日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。

掲載誌:Probiotics and Antimicrobial Proteins

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

グレリンは主に胃でつくられるホルモンで、食欲を高める、胃の動きや胃酸の分泌を促す、自律神経の働きに関わるなど、多くの役割が知られています。

乳酸菌Lactobacillus paragasseri OLL2716(LG21)を含むヨーグルトについては、これまでの臨床試験で、食後のもたれ感の軽減、胃から内容物が送り出される速さ(胃排出)の遅れの改善、副交感神経の活動や食欲に関する指標の変化が報告されています。これらはグレリンの働きと重なるため、研究チームはLG21の作用にグレリンが関わっているのではないかと考えました。ただし、ヨーグルトのどの成分が効いているのか、その上流でどんな仕組みが働くのかは分かっていませんでした。

そこで著者らは、ヒトの胃がん由来の培養細胞株MKN45を使い、LG21ヨーグルトや関連する素材がグレリンに関わる反応を変えるかを調べ、その背後にある細胞内の信号の候補も探りました。

何をどう調べたか

研究チームはまず、細胞内でグレリンをつくる設計図にあたるmRNAの量と、細胞から培養液へ出たグレリンの量との関係を確認しました。LG21の生きた菌で刺激した細胞では、両者の間に正の相関がみられたため(順位相関係数0.706)、以降はグレリンmRNAの量を反応の目安として、多くの試料を比べました。

調べた試料は、LG21の生菌、加熱処理した菌、菌が培養中に出した成分を含む培養上清、LG21入りヨーグルトとLG21を含まないヨーグルト、それぞれから菌や乳脂肪などを除いた液体部分(ホエイ)、さらにヨーグルトの製造に欠かせない2種類のスターター乳酸菌などです。

主な結果

LG21の生菌、加熱処理菌、培養上清はいずれも、それぞれの対照と比べてグレリンmRNAを有意に増やしました。LG21入りヨーグルトは2時間後には増加をもたらし、LG21を含まないヨーグルトでは4時間後に有意な増加がみられました。ホエイでは、LG21入りヨーグルト由来のものが6時間後に有意な増加を示した一方、LG21を含まないものの効果は弱いものでした。乳酸菌を含まない牛乳や発酵前の原料ミックスでは変化はみられませんでした。

ヨーグルトに含まれる2種類のスターター菌とその培養上清もグレリンmRNAを増やしましたが、LG21では反応がより早く現れました。なお、菌の量は濁り(光学的な濃度)でそろえたため、菌数は株ごとに異なっており、著者らは株同士の比較は慎重に解釈すべきだとしています。

発酵乳に使われる菌種の基準となる株(基準株)5種類も試したところ、増加がみられたのは一部の菌種だけでした。LG21と同じ菌種の基準株では有意な増加がなく、この働きは菌の種類というより株によって異なる可能性が示されました。

仕組みについては、プロスタグランジンE2(PGE2)という体内物質と、その受け取り口の一つであるEP4受容体に注目しました。PGE2やEP4を刺激する薬はグレリンmRNAを増やし、EP4の働きを妨げる薬はLG21生菌による増加を有意に弱めました。これは、このモデルでEP4を介した信号が関わることと矛盾しない薬理学的な証拠だとされています。

研究が示すこと

この研究は、培養した胃の細胞でLG21ヨーグルトやLG21に関連する素材がグレリンmRNAを増やし、その一部にPGE2とEP4受容体の信号が関わる可能性を示しました。一方で、使われたのはがん由来の細胞株であり、受容体に作用する活性型のグレリンは測れておらず、ヒトの血中グレリンも調べていません。著者らは、これらの結果を臨床試験で報告された変化を説明しうる細胞レベルの仕組みの候補として位置づけ、ヒトの体内で同じことが起きる直接の証拠ではないとしています。

原著論文の著者・所属:Aoi Fujieda(Health Science Research Unit, R&D Division, Meiji Co., Ltd., 1-29-1 Nanakuni, Hachioji, Tokyo, 192-0919, Japan. [email protected])、Naruomi Yamada(Health Science Research Unit, R&D Division, Meiji Co., Ltd., 1-29-1 Nanakuni, Hachioji, Tokyo, 192-0919, Japan)、Akika Nagira(Health Science Research Unit, R&D Division, Meiji Co., Ltd., 1-29-1 Nanakuni, Hachioji, Tokyo, 192-0919, Japan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Aoi Fujieda, Naruomi Yamada, Akika Nagira. Lactobacillus paragasseri OLL2716 Promotes Ghrelin Expression in Gastric Cells. Probiotics and Antimicrobial Proteins 2026-08-13. DOI: 10.1007/s12602-026-11172-x. 原著ライセンス:CC BY.