、ニュージーランドやオーストラリアから輸入される、牧場で飼育されたものです。輸入のしか肉の大半を占めるのはアカシカで、ニホンジカの近縁種にあたります。国内でも近年、野生のシカによる獣害への対策などとして、有害駆除や個体数の調整を目的とした捕獲が行われ、しか肉が食肉として供給されるようになっています。
今回比べるのは、アカシカではなく「にほんじか」です。成分表のにほんじかの値は、えぞしか、ほんしゅうじか・きゅうしゅうじかという地域亜種を対象にしています。
生の可食部100gあたりで比べたイコサペンタエン酸の量
可食部とは、調理をする時に食べられない部分を除いて、美味しく口に入る部分だけのことを指しています。ここに示す値は、どれも日本食品標準成分表(八訂)に載っている、生の可食部100gあたりの量です。表は今回選んだ三つの食品だけを並べたもので、肉類全体の順位を示すものではありません。
| 食品 | イコサペンタエン酸(mg) |
|---|---|
| くじら(本皮・生) | 4300 |
| すっぽん(肉・生) | 630 |
| しか(にほんじか・赤肉・生) | 21 |
生の可食部100gあたりのイコサペンタエン酸は、くじらの本皮が4300mg、すっぽんの肉が630mg、にほんじかの赤肉が21mgです。くじらの本皮はにほんじかの赤肉より4279mg多く、すっぽんの肉もにほんじかの赤肉より609mg多くなっています。
この三つは、動物の種類も、食品名に示された部位(本皮、肉、赤肉)も同時に異なります。そのため、この差をどれか一つの条件によるものとは言えず、あくまでこれら三つの食品を比べたときの違いです。
結果は、あなたの想定通りでしたか?普段口にしない、肉ですが、大きな違いがありました。
イコサペンタエン酸を多く含む食品を見たい方は、こちらを参考にしてみてください。
この記事は、日本食品標準成分表(八訂)から見えるデータを読み解いて記事にしています。
※食品・栄養素の参考資料:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 第1章 説明、脂肪酸:農林水産省、肉類/<その他>/すっぽん/肉/生 - 01.一般成分表-無機質-ビタミン類、食べもの暦 3月号
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)の成分値をもとに作成しました。