日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。

掲載誌:Journal of Food Protection

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:冷蔵中に増える乳酸菌をどう予測するか

加工肉製品では、乳酸菌が腐敗の原因になることが知られています。研究チームは、加熱殺菌の後に製造工程で菌が再び付着する「二次汚染」を評価することが、品質を保つうえで欠かせないと指摘しています。

問題は、最初の菌数が検出できないほど少なくても、冷蔵保存中に乳酸菌が増えてくる場合がよくあることです。そこで著者らは、保存期間の終わりに乳酸菌がどれだけ増えているかを前もって予測できる信頼性の高い方法が、衛生管理に必要だと考えました。

方法:加速保存試験の結果から期限末の菌数を判定

研究チームが用いたのは「加速保存試験(ASLT)」という考え方です。これは、実際の保存期間をそのまま待つのではなく、変化が早く進む条件で保存して短期間で結果を得る試験方法です。著者らは、この試験で得られる乳酸菌数をもとに、冷蔵での保存期間の終わりに菌数が許容範囲に収まるかどうかを判定するモデルを作りました。許容できる上限は、1ミリリットルあたりの菌数を対数で表した値で5.0(1ミリリットルあたり約10万に相当)と設定されています。

モデルは、乳酸菌の一種であるラクトコッカス・ピシウム105株を液体の培地で育てたときの増え方のデータをもとに組み立てられました。

主な結果:30日の冷蔵期限なら基準値は対数で2.07

抄録では具体例として、冷蔵での保存期間が30日の場合、加速保存試験での判定の目安となる値(基準値)が、対数で表した菌数で2.07(1ミリリットルまたは1グラムあたり)になると報告されています。つまり、加工肉製品を加速保存試験にかけて、1グラムあたりの乳酸菌数を対数で表した値が2.07以上に達したなら、30日間の冷蔵保存の終わりには許容上限を超えると予測される、ということです。

また、この基準値と保存期間の長さとの関係は、べき関数と呼ばれる数式で表せることが示されました。保存期間の長さに応じて、加速保存試験で用いる基準値を求められることになります。

さらに著者らは、実際の加工肉製品を使ってモデルの当てはまりを確かめています。予測と実測の一致度を示す決定係数(R²)は0.948、予測のずれの大きさを示す指標(RMSE)は0.467と報告され、モデルが実際の製品でも検証できたとしています。

研究の意味

この研究は、冷蔵保存の期間をすべて待たずに、加速保存試験の結果から期限末に乳酸菌が許容上限を超えるかどうかを早い段階で見積もる枠組みを示した点に特徴があります。著者らは、このモデルが冷蔵中の乳酸菌増殖のリスクを早期に評価する新しい枠組みとなり、厳密な衛生管理を支えることが期待されると述べています。

原著論文の著者・所属:Koichi Shimada(Graduate School of Agricultural Science, Hokkaido University, Kita-9, Nishi-9, Kita-ku, Sapporo 060-8589, Japan)、Genki Onozawa(PRIMA Meat Packers Ltd., 635 Nakamukaihara, Tsuchiura, Ibarak 300-0841, Japan)、Naoko Kamisaki(PRIMA Meat Packers Ltd., 635 Nakamukaihara, Tsuchiura, Ibarak 300-0841, Japan)、Shige Koseki(Graduate School of Agricultural Science, Hokkaido University, Kita-9, Nishi-9, Kita-ku, Sapporo 060-8589, Japan. Electronic address: [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Koichi Shimada, Genki Onozawa, Naoko Kamisaki, et al. Predictive Assessment of Microbial Growth in Refrigerated Food Using Accelerated Shelf-Life Testing. Journal of Food Protection 2026-09-14. DOI: 10.1016/j.jfp.2026.100919. 原著ライセンス:CC BY.