著者の所属・活動拠点の国は、ギリシャです。
掲載誌:Fermented Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
サワービールは、酸味を特徴とするビールです。今回の研究では、乳酸をつくる細菌である乳酸菌をビール酵母と一緒に発酵に使い、サワービールを造る試みが行われました。
研究チームは、乳酸菌の一株であるレビラクトバチルス・ブレビスACA-DC 1705(以下、ブレビス菌)をサワービール造りに使えるかを調べました。本稿は論文の抄録に記載された内容をもとに紹介します。
菌の選び方と発酵・保存の試験
著者らはまず、ACA-DCという菌株コレクションに保管されている11株の乳酸菌を候補にしました。そして、ホップを加えた麦汁(ビールの原料となる麦芽由来の糖液)の中での生存力を基準に、ブレビス菌を選びました。
次に、ホップを加えていない麦汁で、ブレビス菌とビール酵母(サッカロマイセス・セレビシエのSafAle S-04株)を10日間一緒に発酵させました。この期間中、ブレビス菌は高い菌数を保ちました。研究チームはこの結果から、酵母がいてもブレビス菌の増殖は影響を受けなかったと報告しています。
その後、異性化ホップ抽出物と呼ばれる、ホップの苦味成分を利用しやすい形にした抽出物を加えました。添加量は苦味の強さを表す単位IBUで1または10です。こうして造ったビールを4℃または20℃で30日間保存しました。
主な結果
30日間の保存を終えた時点で、ブレビス菌の生存が最も良かったのは、1 IBUで4℃保存したビールでした。このビールの菌数は1ミリリットルあたり7.82 log CFUでした。CFUは増殖できる菌の数を表す単位で、logは10の何乗かを示します。つまり、1ミリリットルあたりおよそ10の7.82乗個の生きた菌が確認されたことになります。
研究チームは、ビールの香りに関わる揮発性成分を、成分を分離して種類を特定する分析法(GC-MS)で調べました。その結果、乳酸菌と酵母を一緒に発酵させたビールと、比較用(対照)としてそれぞれに対応する単独の微生物で発酵させたビールとの間で、揮発性成分の構成に違いが見られたと報告されています。
さらに、人が味や香りを評価する官能評価を行いました。その結果、市販のサワービールと比べて統計的に意味のある差は認められなかったと報告されています。
研究が示すこと
著者らは、醸造と保存の条件が適切であれば、ブレビス菌はサワービール造りに有望な候補になると結論づけています。抄録では、試した条件のうちブレビス菌の生存が最も良かったのは、苦味成分の添加量が少なく低温で保存したビールだったと報告されています。乳酸菌をサワービールに活かすうえで、造り方や保存の条件が菌の生き残りに関わることを示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Ilias Karaman-Lozos(Laboratory of Dairy Research, Department of Food Science and Human Nutrition, Agricultural University of Athens, Iera Odos 75, Athens 11855, Greece)、Georgia Zoumpopoulou(Laboratory of Dairy Research, Department of Food Science and Human Nutrition, Agricultural University of Athens, Iera Odos 75, Athens 11855, Greece)、Marina Georgalaki(Laboratory of Dairy Research, Department of Food Science and Human Nutrition, Agricultural University of Athens, Iera Odos 75, Athens 11855, Greece)、Eirini Alilai(Laboratory of Food Chemistry and Analysis, Department of Food Science and Human Nutrition, Agricultural University of Athens, Iera Odos 75, Athens 11855, Greece)、Thomas Goulas(Laboratory of Food Chemistry and Analysis, Department of Food Science and Human Nutrition, Agricultural University of Athens, Iera Odos 75, Athens 11855, Greece)、Panagiotis Tataridis(Department of Wine, Vine and Beverage Sciences, School of Food Science, University of West Attica, Egaleo, Athens 12243, Greece)、Athanasios Mallouchos(Laboratory of Food Chemistry and Analysis, Department of Food Science and Human Nutrition, Agricultural University of Athens, Iera Odos 75, Athens 11855, Greece)、Effie Tsakalidou(Laboratory of Dairy Research, Department of Food Science and Human Nutrition, Agricultural University of Athens, Iera Odos 75, Athens 11855, Greece)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ilias Karaman-Lozos, Georgia Zoumpopoulou, Marina Georgalaki, et al. Crafting a sour beer using Levilactobacillus brevis ACA-DC 1705: Fermentation dynamics and quality insights. Fermented Foods 2026-09-16. DOI: 10.1016/j.ferfo.2026.100023. 原著ライセンス:CC BY.